本記事では、農作物に害を及ぼすコナジラミについて紹介していきます。
コナジラミの生態
野菜を加害する主なコナジラミはタバココナジラミとオンシツコナジラミの2種類です。
基本的には両種ともよく似ています。両種とも成虫の体長は1.0mm程度で白色をしています。卵は両種とも産卵直後は淡黄色をしていますが、孵化直前になるとタバココナジラミの卵は淡褐色に、オンシツコナジラミの卵は黒褐色になります。
タバココナジラミの成虫は、露地栽培では4〜11月まで見られ、特に夏に多く発生します。施設栽培では周年で発生します。タバココナジラミは低温に弱く、降霜地域では越冬できません。
一方で、オンシツコナジラミは比較的寒さに強く、関東以西では露地でも越冬します。
コナジラミ類は温度があれば発生を繰り返します。卵から成虫になるまでの期間は、25℃で約23〜28日ほどです。
被害の様子
コナジラミによって植物が受ける被害は主に2つあります。
1つは吸汁による被害です。コナジラミ類は葉の裏側に寄生します。コナジラミ類に吸汁された箇所は白っぽくなります。吸汁加害により、植物の生育が阻害され、発生量が増え、被害が進むと枯死することがあります。
もう1つはコナジラミ類の排泄物の上に「すす病」が発生することで起こる葉や果実の汚れ、光合成阻害といった被害です。
またコナジラミ類はトマト黄化葉巻病やウリ類の退緑黄化病など、さまざまな病原ウイルスを媒介します。
防除方法
まずは早期発見に努め、発生密度が低いうちから防除を行いましょう。
植物の葉裏をよく観察して、成虫や蛹などが寄生していないかを確認します。コナジラミ類の成虫は幼虫が養分を吸いやすいよう柔らかい新葉の裏側に産卵します。成長過程に合わせて新葉には成虫と卵が、次葉には幼虫が、次々葉には蛹がいることがあります。
コナジラミ類の増加を防止する方法として薬剤防除が挙げられます。コナジラミ類は葉の裏側に生息するため、薬剤は下方から噴き上げるように散布するなど丁寧に行いましょう。
薬剤防除を行う際、頭に入れておきたいのが薬剤抵抗性をもつコナジラミの存在についてです。タバココナジラミにはバイオタイプQと呼ばれる薬剤抵抗性が発達しているものが存在します。
コナジラミ類の薬剤抵抗性を発達させないためにも、同一の薬剤は繰り返し用いず、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行ってください。
また異なる防除方法を組み合わせることも重要です。たとえば物理的防除には、黄色粘着板や防虫ネットなどの使用が挙げられます。
コナジラミ類は黄色に誘引されます。黄色粘着板はコナジラミ成虫が施設内に侵入するのを防止するだけでなく、発生個体数のモニタリングにも役立ちます。個体数のモニタリングは天敵製剤の放飼のタイミングをはかるのに役立ちます。
防虫ネットは目合い0.4mm以下を使用します。ただし、目合いの細かい防虫ネットを使用すると施設内の温度が上昇するなどして、作業環境や農作物の生育環境の悪化につながる場合もあるため、遮光資材や送風ファンの設置など、適正な温度管理に努めましょう。
また、どの害虫においてもいえることですが、圃場内や周辺の雑草や作物残渣等はコナジラミ類の生息地となったり、コナジラミ類が媒介するウイルスの伝染源となったりするので、除草やすみやかな処分を徹底してください。
参考文献