ナス科に発生しやすい「害虫」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)

ナス科に発生しやすい「害虫」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)

ナス科の作物であるトマト、ナス、ピーマン、ジャガイモは、家庭菜園や農業において広く栽培されています。しかし、これらの作物は多くの害虫に悩まされることがあります。害虫の発生は作物の成長を妨げ、場合によっては収穫に甚大な影響を及ぼします。本記事では、ナス科作物に発生しやすい主要な害虫とその被害、発生時期、対策について詳しく解説します。

 

 

ナス科作物に発生しやすい代表的な害虫

ナス科に発生しやすい「害虫」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)|画像1

 

まず、ナス科の作物に共通して発生する害虫として以下の2種類が挙げられます。

アブラムシ類
テントウムシダマシ類

さらに、ナス科作物によく見られる害虫として以下のものも挙げられます。

アザミウマ類
ハダニ類
オオタバコガ
ヨトウムシ類
コナジラミ類
ハモグリバエ類

これら害虫ごとの特徴や発生要因、防除方法について詳しくまとめます。

 

害虫の特徴、発生要因、防除方法

ナス科に発生しやすい「害虫」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)|画像2

 

アブラムシ類

アブラムシ類は、主に新芽や葉の裏に寄生し、吸汁によって作物の生育を阻害します。大量に発生すると作物の生育が抑制され、茎葉が黄化して落葉し、収穫量が大幅に減少したり、大量の排泄物によって「すす病」が発生したり、といったことも起こります。また、アブラムシ類はモザイク病の病原ウイルスや葉巻病の病原ウイルスを媒介し、さらなる被害を引き起こすことがあります。

アブラムシ類は春から初夏(5〜6月頃)と秋(9〜10月頃)にかけての時期に多く発生するため、注意が必要です。また、気温が高く少雨の年に多発する傾向があります。アブラムシ類は気温の変動に応じて繁殖するため、温暖な気候では1年中発生することもあります。

そんなアブラムシの防除には、薬剤散布が有効です。特に、植付時や発生初期に薬剤散布を行うのが効果的です。ただし、アブラムシ類に対する捕食性の天敵は多数存在し、それらがアブラムシ類の密度を抑えるために有効に働くため、薬剤を散布する際には、天敵に影響が少ない農薬を選ぶことが望ましいとされています。

そのほか、被覆資材などの物理的防除やムギ類、ソルゴーなどを圃場近くに植栽することで、土着天敵を定着させることも効果的です。

テントウムシダマシ類

ナス科に発生しやすい「害虫」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)|画像3

 

テントウムシダマシ類の成虫および幼虫は、主にジャガイモやナスの葉を食害します。葉裏から表皮を残して葉肉を食べるため、筋状の食痕が残るのが特徴です。食害を受けた部分は白くなり、その後に褐色に枯れていきます。作物が生育初期に多数の幼虫によって食害を受けると、生育が抑制されてしまい、収穫量の減少につながります。

テントウムシダマシ類は、北海道や東北地方では年1回、北陸や山陰地方では年1〜2回発生します。初夏から秋まで2〜3回発生します。越冬した成虫は5〜6月頃に葉裏に産卵し、6月頃から幼虫による加害が始まります。テントウムシダマシ類は平均気温がやや低い地域(14℃以下)に分布し、気温が高くなる(28℃以上)と活動が低下します。

テントウムシダマシ類の防除には、発生初期に薬剤散布を行うことが有効です。葉裏に潜んでいるため、散布時には薬剤が葉裏にまでしっかりと届くようにしてください。テントウムシダマシ類は比較的薬剤に弱いため、アブラムシ類など、ほかの害虫が対象の薬剤が散布されていると発生が少ないとされています。

アザミウマ類

アザミウマ類は葉や花の汁を吸い、作物に被害をもたらします。アザミウマ類は体長が0.5〜2mmと非常に小さく、さらに花の中や葉の付け根などの見つけにくい場所に生息するため、発生を見逃しやすいため、株全体をしっかり確認することが大切です。アザミウマ類の被害は花に多く、花弁の変色や、蕾が被害を受けると開花が阻害されて果実が実らないことがあります。また、アザミウマ類はトマト黄化えそ病など病原ウイルスの媒介者でもあるため、注意が必要です。

アザミウマ類は春から秋にかけて発生し、特に乾燥した夏場に多発します。

アザミウマ類は薬剤による防除が効果的です。ただし、一部のアザミウマ類には薬剤に対する抵抗性があります。そのため、「耕種的防除」を組み合わせて発生を抑え、最終手段として薬剤散布といった化学的防除を行いことがおすすめです。

耕種的防除には輪作のほか、除草、作物残渣の確実な処分があげられます。

また青色や黄色に誘引されやすいアザミウマ類の性質を利用した「物理的防除」や天敵を利用するなどの「生物的防除」も有効です。

以下の記事もぜひ参照してください。

関連記事:アザミウマの生態と農作物への被害、対策方法について
関連記事:「光」で害虫防除。光を用いた害虫防除の最新研究と光を用いた害虫防除アイテムについて。

ハダニ類

ハダニ類はナスやジャガイモの葉裏に寄生して吸汁します。そのため、加害を受けた葉は白く変色したり、斑点模様が生じたりします。放置すると葉は光合成ができなくなり、枯れてしまいます。葉に生じる症状は病害のようにも見えますが、よく観察すると葉の裏に虫や脱皮殻、死がいを見ることがあり、ハダニ類の仕業であることがわかります。

ハダニ類の発生時期は3〜10月頃ですが、高い気温と乾燥した環境を好むため、梅雨明けから9月にかけて多発します。ただ、水には弱いので、雨の多い年は発生が抑制されることがあります。

ハダニ類は雑草にも発生します。そのため、除草を行った後に、雑草に生息していたハダニ類が作物に移動して被害を引き起こすことがあります。そのため、まず圃場周辺や畝面や畝間に雑草を生じさせないために、黒や銀色のポリフィルムを敷いて雑草を抑制することもハダニ類の対策として有効です。

薬剤を使用する際は、ハダニ類に適したものを選び、葉裏にしっかりと噴霧することが大切です。

オオタバコガ

オオタバコガの幼虫は葉や茎、果実に穴を開けるようにして食害します。成長すると摂食量が増加し、加害部位を食い荒らしていきます。オオタバコガによる被害が大きくなると、作物の生育は抑制されて収量の減少にもつながります。

オオタバコガは蛹で越冬し、春先に羽化したものが産卵、5月頃から幼虫が見られます。初夏から秋にかけて3〜4回発生し、特に8〜10月にかけて多発します。高温で降雨が少ない年に多発しやすい傾向にあります。

オオタバコガの防除には薬剤散布が有効ですが、果実内に潜り込んだ幼虫には効果が発揮されないため、注意が必要です。果実内部の幼虫へは、穴の開いた果実や穴からふんが出ているものを見つけた場合、それらを切り取って処分するという方法が効果的です。また、比較的新しい食害痕を見つけたら、その周辺に幼虫がいるはずなので、見つけ次第捕殺してください。

ヨトウムシ類

ナス科に発生しやすい「害虫」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)|画像4

 

ヨトウムシ類はヨトウガの幼虫で、作物の葉や実を食害します。ヨトウムシ類は夜行性で、昼間は土の中や株元に潜んでおり、夜になると活発に活動し、食害を引き起こします。ヨトウムシ類は成長するにつれて食害の量が増えていくので、株の葉全体に大きな穴を開けたり、新芽や果実を大きく損傷させることがあります。そのため、株全体が弱り、最終的には枯死に至ることもあります。

ヨトウムシ類は、地域によって異なりますが、4〜6月頃と8〜11月頃に発生します。特に雨の少ない年に増加する傾向があります。

ヨトウムシ類は早期発見が防除の鍵です。幼虫が若齢の段階であれば、薬剤散布は効果を発揮しますが、年齢が進むと薬剤への耐性が強くなることに注意が必要です。薬剤散布を行う際は、幼虫が潜む葉の裏や株元にしっかり薬液を行き渡らせます。また幼虫・成虫の捕殺も有効です。株元を確認し、土の中に潜んでいる幼虫を見つけたら取り除きます。葉や実に穴が開いているのが確認できたら、作物に潜んでいる可能性があります。こちらも見つけ次第、捕殺します。

コナジラミ類

コナジラミ類は、幼虫・成虫ともに茎や葉を吸汁して植物の成長を妨げます。茎や葉から栄養を奪われると、株が弱ることにつながります。また、コナジラミ類はトマト黄化葉巻病の病原ウイルスの媒介者であり、病害被害にもつながるだけでなく、コナジラミ類の多発によって生じた大量の排泄物によって「すす病」が発生するといった被害にもつながります。

コナジラミ類は春から秋にかけて発生し、特に6〜9月頃にかけて多発します。また、コナジラミ類は温暖な環境を好むため、ハウスでは1年中発生することがあり、注意が必要です。

薬剤散布が最も効果的ですが、発生初期に行うことが重要です。コナジラミ類は葉の裏側に生息するため、薬剤を散布する際は下方から噴き上げるように散布してください。

コナジラミ類の中には薬剤抵抗性をもつものもいるので、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行ってください。また黄色粘着板や防虫ネットといった「物理的防除」などを組み合わせた防除も有効です。

以下の記事もぜひ参照してください。

関連記事:コナジラミの生態と農作物への被害、対策方法について
関連記事:農薬抵抗性害虫への期待大!?振動を活用した害虫防除策とは

ハモグリバエ類

ハモグリバエ類は、幼虫が葉の内部を食害しながらトンネル状の跡を残すのが特徴です。トマト、ナス、ピーマンなど、果菜類では収穫対象である果実は加害されないため、加害量が少ない場合(たとえば、白い筋のようなトンネル状の跡が小葉に2〜3個まで)には、果実に収量や品質に影響はありません。ただし、加害量が多くなると光合成量が低下し、収量や品質に影響を与えるため、注意が必要です。

ハモグリバエ類は春から秋にかけて発生し、ハウスでは1年中で発生します。

ハモグリバエ類が多発した後に防除するのは難しいため、発生初期の防除が大切です。薬剤散布のほか、特徴的な食害跡を早期に発見したら、その葉を切り取って処分することも重要です。

そのほか、ハモグリバエ類は黄色に誘引される習性があるため、黄色の粘着トラップの使用や防虫ネットといった物理的防除と、土着天敵である寄生バチの活用も対策に有効です。

 

参考文献

  • 米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)
  • 夏秋啓子『植物病理学の基礎』(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

(2024年9月19日閲覧)

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