IPMで効率よく病害虫防除に努めよう

IPMで効率よく病害虫防除に努めよう

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農業において“病害虫”は切っても切れない存在なのではないでしょうか。
もちろん品種改良など科学の進歩により、病害虫に耐性をもつ品種もありますが、植物を育てていく中で“病害虫”の存在は必ずと言っていいほど目に入るのではないでしょうか。
しかし昨今、消費者による食の安全・安心志向の高まりにより、病害虫防除のために使用する農薬の印象はあまり良くありません。もちろん農薬だけに頼りきってしまうと、安定した野菜の栽培にもよろしくない影響が出るのは事実です。

そこで今回は病害虫防除に役立つ「IPM(総合的病害虫・雑草管理)」と呼ばれる手法についてご紹介していきます。

 

総合的病害虫・雑草管理(IPM:Integrated Pest Management)とは

言うなれば病害虫対策に使用するすべての技術を駆使する手法なのですが、重要視されているのは病害虫に対して適切な手段を“総合的に”講じるという点です。また経済性を考慮した手法のため、農家にとって痛手となる話ではないはずです。

IPMは農薬を使用しないわけではありませんが、闇雲に農薬を散布するわけでもありません。農地の環境や品種の特徴を捉えた上で、適切な病害虫防除方法を組み合わせていきます。
その際、必要であれば農薬を使用することになります。生物的・化学的・物理的など様々な防除法を組み合わせていく中で、必要がなければ農薬使用を抑えること、控えることも可能でしょう。
基本的にはまず輪作を行ったり、病害虫に耐性をもつ品種を導入するなどの予防を重視します。病害虫や雑草の発生要因を取り除き、もし発生してしまった場合にも、まずはその状況を把握することが重要視されます。そして防除が必要になった場合には、経済面を重視し、多様な防除手段を組み合わせることで経済的損失を防ぎます。

 

IPM実践例

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今回は埼玉県と千葉県のきゅうり栽培におけるIPM実践例を参考にご紹介していきます。

まず病害虫の存在の把握から行います。施設栽培のきゅうりにはアブラムシやホコリダニなどの害虫、うどん粉病や灰色かび病などの病気が見られます。化学農薬を利用した防除の難点として、薬剤抵抗性のある病害虫の存在が挙げられています。

そこできゅうり栽培に病害虫に耐性のある“抵抗性品種”を導入します。
加えて、栽培様式にも工夫を行います。例えば参考事例では、栽植する際5~6本/坪で植えていたきゅうりを3本/坪前後まで減らすことで、密度を低くし、病害虫被害を避ける対策を練りました。収量ではなく品質優先の栽培に変更します。

物理的防除の例では、防虫ネットの設置、粘着板の設置が挙げられています。
野外から害虫が侵入するのを防ぐため、ハウスの入り口に防虫ネットを設置。また虫の好む色をした粘着板を用意することで、野菜へ到達する前に虫を取り除きます。もちろん虫のサイズや特性によっては効果的でない場合もあります。そのため、他の防除法を組み合わるのです。

生物的防除では、害虫の天敵である「益虫」をハウス内に導入します。天敵の虫は生物農薬として専門店で購入することができます。収穫物には被害を及ぼさない種を選びます。
この方法でも解決しない場合に、化学的防除が登場します。IPMではむやみやたらに農薬を散布するわけでなく、病害虫が発生した時期などの予測に基づき、人や生物農薬に影響の少ない農薬を撒くことが推奨されます。

IPMによる病害虫防除の本質が理解できたのではないでしょうか。

 

データの蓄積で、病害虫防除は可能!

もちろんIPMについて理解しておかなければならないことはあります。
IPMの目的は病害虫の発生を0にすることではありません。病害虫によって、農業に経済的損失が出ないようにすることが目的とも言えます。

また事例を読んでいただいたことで気づいた人もいるかもしれませんが、即効性のある方法ではありません。病害虫の特徴は発生予測が必要になりますから、「手間がかかる」と捉える人もいるかもしれません。しかし病害虫を避けるには、病害虫のことをよく知る必要があると考えています。即効性のある農薬で対応する前に、まず“病害虫が発生しにくい環境”で野菜を栽培する必要があると言えます。新規就農を考えている方には、IPMの手法を“病害虫に対する考え方”として推奨したいですね。

それから、“病害虫発生予測が必要”と聞くと「長年の経験と勘が必要なのでは?!」と考える人もいるかもしれませんが、近年AIやIoT技術を活用した“スマート農業”のあり方が浸透しています。

2017年、幕張メッセで行われた「次世代農業エキスポ」では、様々な企業から革新的なクラウドサービスが紹介されていました。例えば、気象情報を駆使することで農作業に最適な時期の情報提供、病害虫予測ができるシステムがあります。そして、その情報を圃場管理システムと連携させることで、肥料や水やりといった農場管理も機械やAIがやってくれるのです。このまま技術が発展すれば、農業において完全に人手がいらなくなってしまうかもしれませんね。

実際には、IPMは農業手法というより、病害虫や病害虫が発生する要因を把握することが重要であるという農業の心得のように思えます。「病害虫から農作物を守るために農薬を撒く」という方法は、もう推奨されていないということなのかもしれませんね。

 

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