鳥獣から野菜を守るための第一歩!?被害を起きにくくするために知っておきたいこと

鳥獣から野菜を守るための第一歩!?被害を起きにくくするために知っておきたいこと

日本の鳥獣による農作物への被害金額は、統計を取り始めた平成11年度以降から、年によって増減はあるものの、約200億円にのぼると言われています。

本記事では、農業をおこなう上で無視できない鳥獣害に着目し、野生動物から田畑を守るために知っておきたいことをご紹介していきます。

 

 

まずは鳥獣害が起こる理由をおさえる

鳥獣から野菜を守るための第一歩!?被害を起きにくくするために知っておきたいこと|画像1

 

野生動物は決して農作物だけを狙って田畑に侵入するわけではありません。

野生動物は厳しい自然環境の中で生き残るために有利なエサを求めています。そんな時、地域の過疎化が進み、農業を営む人が少なくなり、収穫が行われなくなった田畑があるとします。そこに残された収穫物をエサとした野生動物は、そこにエサがあることを学習します。

野生動物にエサを与えてしまう場は、耕作が行われなくなった田畑に限りません。収穫残渣などが放置された場所も、野生動物には格好のエサ場となります。

極端に言えば、野生動物による農作物への被害の原因は、ヒトが無意識的に野生動物を田畑に誘引しているから、ともいえます。

捕獲だけでは解決しない!?

野生動物から田畑を守るための対策として「捕獲」が挙げられますが、残念ながら、捕獲するだけでは被害を減らすことはできません。

例えばイノシシの場合。イノシシの被害防止等を目的とした捕獲頭数は、平成12年の5万頭から平成28年には46万頭と、右肩上がりで増えています。しかし捕獲頭数は増えても、捕獲したイノシシが雄なのか、雌なのか、子供なのかによって、その後の展開が大きく変わってしまいます。

大人の雄を捕獲できれば、対策はうまくいったといえます。しかし大人の雌だった場合、基本的に単独行動をとる雄と違い、雌は集団で生活しているため、捕らえられた1頭の周囲で他のイノシシがその様子を見、捕獲手段を学習してしまうことがあります。そうなると、捕獲頭数はだんだん減少していきます。

子供が捕獲された場合も同様です。イノシシは年に1度4〜5頭出産します。次の年も出産できる雌が捕らえられていないということは、次の年も子供が生まれ、数が増える可能性が高まります。

このように捕獲を行っても、それが満足に機能しないケースもあるのです。

 

 

鳥獣害から守りやすい田畑の構造・管理について

鳥獣から野菜を守るための第一歩!?被害を起きにくくするために知っておきたいこと|画像2

 

野生動物ごとに特性は異なりますが、野生動物から守りやすい田畑の構造・管理を知っておくと、被害を抑えやすくなります。

以下の方法は、冒頭で紹介した、野生動物がエサを求める行動特性を知っていれば、その意味に納得できるはずです。

  • 田畑の周囲に柵を設置する場合には、柵から離して農作物を作る
  • 農作物が柵の向こう側から確認できないよう、トウガラシやシソといった動物があまり好まない植物をその周囲に植え、農作物が見えないようにする

野生動物は魅力的なエサが目の前にあると、例え柵が挟んであっても、それを得るために必死に柵を壊して侵入しようとすることがあります。そのため、まず彼らに農作物を発見されないことが重要なのです。

それから収穫後の田畑の管理にも注意を払いましょう。野生動物にとってエサとなるのは収穫物だけに限りません。例えば収穫後のイネの株から草や穂が再生する「ひこばえ」、畑に生える雑草、収穫残渣なども野生動物のエサとなります。特に、野生動物が冬を迎える前には、それらが彼らにとって貴重な栄養源となります。

そのため、

  • 「ひこばえ」が生じる前に耕起を行う
  • 雑草を刈る
  • 収穫残渣を放置しない
  • 収穫後も柵を撤去しない

などの管理が必要となります。

また柵を設置する際、農地が若干狭くなってしまうことに抵抗を感じるかもしれませんが、柵の周囲(農地の外側)に人が歩いて点検できるスペースを設けましょう。

農地の面積を多く取りたいがゆえに、例えば、傾斜のある土地の斜面ギリギリに柵を設けてしまうと、柵の外側の雑草の管理や柵の補修が行えなくなります。一方で動物はその場所と傾斜に人間が来ないことを学習してしまうので、農地に近寄りやすくなってしまいます。

「ここは野生動物が侵入できる場所ではない」ことを示すためにも、柵の周囲に人が活動できるスペースを設けましょう。

 

 

何らかの動物が田畑にやってきたら……

鳥獣から野菜を守るための第一歩!?被害を起きにくくするために知っておきたいこと|画像3

 

それでも田畑に何らかの野生動物が侵入したとしましょう。彼らは痕跡を残します。その痕跡から何の動物が田畑に侵入したのかを特定し、その動物の特性にあった対策を練りましょう。

農研機構の鳥獣害痕跡図鑑は、中型の動物(アライグマ、ハクビシン、タヌキ)と鳥類が中心ですが、食害を受けた作物の食害痕跡写真を見ることができるので、とても便利です。

タキイ種苗株式会社が運営するサイトにも、獣害対策の基礎知識として中型動物の見た目や足跡の違いが掲載されています。

農林水産省でも野生鳥獣による被害防止マニュアル等というページで情報を公開しています。野生鳥獣被害防止マニュアル-アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ-(中型獣類編)(平成30年3月発行)は、内容が充実しているゆえのページ数に驚くかもしれませんが、読みやすいのでおすすめです。大型動物やサルのマニュアルなら【改訂版】野生鳥獣被害防止マニュアル-イノシシ、シカ、サル 実践編 -平成26年3月版に目を通しておくとよいでしょう。

 

参考文献

  1. 江口祐輔編著『動物の行動から考える 決定版 農作物を守る鳥獣害対策』(2018年、誠文堂新光社)
  2. 鳥獣害痕跡図鑑
  3. 獣害対策の基礎知識|栽培技術|最前線WEB – タキイ種苗
  4. 野生鳥獣による被害防止マニュアル等:農林水産省
  5. イノシシ対策〜敵を知って対策を考える〜|岡山市

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