アブラナ科に発生しやすい「害虫」とその対策(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)【後編】

アブラナ科に発生しやすい「害虫」とその対策(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)【後編】

本記事はアブラナ科(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)に発生しやすい「害虫」とその対策についてまとめたものです。

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害虫の特徴、発生要因、防除方法

アブラナ科に発生しやすい「害虫」とその対策(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)【後編】|画像1

(画像はネキリムシ)

 

ネキリムシ

茎を食害する蛾の幼虫の総称で、主に春と秋に発生します。これらの幼虫は定植後や発芽間もない野菜類に対して深刻な食害を引き起こします。茎や葉を切断し、アブラナ科の野菜においては新芽の生長点を食害するため、芯止まりが起こります。ネキリムシによる食害は、農作物の初期成長に大きな影響を与えるため注意が必要です。

ネキリムシの成虫は、年に2~3回、もしくは4~5回産卵を行います。幼虫は夜間に加害を行います。

ネキリムシの発生を防ぐためには、雑草の管理が重要です。畑の周辺に雑草が繁茂していると、ネキリムシが発生しやすくなるため、除草を定期的に行います。また、発生の時期に適用のある薬剤を土壌に混和することも防除につながります。土中に潜んでいる幼虫を捕殺することももちろん有効です。

被害が発生した場合には、株元にまくだけの「ベイト剤」と呼ばれる殺虫剤が有効です。ベイト剤は、ネキリムシを誘い出し、摂食させて防除する殺虫剤です。

ハダニ

春から晩秋にかけて発生する害虫で、特に乾燥した条件で多発しやすい特性があります。主に植物の葉の裏に生息し、吸汁します。ハダニが吸汁すると、葉の表面には無数の白い斑点が生じます。これはハダニによる初期の被害の兆候です。ハダニが多発生すると、葉の上にクモの巣状の網を張ることがありますが、これも被害を示す一つのサインとなります。

ハダニは高温で乾燥した環境を好みます。特に梅雨明け後に多発する傾向があります。乾燥した季節や環境では特に注意が必要です。

先述したように、ハダニは乾燥した環境を好むため、定期的な葉裏への散水は繁殖を抑えるのに効果を発揮します。強めに散布することで卵や成虫を水で流すこともできます。

そのほか、酢を水で約10倍に薄めたものを卵や成虫に吹きかけたり、殺ダニ剤を散布したりするのがおすすめです。ハダニ類のほか、アブラムシ類やコナジラミ類などにも効果がある気門封鎖剤(エコピタ液剤など)も有効です。

また圃場がハダニが発生しやすい作物、イチゴやナシ、チャ園などに隣接した場所にある場合には、他の野菜や果樹なども被害を受けるので、防除を徹底してください。適用のある薬剤を散布する場合には、薬剤抵抗性の発達を防ぐためにも、同一薬剤のみを繰り返し使用することは避け、作用性の異なる系統の薬剤をローテーションで散布してください。

関連記事:ハダニの生態と農作物への被害、対策方法について

ヨトウムシ

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ヨトウムシ(ヨトウガ)は、春季の5〜6月と秋季の9〜10月にかけて発生する害虫です。この幼虫は非常に広範囲な食性を持ち、イネ以外のほぼすべての作物を食害します。

ハクサイにおいては、若齢幼虫の時期には外葉1〜2葉をスカシ状に食害するために被害が目立ちませんが、3齢幼虫に成長すると食害が増大し、終齢幼虫の時期には夜間に結球内部を激しく食べるため、作物に深刻な影響を与えます。なお、終齢幼虫は日中、葉陰に潜んでいます。

ヨトウムシは成虫になると農薬が効きづらくなります。そのため防除を行う際は、卵や幼虫の間に駆除することが大切です。まず作物を防虫ネットで覆うことで成虫の産卵を防止します。他に、幼虫が集団で加害している場合は、若齢幼虫が集中している葉そのものを切り取ったり、手で除去したり、見つけた卵塊は速やかに取り除くなどの方法があります。

適用のある薬剤は幼虫が発生した初期段階に散布することが重要です。産卵期である初夏から秋にかけて行うのが効果的です。それから成虫は葉の裏側に産卵し、中老齢の幼虫は葉の陰に潜んでいることが多いので、薬剤を葉の裏側にも丁寧に散布してください。

ハンミョウやハナアブなどの天敵を増やすことも有効です。

エカキムシ(ハモグリバエ・ハモグリガ等)

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エカキムシは、主にハモグリバエやハモグリガの幼虫を指します。これらの幼虫は葉に潜り込んで食害することで知られています。食害する際、模様を描くような白っぽいスジ状の痕を残すことから「エカキムシ」(絵描き虫)と呼ばれています。

エカキムシによる被害が進行すると葉が枯死することもあります。育苗中から寄生するため、寄生された苗が本圃に持ち込まれることで発生が広がる傾向があります。

エカキムシの防除方法ですが、発生数が少ない場合には、葉に描かれた模様の終着点近くに幼虫が潜んでいることがあるため、幼虫を見つけ次第潰すか、被害の葉ごと取り除きます。また“寄生された苗が本圃に持ち込まれることで発生が広がる傾向があ”るため、育苗段階で寄生されていないかチェックを怠らないことも重要です。

薬剤防除も可能ですが、エカキムシの幼虫は薬剤抵抗性が発達しているため、使用する薬剤の選定には注意が必要です。

薬剤を活用する以外の方法も合わせて検討してください。たとえば施設栽培においては換気窓に1mm目合いのネットを張り、成虫が飛来して施設内に侵入するのを防ぐことができます。また、圃場周辺の除草は、エカキムシの発生密度を下げることにつながります。

加えて、エカキムシの天敵であるハモグリコマユバチやイサエヤヒメコバチが市販されているため、天敵の導入も一つの防除手段となります。

アザミウマ類

アザミウマはカメムシなどと同様に吸収型の口器を持っており、植物に突き刺して植物汁や破壊した組織を吸い取ることで食害を行います。アザミウマによる食害を受けると、葉裏には小褐色の斑点が生じ、葉が巻き込んで褐変するのが特徴です。食害痕は商品価値を著しく下げる原因となったり、食害痕から細菌が繁殖すると、ゴマ状斑の痕が残ったりすることもあります。

アザミウマは、春まき栽培の場合は4月から、夏まき栽培の場合は7〜8月に多く発生します。なお、播種から育苗期にかけてはアザミウマだけでなく、アブラムシなどの微小害虫が同時に発生することが多いです。夏まき栽培の場合はさらにコナガやアオムシなど他のチョウ目害虫も発生します。

アザミウマの防除方法ですが、アザミウマが光の乱反射を嫌う性質を利用して、銀色または白色の反射シートをうね面に敷くことが有効です。このようなマルチを使用して、アザミウマの定着を防止します。周囲の雑草管理も重要です。アザミウマは多様な植物に生息するため、圃場周辺の雑草を除去することで、発生のリスクを低減できます。育苗時からの防除を徹底し、幼虫や成虫が圃場に入り込まないように注意してください。

また適用のある薬剤の使用も有効ですが、アザミウマは薬剤抵抗性が発達しやすいため、同一の薬剤を継続的に使用することは避け、異なる作用の薬剤をローテーションで散布してください。

関連記事:アザミウマの生態と農作物への被害、対策方法について

 

参考文献

  1. 米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)
  2. 夏秋啓子『植物病理学の基礎』(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

(2024年11月8日閲覧)

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