農業に携わると切っても切れない関係となるのが害虫です。
害虫は農作物そのものへの影響だけでなく、生産量の減少にも繋がるため、生業として農業を向き合う人にとっては厄介な存在です。
農薬で駆除を行うところも多いですが、消費者の食の安心・安全志向の高まりを考えると、大量の農薬使用は避けたいところです。そんな時に、役立つ害虫対策としてフェロモントラップがあります。
フェロモントラップとは?
昆虫がコミュニケーションを図るために利用するフェロモンを使った、害虫防除用の罠を指します。
昆虫は私達人間と同様、視覚、聴覚、触覚などの感覚を利用するだけでなく、化学物質、いわゆるフェロモンを利用してコミュニケーションを図ります。
フェロモンには特定の行動を引き起こす解発フェロモンと生理作用に関わる起動フェロモンがあります。フェロモントラップに利用される代表劇なフェロモンは、解発フェロモンである性フェロモンと集合フェロモン。この2種類のフェロモンは、昆虫を誘引する作用があるため、それをうまく利用して害虫を捕らえます。
フェロモントラップを活用すれば、畑に発生する害虫の種類、繁殖の様子を知ることができ、より効果的な防除方法に発展することができます。
主なフェロモントラップについて
粘着型
対象となる害虫を合成されたフェロモン剤で誘い込み、板や厚紙、ダンボール紙などにあらかじめ塗布した粘着性物質で捕らえる方法です。粘着性物質で捕らえることで、交尾率を下げることにつながり、害虫の繁殖を抑えることができます。使用方法、使用後の処理が簡便なため、現在では主要な捕獲方法として活用されています。
生け捕り型
フェロモン剤を利用する点は他のトラップと変わりませんが、呼び寄せられた虫を捕獲するだけのトラップです。生け捕りにすることで害虫が発生した要因を把握する調査に役立てることができます。また粘着型に比べコスト面や大型の害虫を捕獲する点で有利な方法です(粘着型の場合、定期的な粘着剤の交換が必要になります)。粘着型と比較すると誘引数は減りますが、生体を調査することで発生時期などを知ることができ、今後の防除に役立てることができます。
水盤型
フェロモン剤の下に水を張り、虫を溺れさせることで捕獲する方法です。虫は着水することにより飛べなくなります。こちらも生け捕り型同様、害虫の生態調査につながり、害虫予防に役立ちます。粘着型や電撃によって捕らえるトラップと比較すると、虫の外観を傷つけないため、肉眼で観察しやすい利点があります。
効果的にフェロモントラップを活用するには?
「誘殺数の減少」「誘引されない」という事態を避けるためには、以下のようなことに注意しましょう。
・使用し終えたフェロモン剤を放置しない
・使用上の注意に従い、フェロモン剤は定期的に交換する
・対象害虫によって最適な設置の高さは異なるため注意する
・フェロモンが効果的に広がるよう、風通しの良い場所に設置する
・1つのトラップには1つのフェロモン剤のみを使用。複数種類を一緒に使用しない
・フェロモン剤は光の影響を受けるため、街灯や交通量の多い道路の近くには設置しない
また性フェロモンを利用し、雄の成虫(野菜・花き類などの害虫)を誘殺する場合の適切時期の目安を以下に示します。
・コナガ
6月中旬に誘殺数が増加。6月上旬~7月下旬
・ハスモンヨトウ
9月中旬~10月下旬まで誘殺数が増加。9月上旬~11月中旬ごろまで
・タバコガ
9月上旬に誘殺数が増加。8月上旬~9月下旬
・タマナギンウワバ
7月上旬に捕獲数が増加。4月上旬~5月下旬。6月下旬~11月下旬
・チャノホソガ
6月中旬、7月上旬あたりで捕獲数が増加。6月上旬~7月下旬
・チャバネアオカメムシ
7月上旬から中旬に捕獲数が増加。5月下旬~8月中旬
これはあくまでも目安です。
地域や地形、農作物の違いにより、誘殺数と実際の害虫被害が一致しないこともあります。防除を行う際には、定期的に誘殺数を調査し、害虫のデータを蓄積する必要があります。数カ所に仕掛けたフェロモントラップのデータだけでなく、対象農作物、対象害虫の種類など様々な要因を併せ、総合的に対策方法を判断しなければなりません。
まとめ
正直に申し上げて、完全な駆除は難しいと考えています。
しかしフェロモントラップを活用し、大量発生する要因を突き止め、数を減らす事は、農作物への被害を最小限に抑える効果があると考えています。
害虫防除で重要なのは、まず害虫のことを知ることにあります。農業において厄介な存在ですが、冷静に対処しましょう。
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