テレビ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)で放送され、注目が集まったジャンボタニシ。1981年に食用目的で日本に導入されましたが、野生化したものが水稲などの農作物に食害を与えることが判明し、1984年には有害動物に指定されて輸入が禁止されました。しかし養殖業の廃業などで捨てられたものや逃げ出したものがあちこちに広がって野生化し、問題となっています。
そこで本記事では、食害をもたらすジャンボタニシから農作物を守るために、知っておきたい生態と対策法をご紹介していきます。
ジャンボタニシとは
南米原産の淡水巻貝で、和名はスクミリンゴガイ。成貝の大きさは5〜8cmで、日本に生息するヒメタニシと比べるとその体積はおよそ10倍です。雑食性で主に植物質を好みますが、動物質のものも食べます。1日に自分の体重の半分ほどを摂取する食欲旺盛な生き物です。
専門家によると、稲は決してジャンボタニシの好物ではないそうなのですが、田植え直後は生育初期の稲しかないために食べられてしまうのだとか。ジャンボタニシは柔らかいものを好むため、稲が生長し、しっかりと堅くなれば食べられることはありません。そのため注意すべきは田植え直後から2〜3週間です。
生育域
ジャンボタニシは寒さに弱く、また土にもぐるのが下手なことから、冬にはほとんど死んでしまいます。そのため、主な生育域は九州、四国、本州の太平洋側などの温暖な地域なのですが、現在分布拡大が続いています。地球温暖化の影響を受け、気温上昇は世界の平均に比べて大きいと言われている日本。今後も日本の気温上昇が続けば、ジャンボタニシの生育域は拡大していくことでしょう。
特徴
先述したように、在来種のタニシとは大きさに差があります。また殻は在来種に比べると丸い形をしています。
在来種との決定的な違いは卵です。貝は卵を産んで増えますが、在来種は子貝になってから外に出てきます(参考文献4)。一方ジャンボタニシは数十〜数百個にもなるピンク色の卵を産みます。植物や水路の壁面にピンク色の粒々としたものを見つけたら、ジャンボタニシの卵かもしれません。とてもわかりやすい見た目をしています(参考文献2)。
注意点
ジャンボタニシには広東住血線虫が寄生している可能性があります。この寄生虫は人に感染する可能性があります。この寄生虫が粘膜や傷口から体内に入ると、最悪の場合、死に至ることも。そのためジャンボタニシを除去する際には必ずゴム手袋等を使用しましょう。
ジャンボタニシの対策法
(↑)ジャンボタニシの鮮やかなピンク色の卵。
貝や卵を見つけた時には
ジャンボタニシを見つけたら捕殺しましょう。寄生虫がいる可能性があるのでゴム手袋を着用して行います。卵は水に弱いため、水中に払い落とすかつぶすことで駆除します。
食害が発生してしまったら
食害が発生した場合は防除剤を使った化学的防除を行います。
- メタアルデヒド粒剤…貝を麻痺させ殺貝する
- チオシクラム粒剤…貝の活性を低下させる
- 燐酸第二鉄粒剤…貝がこれを食べることで内臓機能を破壊し、殺貝する
などの薬剤を使って防除しましょう。
予防するには
予防のキーワードは3つ
- 侵入させない
- 食べさせない
- 広げない
です。
まず水田に貝が侵入しないよう、取水口に5mm以下の網目のネットや金網を設置しましょう。
そして先述したような防除剤や浅水管理でジャンボタニシに稲を食べさせないようにしましょう。ジャンボタニシは水深2cm以下では活動することができません。そのため、殻の高さよりも水を低く保つことで食害を軽減することができます。田面に深水部分がなくなるよう、平らにすることを意識しましょう。
ただ近年、大雨による増水が多発しています。大雨による増水によってほかの圃場から侵入されてしまうこともあるので、予防と対策の両面で防除剤を準備しておくことをおすすめします。
最後の「広げない」は、寒さに弱いジャンボタニシを越冬させないための方法です。殻高が1~3cmのジャンボタニシは土中で越冬するのですが、厳寒期に耕うん作業を行い、ジャンボタニシを物理的に破砕したり、殻を傷つけて耐寒性を低下させることで数を減らすことができます。
また日本農業新聞平成22年7月16日の記事には、ジャンボタニシが柔らかいものを好む習性を利用して、水田に竹の子や青竹、タケノコ水煮などを置き、稲への食害を防ぐ方法が掲載されていました。
予防と対策を並行して、ジャンボタニシによる食害から守りましょう!
参考文献