あたたかい季節になると、畑の上を舞うモンシロチョウの姿が。「のどかな田園風景」にも見えますが、農家にとっては白い悪魔が舞っているのと同じこと!
モンシロチョウがいるということは、その幼虫(アオムシ)がいるということです。アオムシ(青虫)は作物を食い荒らす立派な害虫です。被害の大きさによっては、キャベツが丸ごとハチの巣のようになることも…。
本記事では、害虫であるアオムシの生態や対策方法について紹介していきます。
アオムシ(青虫)の生態・発生時期について
「アオムシ(青虫)」という名称は、明確に定義されているものではありません。
アオムシ(青虫)は、チョウ目(鱗翅目、チョウやガ)の幼虫のうち、長い毛で体を覆われておらず、緑色のもの。緑色でないものを含めイモムシ(芋虫)といい、長い毛で体を覆われているものをケムシ(毛虫)という。
出典元:アオムシ Wikipedia
“長い毛に覆われておらず、緑色のもの”は「モンシロチョウの幼虫」に留まりません。ガの幼虫のアオムシもいれば、アオムシ状の幼虫の中にはチョウ目ですらないものも。ですが本記事では、害虫として有名な「モンシロチョウの幼虫」に特化してご紹介していきます。
・卵
モンシロチョウは畑の上を低空で飛び回りながら、小さくて黄色く細長い卵を葉の裏に産みつけます。モンシロチョウが飛び回っている周辺の葉の裏を探すと、卵を見つけることができるはずです。
・幼虫(若齢)
モンシロチョウの幼虫の孵化直後の体色は黄色です。ですが緑色の葉を食べ、成長していくにつれ、緑色になります。
・幼虫(中齢〜老齢)
5齢を過ぎると体長約30mmほどになります。食欲旺盛な幼虫は葉っぱを食べ尽くし、葉脈だけにしてしまいます。活動が最も活発になるのは、
- 4〜6月頃
- 9〜11月頃
で、その時期に植えられるアブラナ科の作物を食べ尽くしてしまいます。
・蛹
アオムシは体長約40mmほどに成長すると、蛹になるための準備を始めます。葉から落ちないように糸を分泌し、体を固定します。1週間ほど蛹の状態となり、蛹の中では、成虫になるための変化が生じます。
・成虫
成虫となったモンシロチョウは大好物のアブラナ科の植物の葉を求めて、菜の花畑やキャベツ畑を飛び回ります。
どんな農作物を好むのか?
アオムシが好む野菜類と草花類には以下のようなものが挙げられます。
<野菜類>
- キャベツ
- ブロッコリー
- 白菜
- ルッコラ
- 小松菜等
アブラナ科が昆虫を寄せ付けないために出す「カラシ油成分」。この成分は大根などのピリッとした辛味成分です。アオムシには、その成分を解毒する仕組みがあるため、アブラナ科の植物を独占状態で食べることができます。
<草花類>
- コスモス
- ミント
といった草花やハーブ類にも食害を及ぼすことがあります。
発生時期
アオムシは、
- 4〜6月頃
- 9〜11月頃
に発生します。特に多く発生するのは5〜6月です。真夏には数を減らしますが、涼しい季節がやってくると再び現れます。
アオムシ(青虫)の天敵の力を借りよう
アオムシによる食害からキャベツを守るために、葉の裏側を1枚1枚確認して、卵や幼虫がいないか確認するのは至難の技です。
そんなときは、アオムシの天敵の力を借りましょう。捕食性・寄生性の天敵の働きを活用すると、アオムシの発生が抑えることができます。
・アオムシコマユバチ
アオムシの天敵に、アオムシコマユバチというハチがいます。このハチはアオムシに寄生します。
まだ若いアオムシ(青虫)を見つけると、産卵管を刺して卵を産み付けます。卵はアオムシ(青虫)の体内で孵化し、孵化したハチはアオムシ(青虫)を内側から食い破ります。時に9割を超える寄生率を誇り、アオムシにとっては正真正銘の天敵と言えます。
ただしアオムシコマユバチは、アオムシが食害した葉の食い痕に反応してアオムシを探すため、アオムシの食害が発生する前に役立つとは言い難い面も・・・。とはいえ、次の世代の数を減らすことはできますから、頼りたい昆虫といえます。
・アシナガバチ
アシナガバチは肉食のため、アオムシをエサとして食べてくれます。アシナガバチは子供を育てるために、アオムシをエサとして利用します。親バチはアオムシを捕獲すると、噛み砕き、肉団子状にします。それを巣に持ち帰り、子供たちのエサにするのです。
効果的なアオムシ(青虫)対策は?
アオムシ(青虫)の対策として、主に以下の4つが挙げられます。
・防虫ネットや寒冷紗
モンシロチョウが作物に近づいて産卵しないように、防虫ネットや寒冷紗で覆います。隙間なく覆うことができれば、産卵を防げるのでかなりの効果が期待できます。ただし、ネットの隙間からチョウに入り込まれると卵を産まれ放題になります。また、作物の世話をする時に防虫ネットを外すと、その隙に卵を産まれることがあるので注意が必要です。さらに、ネットの隙間から入るアブラムシには効果がないようなので別の対策を講じる必要があります。
・コンパニオンプランツを植える(レタス)
コンパニオンプランツとは、ある作物の隣に植えることで害虫駆除や成長促進の効果がある植物です。キャベツなどアブラナ科の植物には、コンパニオンプランツとしてレタスが適しているとされます。レタスの方が早く育ってしまうので、先に収穫の時期を迎えてしまうことが難点ですが、アオムシ(青虫)を避ける効果は高いようです。農薬を使わず害虫駆除ができ、ついでにレタスも収穫できるのでお得な方法と言えます。
・農薬
即効性を考えた場合、やはり農薬の効果は魅力的です。コンパニオンプランツを植えた場合はその作物を世話しなければなりませんし、防虫ネットを使った場合はネットに隙間がないか点検する必要があります。それに比べると、農薬散布は手間は少ないと言えます。ただ、うかつに農薬を使ってしまうと益虫も同時に駆除してしまうことになりかねません。また、無農薬や有機栽培を目指している農家には、そもそも選択肢になりません。
・手で捕獲
意外にも多く採用されている方法が、アオムシ(青虫)や卵を見つけて捕獲し、駆除するというものです。見つけた分は確実に駆除できますが、見落としがあるかもしれませんし、駆除中もモンシロチョウは卵を産み続けます。大きな畑を持っている場合はかなりの重労働になるので、比較的小さな畑で行うことが一般的です。駆除だけを単独で行わず、雑草を抜いたり水をやったりしながら同時に駆除を行う農家が多いようです。
まとめ
アオムシ(青虫)は小さい虫ですが、大量に発生することがあり、そうなると被害は甚大です。数日入院した人が畑を見に行ったらキャベツが穴だらけだったという情報もあります。アオムシ(青虫)が発生してから対処するのは大変なので、予防を第一に考え防虫ネットやコンパニオンプランツなどの手段を講じましょう。
それでもモンシロチョウが畑の周りを飛んでいたら、要注意のサインです。作物をよく見て、葉に穴が空いていたらアオムシ(青虫)がいると思って、葉の裏や隙間を徹底的に探しましょう。葉に穴が空いていなくても卵がある場合があります。手作業で駆除するか、被害が大きくなる場合は農薬を使う覚悟をしましょう。
参考文献
- アオムシ(モンシロチョウ)
卵、若齢期、中齢期の姿などを写真で見ることができます。 - 5分でわかるモンシロチョウの生態!卵~幼虫~さなぎ~成虫と一生を解説!
- 畑の害虫図鑑〜アオムシ編〜【畑は小さな大自然vol.29】 マイナビ農業
- アオムシ(青虫)| 発見のポイントと有効な駆除対策は? AGRI PICK
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