光を利用した害虫対策まとめ。カメムシやアザミウマなど、害虫ごとの光に対する反応と防除法を紹介

光を利用した害虫対策まとめ。カメムシやアザミウマなど、害虫ごとの光に対する反応と防除法を紹介

農作物を害虫から守る手段には、殺虫剤などを用いる化学的防除や害虫の天敵となる昆虫を利用する生物学的防除の他、物理的に防除する方法があります。物理的防除の一例として挙げられるのが「光」を用いた方法です。

本記事では、光を利用した害虫対策をご紹介していきます。

 

 

昆虫の光に対する反応について

光を利用した害虫対策まとめ。カメムシやアザミウマなど、害虫ごとの光に対する反応と防除法を紹介|画像1

 

昆虫の行動様式(「個人や集団の行動の仕方のうち,その行動の仕方が固定され反復されるもの」出典元:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)には、

  • 無定位運動性※
  • 走性※
  • 営巣や防御行動などの固定的動作パターン
  • 学習行動

が挙げられます。

※走性とは「自由に運動できる生物が外界の刺激に対して一定方向に移動または運動する性質(出典元:小学館 デジタル大辞泉)」。無定位運動性は走性とは異なり、刺激に対して直接ある方向をとって動くものではない性質を指す。

走性にはその刺激の種類により、化学走性や温度走性などが挙げられますが、その中で光に関連するもの(走光性)があります。これは昆虫が光刺激に反応し、その運動に方向性が認められるものを指します。光刺激に向かって運動するものは正の走光性、その逆を負の走光性といいます。

昆虫が光に引き寄せられる仕組みや、どのような光に引きつけられるのかはまだ解明されていない部分もありますが、光を利用した害虫対策はこれらの特性を活かしたものです。

農林水産省が発表した2020年農業技術10大ニュースでは、赤色LEDによるアザミウマ防除の研究が取り上げられています。

関連記事:光を利用した害虫対策!2020農業技術10大ニュースに選出されたLEDによる最新研究も紹介

 

 

光を利用した害虫対策まとめ

光を利用した害虫対策まとめ。カメムシやアザミウマなど、害虫ごとの光に対する反応と防除法を紹介|画像2

 

カメムシの場合

・チャバネアオカメムシ

「集合フェロモン」を使って仲間を集める性質があるため、早期に防除することが重要です。光を用いた罠を用いて防除する場合は、チャバネアオカメムシが強く誘引される紫外線や緑/黄色の光を用い、最も活発に飛翔する夕方からの数時間に設置するのが良いとされています。

・ミナミアオカメムシ

紫外域の光に強く誘引される性質があるため、一般的な光源である白熱灯よりもブラックライトや水銀灯を用いるのがおすすめです。

光による誘引効果が強いので、圃場や果樹園内に設置してしまうと、そこに虫が集まってきてしまいます。光源を置く位置に注意しましょう。

コナジラミの場合

・タバココナジラミ

誘引トラップを仕掛けるのに向いている光源は、黄色、黄緑色、近紫外線を発するLED光源です。またビニールハウス内への侵入を防ぐ際は、紫外線が点いたり消えたりするフラッシュランプが効果的です。『光を利用した害虫防除のための手引き』に記載されている実験結果によると、“フラッシュランプを設置しなかったビニールハウスに比べて、70%以上の侵入阻止効果が認められた(引用元:25ページ)”とのこと。

アザミウマの場合

・ミナミキイロアザミウマ

ミナミキイロアザミウマが誘引されやすいのは青色と緑色の波長域です。そのため、これらの色の光源を利用したトラップを、最も活発な飛翔時間帯(夏:明け方と夕方の数時間、冬:昼間)に設置するのがおすすめです。

・ネギアザミウマ

近紫外域に誘引されます。また色彩選好性の実験結果から、ネギアザミウマは青色の粘着トラップで多く捕獲されることがわかっています。加えて、色彩トラップのその背景の視覚的な境界が誘引を促進することもわかっているため、色彩トラップを仕掛ける際は、色彩面が作物の上にいるネギアザミウマから見えやすいように、かつ他の色彩トラップと色彩面が重ならないよう設置することで捕獲の効率がよくなることが期待されます。

・チャノキイロアザミウマ

『光を利用した害虫防除のための手引き』より、特定の光波長についての走光性の実験を行ったところ、紫外線と緑色の波長域に走光性を示したことが明らかになっています。

・ミカンキイロアザミウマ

ミカンキイロアザミウマは光の波長が350〜355nmの近紫外線に多く誘引されると考えられています。

現在、チャノキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマの発生予察には、チャノキイロアザミウマの場合は黄色の、ミカンキイロアザミウマの場合は青色の粘着板を用いた誘引捕獲が行われています。

光誘引トラップは役立ちますが、発生数が多いと光誘引トラップ単体では防除に限界があります。アザミウマ類の防除を行う際は、光誘引トラップとともに薬剤散布やシルバーマルチなど、他の物理的防除法を組み合わせることをおすすめします。

ヤガ類の場合

夜行性のヤガ類(ハスモンヨトウやヨトウガ、オオタバコガ)は、夜間照明でその活動を抑える事ができます。抑制に効果的な波長域は緑色や黄色など、また点滅よりも連続点灯が効果的です。

アシグロハモグリバエの場合

アシグロハモグリバエの成虫は紫外光に強く誘引され、紫外光に青色光を混色することでより誘引率が上がることがわかっています。またアシグロハモグリバエが認識できない波長である赤色光や遠赤色光の照明下では、吸汁や産卵などの行動が抑えられることもわかっています。

 

 

天敵の誘引にも効果的

光を利用した害虫対策まとめ。カメムシやアザミウマなど、害虫ごとの光に対する反応と防除法を紹介|画像3

 

害虫の天敵を誘引するのにも、光が活用されています。例えば、タバココナジラミの天敵であるタバコカスミカメは紫色の光に強く引きつけられる性質があります。その性質を利用して、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構は、害虫のいる農作物の上にタバコカスミカメを移動させる誘引装置とそれらを効率的に回収する捕集装置を開発しています。

紫色LEDによるタバコカスミカメ誘引・捕集装置の開発… – 農研機構

光を利用した害虫対策をご紹介してきましたが、昆虫ごとに反応する光は異なり、また発生数が多いと光誘引トラップだけでは効果的に防除できない場合も十分考えられます。さまざまな防除方法を組み合わせながら、効果的に光を活用していただけると幸いです。

 

参考文献

  1. ページ2|光による害虫の物理的防除方法について(その1)|岩崎電気
  2. 光を利用した害虫防除のための手引き

害虫対策カテゴリの最新記事