野生鳥獣による被害の現状と効果的な対策

野生鳥獣による被害の現状と効果的な対策

野生鳥獣による被害の現状と効果的な対策│画像1

農作物を荒らす野生鳥獣の被害が問題となっています。
世間ではジビエ料理などが注目され、獣害対策としての狩猟への関心も高まったように思えますが、被害の現状は現在どうなっているのでしょうか。今回は、獣害の現状と近年注目されている効果的な対策についてご紹介します。

 

 

獣害被害の現状

獣害被害の現状ですが、喜ばしいことに減少傾向にあります。平成29年3月に掲載された「平成27年度の野生獣害による農作物被害状況」によると、

 ・被害金額:176億円(前年度から15億円減)
 ・被害面積:8万1千ha(前年度から0.3千ha減)
 ・被害量:50万t(前年度より4万6千t減)

となっています。最新の報告である平成28年度では、全国の被害金額は約172億円と更に減少しています。被害金額が増加してしまった都道府県も存在しますが、この減少は4年連続続いており、被害拡大を抑えられている表れなのではないでしょうか。

獣の種類別に被害金額を比較すると、最も被害額が大きいのはシカで、約56億円。次いでイノシシが約51億円、カラス約16億円、サル約10億円と続きます。

 

 

獣害被害の何が問題か

農作物に対する獣害で深刻なのは、やはり田畑を荒らすことで農作物の収穫に大きく影響が出るところです。獣害被害の調査が始まった平成11年度から、農作物への被害額は約200億円にもなります。イノシシ、シカ、サルといった動物による合計被害額は、どの県においても1千万円以上という現状があります。

獣害被害は決して農作物に限った話ではありません。
例えば水産分野。カワウの生育域が広まったことで、アユなどの食用魚が食べられてしまい、漁業への影響を及ぼしています。森林においても、シカやカモシカ等の動物が生育途中の若い木を食べてしまう、樹皮を剥いでしまうなどの被害が起き、被害面積は5~7千haにもなります。
シカによる食害は森林だけでなく、観光資源でもある高山植物にも及び、絶滅の危機に瀕する植物もあると言われています。

 

 

獣害被害に効果を発揮する一般的な方法

獣害を避けるための方法には、主に3つの方法が取られています。

「誘因除去」野生動物の食料となるものを除去する
「予防」野生動物を農地に立ち入らせない
「捕獲」野生動物の駆除

このうち、最も効果を発揮しているのは「予防」と「捕獲」と言えます。

「予防」には防護柵の設置が一般的です。農地を囲い、農地内に野生動物を侵入させないのが狙いです。万が一侵入を許した場合でも、どこから侵入されてしまったかを把握しやすいため、次回の対策に活かしやすいのも特徴です。物理的に用意する柵(金網やネットを利用したもの)だけでなく、動物の学習効果を活かした電気柵を組み合わせて用意すると、より効果的です。「予防」を活用する際には、

・野生動物に農作物の味を覚えさせない
・潜り込める、飛び越せると思わせない
・(電気柵を用意する場合)十分な電気ショックを電圧を保ち続ける

ことが重要です。

「捕獲」には“わな”を利用した方法や銃器を利用した方法が挙げられます。集落全体の田畑が被害を受けている場合には、ハードルが低く取り組みやすい“わな”のほうが効果的です。野生動物の生息状況、特性などを理解したうえで、様々なわなの特性を利用して設置することで、捕獲可能性があがります。荒らされた田畑に残された足跡やフンなどの生活痕を頼りに、野生動物を特定し、わなを仕掛けましょう。

 

 

最新技術を駆使した獣害対策とは

とはいえ「予防」や「捕獲」といった対応では、少々時間と手間がかかります。しかし現代では、IOT技術を駆使した新しい農業技術が次々に登場しています。この新しい技術は、獣害にも対応しています。

例えば小型無人機ドローンの例を挙げます。
ドローンは、農薬散布や上空からの田畑を撮影するなど、農業技術の一つとして活用されています。そんなドローンと人工知能を駆使し、獣害対策に使うシステムを開発した会社があります。
ベンチャー企業スカイロボットが開発したドローンは、動物の行動を空から撮影するだけでなく、収集した動物の行動データをもとに行動予測を行います。万が一野生動物が田畑に現れたとしても、彼らの嫌がる超音波を発することで、彼らを射殺することなく農業被害を食い止めることができます。

このロボットには赤外線を撮影できるカメラも搭載されているため、夜間でも動物の動きを把握することができます。ドローンを飛ばすためには、国土交通省へ申請・許可を得る必要がありますが、同社ではドローンの販売だけでなくサービス化も考えています。そのサービスでは、蓄積したデータの分析やドローンを操縦するための申請手続きの代行もあると言います。

また「捕獲」に携わる“わな”にも、新しい技術が駆使されています。
農業従事者の高齢化が今後の農業の課題となっていますが、高齢化が進んでいるのは猟師も同じです。そんな彼らを支える存在となるのが、無線技術を搭載したわなの登場です。
無線技術を搭載した親機と子機を組み合わせることで、遠隔地に置いたわなの監視が可能になります。従来であれば、定期的にわなの見回りを行う必要がありましたが、この無線があれば、いつ、どこで、誰のわなに動物がかかったか通知されます。親機を経由し、スマートフォンに通知され、捕獲に携わる人、加工処理を行う人、行政職員との連携が取りやすいのが利点です。

 

近年ジビエ料理が注目されていますが、美味しいジビエ食材につなげるためには、捕獲後の迅速な処理が重要になります。仕留めてから血抜きなどの処理までが迅速に進めば、獣害を食い止めるだけでなく、仕留めた野生動物を新たな地域特産物として活用できるのではないでしょうか。

捕獲した動物を地域資源として活用する動きは徐々に浸透し始めており、農林水産省では2019年までに食用利用率を30%に引き上げることを目指しています。この動きが浸透し、獣害対策がそのまま新たな収入源となれば、猟師の増加にも繋がるのではと考えられています。

 

数あるカクイチの製品の中から
農家の方へオススメな製品をピックアップしました。


 

鳥獣被害カテゴリの最新記事