トマトキバガは、翅を広げたときの長さが約10mmと小型のガで、海外ではトマト、バレイショ、ナスといったナス科植物に被害を与える害虫として知られています。
近年、トマトキバガの海外における分布拡大をふまえて、日本では国内への侵入を警戒していましたが、2021年10月には熊本県のトマトほ場で、11月には宮崎県のトマトほ場で初めて確認されています。
なお、2023年8月8日に公開された日本農業新聞の記事によると、初めて確認された熊本県、宮崎県に加え、九州全県、愛媛県や和歌山県など西日本の各県、そのほか2023年6月以降は北海道、青森県、秋田県、宮城県でも確認されています。
農林水産省によれば、農作物への被害は確認されていないとのことですが、トマトキバガが国内に侵入し広まっていることが分かります。
トマトキバガの生態
トマトキバガは繁殖力が高く、卵から成虫になるまでの期間が24日から38日程度と短いため、1年に複数の世代が発生します。
成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多いです。雌は一生のうち平均約260個の卵をナス科やマメ科といった寄生植物の葉の裏面などに産みつけます。ふ化した幼虫は京葉の内部やがく片、未成熟果の内部に潜り込み、食害します。
トマトキバガの成虫・幼虫の見た目については以下のウェブサイトを参照してください。
トマトキバガによる被害の特徴
トマトでは、茎葉の内部やがく片、未成熟果に幼虫が潜り込み、孔道を開けて食害します。
食害部分の見た目は、茎葉の場合、白〜褐変の面が表れます。これは表面のみを残して薄皮状になるからです。果実の場合、幼虫が孔道を開けながら侵入し、果実表面に数mm程度のせん孔痕が生じます。また内部の食害部分は黒く変色していき、腐敗することから品質は著しく低下します。
トマトキバガの食害に遭った葉の様子は、以下のウェブサイトのPDF資料を参照してください。
Pest Alerts / Plant Pests and Diseases / Pests and Diseases / Agriculture Industry / Home – Florida Department of Agriculture & Consumer Services より「Tomato Leafminer」(PDF)
トマトキバガの対策方法
海外では、農薬を用いた化学的防除や天敵生物(タバコカスミカメ類)を用いた生物的防除が行われています。しかし海外では、特定の殺虫剤(ピレスロイド系やジアミド系など)への抵抗性を獲得した個体群の発生も報告されています。
どの害虫対策にもいえることですが、日本において化学的防除を行う際は、薬剤抵抗性をもたせない工夫が必要といえます。
日本では2020年5月時点では、トマトキバガに対する登録農薬がなかったものの、2023年6月には、トマトやミニトマトに使えるトマトキバガに有効な農薬2種類が、7月には新たに12剤が登録されました。
トマトキバガ登録農薬一覧は以下のサイトのPDF資料を参照してください。
https://www.jppn.ne.jp/nagasaki/kouhou/yosatsu/R4/kibagakeihatu.html より「トマトキバガ登録農薬一覧(トマト・ミニトマト)」(PDF)
先述した通り、海外では薬剤抵抗性が報告されているため、抵抗性をつけさせないようローテーション散布を行います。また防虫ネットで被覆するなど、基本的な物理的防除も組み合わせることが大切です。
加えて、日本に飛来したトマトキバガが暖冬の影響で越冬する可能性もあることから、収穫期間だけでなく収穫後も薬剤散布を行ったり、作物残渣はほ場の外で処分するなど、トマトキバガの発生を抑える工夫も重要です。
参照サイト
(2024年4月1日閲覧)
- トマトキバガ – 宮城県公式ウェブサイト
- Pest Alerts / Plant Pests and Diseases / Pests and Diseases / Agriculture Industry / Home – Florida Department of Agriculture & Consumer Servicesより「Tomato Leafminer」(PDF)
(2024年4月12日閲覧)