益虫をフル活用!害虫は虫で倒すという考え方

益虫をフル活用!害虫は虫で倒すという考え方

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農業を行う上で厄介な存在の一つに害虫の存在があります。
農作物を食べてしまい、害虫被害にあって弱った種から病気が広がることもあります。

そんな害虫予防と対策のために農薬が利用されることが多いのですが、消費者の中で食の安心・安全が高まる昨今、農薬の誤ったイメージから「農薬=体に悪い」という印象がつき、農薬使用を控えることを考えている農家さんもいることでしょう。

農薬=体に悪いという構図は決して正しいものではありませんが、農薬に耐性のある病害虫が登場してしまうことがあり、続けて同じ農薬を使い続けても害虫被害が収まらない難点があるのも事実です。
そこで同じ虫でも「益虫」と呼ばれる農業に害を与えず、害虫駆除に一役買ってくれる虫を味方につける農法が注目されています。

農薬として虫が販売されている?!

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農業における害虫をそれらの天敵である虫を利用して駆除を行う「天敵農法」が注目を集めています。益虫が害虫を駆除してくれるため、農薬を用いたときの難点である「害虫以外の虫も殺してしまう」「農作物への農薬残留の可能性」などを避けることができます。昨今、この「天敵農法」に使用される益虫の“開発”と利用は、決して珍しいものではなくなってきました。

ナス農家でよく利用されている益虫に「タバコカスミカメ」という虫がいます。数ミリほどの緑色の虫であり、ナスの代表的な害虫であるコナジラミなどを食べる益虫です。
ナス収穫量が1位の高知県では、県内ナス農家の90%以上が「タバコカスミカメ」を導入しています。害虫が発生する前には、ゴマの葉などを食べて成長するのですが、主要な収穫物であるナスには害を与えません。

益虫を利用した農法に切り替えたことで、週1回撒く必要があった農薬も不要となり、1度虫を放てば害虫を食べてくれるため、コストもかからないと言います。

また害虫の代表格アブラムシの天敵としておなじみのテントウムシも、「生物農薬」として活用される益虫の一つです。
生物農薬として販売される益虫は品種改良が行われており、飛翔能力に乏しいのが特徴です。生物農薬として登録される場合には国の審査が必要となり、承認を得なければ販売することはできません。

その承認項目の中には、「生態系のバランスを乱さない」ことが含まれています。
これは生物農薬に含まれる外来種が、繁殖により日本国内の生態系が乱さないためです。人為的に飛翔能力の低い個体を選抜し、遺伝的に飛翔能力がなくなるように育てられた虫だけが生物農薬として登録されるため、遠くへ移動することはできず、万が一農地の外へ飛び出してしまっても、野生化では生きられないように改良されているのです。生物農薬のテントウムシも、爆発的に増殖する可能性を防ぐため、飛ぶことができません。

同じくアブラムシの天敵であるコレマンアブラバチも生物農薬として販売されています。アブラムシに寄生することで害虫増加を防ぐ特徴があり、探索能力に長けている特徴があります。常にアブラムシを探して飛び回るため、アブラムシ駆除にかける労力を省くことができます。

病害虫対策、まずは病害虫を知ることから

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病害虫対策に役立つ益虫、生物農薬についてご紹介しましたが、病害虫が発生するのには必ず理由があります。そのため発生しやすい環境や条件が揃っていないかどうか、あらかじめ調べることも農作物を害虫被害に遭わせないためには重要です。
病害虫が発生する主な原因は、

・病原菌や害虫の存在そのもの
・生育環境
・植物の状態

が挙げられます。今回着目している害虫は、飛来や移動によって植物に近づき繁殖します。ただ害虫にも特定の植物には近寄らないなどの特徴がありますから、事前に虫の特徴を知っておくことで害虫被害を避けることは容易にできます。

例えば有名なのはアゲハチョウとモンシロチョウを対策するために植えるコンパニオンプランツの存在です。

大根・カブを植える時には近くに人参も植えましょう。アゲハチョウとモンシロチョウは、餌になる植物以外の植物を避けて飛ぶことが知られています。大根・カブと人参を一緒に植えると、それぞれの蝶にとって片方は餌に、もう片方は避けたい植物となるため、同時に害虫を避けることができ、被害を減らすことができるのです。

また人が風邪をひいてしまう時と同じで、病害虫被害は弱っている植物から広がります。病害虫の立場から見れば、彼らが増殖するのに適した条件が揃うことで病害被害は広まります。風通しが悪く、温度が上がりやすい場所に植物を植えると、そこは害虫が繁殖しやすくなります。日当たりや土壌の酸度、排水具合が植物に合わなければ、病気にもかかりやすくなります。

 

「野菜には虫がつく」は必ずしもそうではない

害虫を見つけ次第取り除くことは、農作物への被害を拡大させないために大切です。しかし同時に、害虫を観察し、植物周辺の環境を改善することで害虫の発生を防いだり、益虫の存在を探すことも大切だと考えています。虫が苦手な人にとっては、害虫も益虫も関係なく嫌なものとして認識されるかもしれませんが、むやみやたらに農薬を巻くだけでは、害虫と一緒に益虫も駆除している可能性が高まり、とても勿体無いことです。また無農薬野菜※に切り替えると虫がつくイメージがあるかもしれませんが、「無農薬にすると必ず虫がつく」というわけではありません。害虫対策に最も重要なのは、農薬や益虫の存在そのものではなく、農地周辺の環境を観察し、害虫の生態を把握することでしょう。そのうえで効果的かつ効率的な害虫対策を行うことが必要になるのです。

※実際に野菜を販売する際には、食品表示法により“無農薬”という表記はできませんのでご注意ください。“無農薬”表記により消費者に優良誤認が生じることを防ぐためです。実際に無農薬で野菜を育てていたとしても、表記はできません。

 

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