一般にはあまりなじみがない名前ですが、農業の現場ではハクビシンによる被害が顕在化しています。
ハクビシンの農作物被害は今に始まったことではありませんが、個体数の増加や野生化したハクビシンが自然界でエサを十分に得られないことから人里に出没し、農作物を荒らすという被害事例が全国各地で多発しています。
ハクビシンとはどんな動物なのか、そしてどんな農作物被害が出ているのか、そしてその防止法について解説します。
夜の樹上生活者、ハクビシン
ハクビシンは完全な夜行性なので、昼間に人間が見かけることはほとんどありません。
それゆえにハクビシンという動物がどんな姿をしているのか知らない人も多く、もし見かけたとしても猫と風貌が似ていることから野良猫だと勘違いする人もいます。
ハクビシンの特徴として夜行性であることともう一つ注目したいのが、とても身のこなしが軽やかな動物であることです。ほとんどの時間を木の上で生活しているためジャンプ力やバランス力に優れており、電線のような細いロープ上の場所でもスイスイと行動する能力を持っています。
しかも猫のように体が柔らかいので、ちょっとした隙間で自由に通り抜けられるため、農業被害以外にも住宅の中に入り込んで住み着いてしまう被害事例も多く見られます。
果物畑を中心に農作物被害が拡大中
ハクビシンは雑食性なので何でも食べるのですが、その中でも果物が大好物です。そのため農作物への被害は果物畑に集中しており、以下のような農作物が食い荒らされることが問題になっています。
<ハクビシンの食害が発生している主な農作物>
・ぶどう
・桃
・梨
・ミカン類
・柿
・リンゴ
・サクランボ
・スイカ、メロン
・イチゴ
その他にも芋類を好んで食べるため、サツマイモやジャガイモにも多くの被害が発生しています。
以下は農林水産省がまとめたハクビシンによる農作物への被害状況推移です。少々データが古いですが、確実にハクビシンの被害が拡大していることが分かります。
同調査では他の動物による農作物被害についてもデータが公表されており、タヌキによる被害が減少している一方でハクビシンの被害が増加していることも明らかになっています。
ハクビシンの生態をいかした撃退法
ハクビシンの生態には、いくつかの特徴があります。木登りが得意で狭い隙間でも自由に通り抜けることができること、そしてもうひとつ押さえておきたいのが「電気ショックが苦手」という特徴です。
すばしっこくて狭い隙間を通り抜けられるということは、ネットなどで畑を覆っただけではあまり効果がないことはお分かりいただけると思います。もしネットで侵入を防ぐのであれば、ハクビシンが通り抜けられる限界とされる6センチ以下の隙間しかないほどしっかりと防御する必要があります。
しかし、これも完璧ではありません。やはりここはハクビシンがとても苦手としている電気ショックを活用するのが最も効果的です。
農業用の害獣対策グッズとして、すでにハクビシンやアライグマ、アナグマなどを撃退するための「電気柵」が売られています。それほど設置は難しくなく、価格的にも高くて10万円というものなので、大切な農作物(特に果物)を守るためには有効な投資ではないかと思います。
電気ショックを利用して畑を守るイメージ図
ハクビシンが身軽にジャンプをしたり高いところに登ることができる習性を利用して、電気柵は少し高いところに設置するのが効果的だとされています。しかも1本ではなく3本以上張り巡らせることで、あらゆる高さでハクビシンに電気ショックを与えることができます。
以下は農林水産省が公開している電気柵の設置イメージ図です。
プロレスやボクシングの試合が行われる「リング」を想像していただければ、イメージしやすいと思います。リングの四方に張られているロープが電気柵となり、そこに電気が通っている電気柵がハクビシンを効果的に撃退します。
捕獲する場合の注意点
撃退するだけなら、繁殖がさらに進むといつかは被害が再発するのでは?
と思われる方もおられると思います。
撃退ではなく駆除してしまいたいという場合は、捕獲という選択肢になります。
ハクビシンなどの大きさの動物を捕獲するための「箱罠」が販売されているので、それを使って中にハクビシンの大好物である果物を置いて、うまくハクビシンの通り道に設置することができれば、高い確率で捕獲することができます。
ただし、罠を使って野生動物を捕獲する場合には鳥獣保護法という法律によって免許が必要なので、法的な問題については最寄りの市町村に相談をしてください。
また、捕獲の場合は殺処分することになるため、その準備があることを前提に捕獲をしてください。間違っても別の土地に放すということをすると、今度はそこに新たなハクビシンの被害が発生することになるので、絶対にしないようにしましょう。
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