アライグマは生態系に影響を及ぼすおそれのある特定外来生物に指定されています。農林水産省によると、2021年度のアライグマによる農作物の被害額は4億1400万円で、5年間で2割増だといいます。
本記事では、アライグマから農作物を守るためにできる手段についてご紹介していきます。
ねぐらをつくらせないことが重要
アライグマは家屋に侵入してねぐらをつくり、そこで子どもを産みます。またいくつもねぐらをつくって、それぞれを転々と移動しながら行動します。農作物のある場所(彼らにとってのエサ場)に近づくための場所として、ねぐらとなる建物を利用するため、身を潜められるねぐらをつぶすこと、つくらせないことが、アライグマによる被害防止につながります。
アライグマが侵入しやすい建物には以下のものがあげられます。
- 天井裏がある木造家屋
- 神社仏閣
- 無人の集会所
- 廃校舎など
人気がなく、古くなって隙間が多い建物は、アライグマにとって格好のねぐらとなります。ほ場周辺にアライグマのねどことなりそうな建物がないか確認すること、建物への侵入経路となる通気こうや通風口の穴が塞がっているか、屋根や壁などに侵入を許すような隙間があいていないか確認することが重要です。
アライグマは10cm程の隙間があれば侵入できてしまうため、網目の細かい金網で侵入経路を塞ぎます。補修用パテで塞ぐ方法もあります。
アライグマは木登りが得意なため、建物近くに木の枝が伸びているようであれば、剪定し、入りにくくすることも効果的です。
アライグマなど屋根裏に住み着く動物向けの対策グッズには他に、侵入するまでの道のりとなる雨どいなどに巻きつけて、屋根裏まで登りにくくするための有刺鉄板やアライグマの嫌うニオイがついたシートなども販売されています。
効果的な電気柵設置方法
アライグマに有効とされる防除は電気柵や金網作などを複合的に活用した防除策です。
アライグマは木登りが得意ですが農地に侵入する際に「登る」という行動への優先度は低いことがある調査でわかっています。アライグマはまず入りやすい隙間を探し、その次に破けそうなら破く、それでもダメな時に登るといった行動をとります。
先述したとおり、アライグマは建物の隙間から侵入してねどこをつくることがありますが、木造の家の隙間を断熱材で埋めたような造りの場合、断熱材を食い破って中へと侵入します。そのため、ほ場への侵入防止対策を行う場合は、ほ場を囲む際に隙間を生じさせないこと、目合が細かく(10cm程度の隙間だと侵入を許してしまうため5〜8cm以下)破けない素材を使うことが重要です。
そして最終手段として登って侵入しようとするアライグマを感電させることができれば、アライグマに「ここは不快な場所である」と認識させることにつながります。
電気柵は、埼玉県農業技術研究センターが公開する「電落くん(白落くん)」のように登った先で感電させるものもありますし、アライグマの体高に合わせ、地面から5cm、10cm、15cmの3段構造で電線を張る方法もあります。いずれの場合も、アライグマを電線に触れさせることがポイントです。
とはいえ、地上から5cmの位置に電線を張るのは、地面の凹凸によっては張るのが難しくなり、また下草が触れていると漏電してしまい、電気柵の効果が得られなくなってしまいます。
雑草管理ももちろん大事ですが、どうしても地上高5cmに電線を張れない場合には、地上高10cmから張る代わりに、電気柵と農作物の間に障害物を置き、アライグマが柵線に触れる動線をつくって感電させます。
それから電気柵を設置したら、その日から収穫後に柵を片付ける日まで、連続的に通電、すなわち通電しない日がないようにします。そして漏電して効果が薄れないよう、雑草の管理、倒木等がないか確認するよう努めます。
参照サイト
アライグマ農業被害増 空き家影響 関東、近畿目立つ
アライグマ農作物被害対策ハンドブック(PDF – 香川県
農林水産省[野生鳥獣被害防止マニュアル アライグマ、ハクビシン、タヌキ
屋根裏にアライグマがいるときはどう駆除したらいい?追い出す方法と予防法 | 大帝リビング株式会社
アライグマの被害対策(pdf) – 三重県
アライグマの被害を防ぐには – 農作物被害対策 – 大阪府
電落くん (白落くん) – 埼玉県
(2024年2月8日閲覧)