本記事では、農作物に害を及ぼすハダニについて紹介していきます。
ハダニについて
野菜類の栽培現場で被害を及ぼすハダニ類は主にナミハダニとカンザワハダニです。本記事では、主にこの2種の生態や対策について紹介していきますが、野菜類で問題になるハダニ類にはこの2種の他に、アシノワハダニ、ミカンハダニ、ハクサイダニ、クローバービラハダニ、ホモノハダニが挙げられます。
形態と分類について
ナミハダニとカンザワハダニの特徴を以下の表にまとめました。
卵は直径約0.1mm、両種ともに雌成虫の体長は0.5mm程度、雄成虫は一回り小さく、肉眼での種の識別は困難です。
両種とも、露地栽培の野菜類では3〜11月に発生し、冬期に加温する施設栽培の野菜類の場合は周年で発生します。両種が害を及ぼす植物は多岐にわたります。野菜類ではイチゴ、ナス、スイカ等で発生が多く見られます。
ハダニ類による被害について
ハダニ類による農作物への加害は葉の吸汁です。植物の葉は吸汁されると、吸汁された場所の色が白く抜け、白斑となります。被害が進むと葉の表側からも加害された箇所が白っぽく見えるようになり、葉の裏側は褐変してしまいます。
ハダニの密度が高まると、茎葉の伸長が悪くなる、落葉する、葉が枯れ上がる、株が枯死するなどの被害が生じます。果菜類では開花結実が妨げられてしまうので、収量の減少につながります。
ハダニは密度が高まると移動性が高まります。寄生部位で密度が高まると、ハダニは順次上位葉に移動します。株全体に密度が高まると、雌成虫は葉や花の周囲に糸を張って動き回ります。過飽和状態になるとハダニの移動性はより高まり、ハダニの移動、風による飛散、農作業を行う人の衣服や靴などに付着するといった要因で、ハダニ被害が発生していなかった場所へも広がってしまいます。
発生しやすい条件
降雨が少ない、または、施設栽培においては茎葉が直接水に触れない灌水方法が用いられる場合に、ハダニ類の被害が発生しやすいです。
一方で、ハダニは水に弱いという性質があります。雨が降ると数が減ります。とはいえ、雨が当たらないところでは増えやすいので注意しましょう。
ハダニ類の防除対策
ハダニ類の発生が多発すると防除が困難になります。重要なのは早期発見に努め、寄生密度が低い間に防除を行うことです。また、ハダニ類が発生しやすい条件を避けることも重要です。
化学的防除と注意点
薬剤防除を行う際にはいくつか注意点があります。
まず、ハダニ類は薬剤に対する抵抗性を獲得する可能性が高いため、同一系統の薬剤の連続使用は避けてください。いくつかの系統の薬剤をローテーションで使用し、薬剤抵抗性への発達を遅らせましょう。
ハダニ類は葉裏に生息します。葉裏は薬剤を散布しても薬液が到達しにくいため、薬剤散布を行う際には、ハダニ類の寄生部位を意識して丁寧に散布を行いましょう。
ハダニを発生させない心がけを
薬剤抵抗性を発達させないためには、薬剤散布回数を減らせるよう、日頃からハダニ被害を回避する工夫を心がけることです。
ハダニは寄生している植物が枯れ始めると、新しいえさ植物を求めて移動し始めます。生育中の作物の近くに萎れていく植物を置かないようにしましょう。寄生された植物や作物残渣、雑草などの処理はすみやかに行いましょう。
ハダニ移動の原因となる作業(例、整枝作業、下葉摘み作業など)は、ハダニ防除を行う予定の日の前に行い、除去したものはすみやかに処分します。
なお、窒素過多の状況には要注意です。窒素過多の状態は、植物の葉を茂らせ、ハダニの早期発見を遅らせたり、防除効果を低下させたりする原因となります。
参考文献