害獣対策でおなじみ、電気柵の仕組みと電気柵の効果的な設置方法について

害獣対策でおなじみ、電気柵の仕組みと電気柵の効果的な設置方法について

電気柵は獣害対策として広く利用されています。農作物に近づく動物に電気ショックを与えることができる電気柵ですが、ただ設置するだけでは十分な効果は発揮されません。

 

 

電気柵の仕組み

害獣対策でおなじみ、電気柵の仕組みと電気柵の効果的な設置方法について|画像1

 

電気柵は基本的に、支柱を立て、その支柱に碍子(※)をつけ、電柵線を張ります。そして電気を発する電柵器本体の出力端子に出力線を、アース端子にアース線を接続します。

※碍子(がいし)は、電線(電流を通して送るための金属線)とその支持物(電気柵の場合、支柱が該当)とのあいだを絶縁するために用いる器具のこと。碍子の役割は以下の解説が分かりやすいので気になる方はぜひ見てみてください。

「がいし」ってなに? – 日本ガイシ

電柵線には一定の間隔で電流が流れています。動物が電柵線に触れると、上記図の通り、電気が電柵器から電柵線、そして動物の体を通って地面に抜け、アースを通じて戻る、という閉回路ができ、動物は電気ショックを受けます。

電気柵に人が触れると……

正しく設置された電気柵であれば、電気柵に触れることで死ぬことはありません。市販されている電気柵はあらかじめ生命に影響のないよう設計されています。人間はもちろん、動物の命にかかわるようなものではありません。

上記で“電柵線には一定の間隔で電流が流れてい”るとありますが、これも安全に考慮した設計によるもの。電柵器の通電間隔はおよそ1秒。もし電気が常に流れている状態だと、人が誤って電柵線を握ってしまった場合、電気ショックにより筋肉が硬直し、電柵線から手が離れず、大量の電気が体に流れ続け、命に危険が及びます。通電する間隔があいているおかげで、万が一電柵線を握ってしまったとしても、瞬間的に手を離せるようになっています。

電気柵の事故事例を度々目にしますが、電気柵や電気が流れる仕組みを理解し、市販されている電気柵を正しく設置すれば、また家庭用電源から引く場合も専用の機器を用意して正しく設置していれば、安全に利用できるものです。

 

 

電気柵設置のポイント

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基本的には、どの動物においても効果的な設置のポイントは共通しています。

柵の高さ

動物が電気柵に触れることで電気ショックを与えることはできますが、確実に電気ショックを与えるためには、動物が電気ショックを感じやすい部位を知る必要があります。

イノシシやシカの体毛は電気を通しにくく、体が柵に触れただけでは十分なショックを与えることができません。鼻先や口唇など体毛のない部分に触れさせるのがポイントです。

イノシシやシカは初めてのものを鼻先で触れて確認する習性があるので、その習性も利用します。柵線の高さは動物の鼻の位置を目安に設置します。

例えば成獣のイノシシの場合、立ち姿勢(四足歩行)の時の鼻の位置は地面から約40cmの高さにあります。鼻先で触れて確認する習性もふまえ、地面から20cm、40cm、3段張る場合には60cmに設置します。

設置する場所

ただし、鼻先が触れるだけでは不十分です。「電気柵の仕組み」にもあるように、電柵器から動物、地面へと電気が抜けなければ、十分なショックを与えられません。

まず電柵器に付属しているアース線はしっかり深く埋め込みます。短い棒が複数繋がっているタイプの場合は約1m間隔をあけて、その上で深く埋め込みます。長い金属棒が1本だけのタイプはできるだけ深く打ち込みましょう。

そして設置場所は電気が抜けやすい土の地面を選びます。コンクリートやアスファルトは電気が通りにくいため、舗装された面に設置された電気柵に動物が触れても、動物の足が舗装された面にあると電気が地面を抜けにくく、大きな電気ショックを与えられません。動物の前肢だけでも土の上に立つような場所に設置しましょう。

碍子は動物側に向けて設置

動物が電気柵の支柱を押し倒す可能性があります、支柱は通電していないので、電気ショックを与えることはできません。しかし碍子を動物側に向けて設置すれば、支柱を押し倒す最中、碍子や碍子につながる柵線に動物が触れる可能性が高くなります。

一定の間隔で上下の柵線をつないでおく

50〜100cm間隔で上下の柵線をつないでおきましょう。万が一、一部の柵線が切れてしまっても、上下をつなげることで電気が流れ続けます。

漏電、絶縁のチェックはこまめに

雑草などが柵線に触れてしまうと漏電してしまうので、電気柵を設置したら、こまめに草刈りをするなど雑草の管理を行いましょう。伸びてくる雑草を柵線に触れさせないため、地面にマルチを敷くのも効果的ですが、この際は電気を通しやすい素材を選んでください。電気柵の地面に敷く通電性の防草シートが市販されています。

定期的に電圧のチェックを行いましょう。電気が通っているかを確認するテスターはアース棒のついたものを使用します。横向きにしたアース棒を地面に押し付けて測定することで、実際に動物が触れる地面での通電状況が確認できます。

24時間通電を

動物が行動する時間帯は夜だけとは限りません。イノシシやシカは日中でも活動しています。日中やってきた動物が通電していない電気柵に触れると「この電気柵は危険ではない」と学習してしまいます。人がいる間は動物は来ない、と過信せず、24時間通電してください。

 

参考文献

  1. 電気柵の適切な設置と維持管理 – 鳥獣被害対策について | 広島県
  2. 電気柵の仕組みについて – 群馬県
  3. 電気柵について|効率のいい使用法や注意事項 有限会社薩摩農機
  4. 本当は安全な電気柵の話 – 協和テクノ
  5. 江口祐輔編著『動物の行動から考える 決定版 農作物を守る鳥獣害対策』(2018年、誠文堂新光社)

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