コガネムシの生態と農作物への被害、対策方法について

コガネムシの生態と農作物への被害、対策方法について

コガネムシは、幼虫が作物の根を、成虫が葉を食害することが知られています。一般には成虫よりも幼虫による被害が大きく、作物の生育不良や枯死など、大きな被害につながります。

 

 

コガネムシの生態

コガネムシの生態と農作物への被害、対策方法について|画像1

 

コガネムシは甲虫目コガネムシ科の昆虫で、本記事ではコガネムシ科の昆虫の総称、かつ草花を荒らす害虫の総称としてコガネムシと表します。

成虫は楕円形をしており、かたくて光沢のある背面が特徴です。体色は赤紫の混ざった光沢のある緑色や赤紫色、黒紫色をしており、体長は17〜23mmほど。幼虫は白色で土中に棲息しています。

成虫は6月頃に土中に産卵し、7月頃にふ化します。幼虫は土壌中の有機物をエサとしますが、成長が進み、エサが不足するなどすると植物の根を食べ始めます。寒い季節には地下深くに潜って越冬し、暖かくなると地上付近に移動して蛹になります。そして6月頃、成虫となります。

どんな土壌に発生しやすいか

コガネムシはたいていの土壌で生育できます。重粘土や強度の砂土など、雨が降るとベトベトしたり、乾くと固まりやすい土壌をコガネムシは好まないとされていますが、極端に粘土質、砂質でない限りは発生します。古い資料にはなりますが、植物防疫第41巻第7号(1987年)『土壌害虫防除の諸問題一コガネムシの幼虫を巡って一』によると、土壌硬度の数値が大きい(土が固いところ)ほどコガネムシの幼虫の生育密度は低い傾向にあった、と記されています。

また、先述した通り、ふ化したばかりの幼虫は土壌中の有機物をエサとします。そのため、土壌中の有機物が豊富か否かもコガネムシの発生に関連します。同資料では、ほ場に有機物を施用することでコガネムシの幼虫の発生が多くなるだけでなく、連用によって幼虫密度や作物(資料内ではサツマイモ)への被害が増大する傾向にあることが記されています。それから未熟堆肥と完熟堆肥では、未熟堆肥を施した区画の方が、コガネムシの幼虫の発生被害状況が多くなりました。

よって土壌改良のために有機物を施用する際、未熟な堆肥を多量に施用するとコガネムシが多発する要因となるので注意が必要です。

コガネムシによる被害の特徴

成虫は作物の葉を食害します。果樹園での被害が多く、ブドウやカキ、ナシ、クリなどの葉が被害に遭いやすいです。葉脈だけを残して葉を網目状に食害し、多発すると葉脈も食べられてしまいます。

幼虫は植物の根を食害します。特にサツマイモやイチゴ、ダイズなどを好みます。

コガネムシの種類別の特徴

ドウガネブイブイは大型のコガネムシで、成虫は体長が約20mmあります。体色は濃い藍色や青銅色、赤銅色などさまざまな色をしているものがあります。光沢はあまりありません。成虫はインゲンマメ、ナス、ブドウ、クリ、ウメ、カキなどを食害し、イチゴの葉はほとんど食害を起こしません。ただし幼虫はイチゴ、サツマイモ、サトイモ、ラッカセイなど、多くの畑作物に被害を及ぼします。

アオドウガネは成虫の体長は約20mm、光沢のある緑色が特徴です。主に幼虫が畑作物への被害を及ぼします。アオドウガネによるイチゴへの被害は比較的少ないです。

ヒメコガネは小型のコガネムシで、成虫の体長は約15mm、体色は緑色のものもあれば、青色、赤銅色、栗色など、さまざまです。幼虫が畑作物に影響を及ぼしますが、ヒメコガネもイチゴへの被害は比較的少ないです。

マメコガネは成虫の体長が約10mm、光沢のある黒緑色をしています。幼虫はイチゴの根をほとんど食害しませんが、成虫はイチゴを含むさまざまな作物の葉や花、果実など、エサとなる対象が多種にわたります。

 

 

コガネムシの対策方法

コガネムシの生態と農作物への被害、対策方法について|画像2

 

コガネムシは成虫とふ化した幼虫が発生するまでの7〜9月が防除の適期です。

コガネムシはサクラやケヤキ、クヌギなど広葉樹の葉を好むので、まずはほ場周辺にある成虫が好むこれらの樹木がないか確認します。これらの樹木が多いと多発につながるので、周辺樹木の成虫の防除から始めます。

成虫の防除薬剤には「MEP水和剤」や「クロチアニジン水溶剤」などがあげられます。農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。農林水産省の「農薬登録情報提供システム」で、コガネムシ成虫に効果のある薬剤を調べることができます。

ただし、成虫の薬剤防除は難しいとされています。成虫が地上で活動する期間が短く、薬剤散布のタイミングが図りにくいことのほか、成虫の体を覆うキチン質でできた硬い外骨格により薬剤が体内に浸透しにくいことなどがあげられます。

そのため、見つけ次第捕殺するのが効果的です。手や虫取り網、トラップなどを用いて捕まえた後、踏み潰したり、凍らせたり、熱湯をかけたりといった方法で処分します。

幼虫の場合も薬剤防除または見つけ次第捕殺することが重要です。幼虫は土の中に棲息しているので、粒剤を土の中に混ぜるか、液剤を土壌中に散布します。耕している際に見つけた場合は、成虫同様、捕殺してください。

先で発生しやすい土壌条件について触れたように、未熟堆肥施すとコガネムシの幼虫が発生しやすくなります。そのため、有機物の施用には完熟したものを選んでください。

それから、どんな害虫にも、どんな作物を栽培する上でもいえることですが、雑草が生えていると害虫の生育や発生を許すことにつながるので、こまめな除草を心がけてください。

 

参照サイト

(2024年8月19日閲覧)

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