カメムシにいい印象を持つ人はいないでしょう。一般的には「臭い」というイメージでしょうが、農家の人にとってはさらに悪いイメージがあります。カメムシは、農家の人がせっかく育てた農作物を荒らす害虫なのです。好きになる要素のないカメムシですが、この記事では誰もが嫌うカメムシの生態や対策方法を学んでいきます。気が進まないかもしれませんが、農作物への被害を最小限に留めるためにご一読ください。
カメムシの生態について
カメムシは1年を通して発生しますが、4月~10月の発生が特に多いです。越冬した成虫が初夏に産卵し、梅雨明けや夏後半には数が増えます。雪の深い地域では越冬のために、冬場に家屋へ入り込むこともあります。
カメムシの種類はとても多く、豆類・ナス科・アブラナ科を狙う種が見られます。駆除の方法はどの種でもあまり変わりません。幼虫・成虫ともに農作物に被害を与えるため、年間を通して対策が必要となります。カメムシは葉をかじるのではなく、針状の口を農作物に刺して養分を吸います。一見してわからない被害なので放置してしまうことが多く、いつの間にか被害が広がっている場合があります。
特に「マルカメムシ」「イチモンジカメムシ」「ホソヘリカメムシ」は豆類を好み、莢(さや)の中の実の養分を吸うため、実がならなかったり変形したりします。トマトが吸われると、吸われたところがスポンジ状に変形します。
臭い匂いを嫌う生き物が多いせいか、カメムシには天敵があまりいません。そのため、駆除をしないと増える一方です。あらゆる植物に寄生するので、自分の農場を守っていても他の畑から流入してきます。中でもホソヘリカメムシなどは雑草が発生源となっており、畑の近くに茂みがあるとそこから農場に侵入してきます。クサギカメムシやチャバネアオカメムシは杉の球果をエサとしており、暖冬の翌々年に大量発生することが多くあります。
カメムシは農作物にどんな被害を及ぼすのか?
カメムシが襲う農作物は多岐にわたります。前述した豆類やアブラナ科、ナス科の植物をはじめ、カボチャ、ピーマン、ジャガイモ、サツマイモ、イチゴ、稲、タバコにも付きます。果実部分を好んで吸い、若い果実を吸汁されると変形したり落下したりします。熟した果実の場合は腐敗したり食べると異臭がしたりします。
豆類では前述のように莢の上から実を吸うため、実の入りが悪くなったり実が変形したりします。果実部分以外では新芽や茎葉を害します。特に新芽の被害は深刻で、新葉が奇形になる・茎が曲がる・葉に穴が開くなどの症状が出ます。
カメムシの害を受けると、その作物は基本的に生育不良となり、商品価値が著しく落ちて出荷できなくなります。発見して駆除した際に、捕獲しようと触るとご存知の悪臭がする汁を放ちます。この汁の匂いが作物に付いても商品価値が下がるので、駆除の際にも慎重でなければなりません。
農家の味方のカメムシもいる?
嫌われ者のカメムシですが、種類が多い分、中には益虫となる種類もいます。それがヒメハナカメムシ類です。害虫であるハダニやアザミウマを捕食してくれます。アザミウマは非常に小さな昆虫で、ナスなどに付き、果実の表面に焼けたような傷を発生させます。ヒメハナカメムシにアザミウマを食べさせることで、農薬を使わずアザミウマを退治できることから、ヒメハナカメムシを生物農薬として使うための研究も行われています。
効果的なカメムシ対策は?
カメムシは種類も多く、様々なところから飛来してくるので駆除は大変です。それでも放置するわけには行かないので、以下4つの対策を試してみてください。
・捕獲
農作物を植えている面積が広い場合は不可能ですが、中小規模の農場で比較的発生が少ない場合にはある程度有効です。発見したカメムシを駆除する、いわゆるサーチ・アンド・デストロイ方式ですが、無理に手でつかむと臭い液を出します。箸でゆっくりとつまむか、優しく押してビニール袋や空き瓶などに追い込むと良いでしょう。
・防虫ネットや寒冷紗(かんれいしゃ)
カメムシを物理的に農作物に近づけなくする対策です。カメムシは飛来してきたり、地面から歩いて近づいてきたりします。地面にもそれ以外の部分にも、隙間ができないように防虫ネットや寒冷紗を使いましょう。カメムシは種類が多く、小さい個体もいるので、網目から侵入されないようなネットを選んでください。
・木酢液(もくさくえき)
カメムシが嫌う匂いの1つが木酢液(もくさくえき)とされています。木酢液は昔は農薬でしたが、現在は農薬取締法によって農薬として販売されておらず「農薬的な使用ができるもの」として売られています。薬効が認められていない点に注意が必要です。小瓶に少量入れて作物の近くに置くか、100倍程度に薄めたものを農作物の周りに散布して使います。
・農薬
広範囲にカメムシが発生したときの切り札が農薬です。ベニカ水溶剤が効果的とされています。1度の散布で根絶は難しいのが実情で、カメムシの発生に都度繰り返し使用します。ベニカ水溶剤は成熟した豆類には不向きです。その場合は別の農薬を使いますが、カメムシ用であることと、使用可能な作物について必ず確認してください。
まとめ
カメムシはいつでもどこにでも発生する可能性があります。住宅地でも干した洗濯物の中に入り込んで、服を着た途端に例の臭い液を出す例も数多く報告されています。カメムシを上から見るとそれなりの大きさがある虫に見えますが、正面から見ると実は意外と薄いため、ちょっとした隙間から侵入されてしまします。厄介なのが「潰して殺すと臭い」ということです。
カメムシ同士を閉じ込めておくと、お互いの匂いで失神する場合もあるらしいです。うかつに手を出すと手痛いしっぺ返しを食らいます。カメムシ対策として大切なのは予防です。防虫ネットなどで予防してください。それでもカメムシがついてしまったら、この記事にある他の方法で何とか撃退しましょう。
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