本記事では鳥類に着目。農作物に被害を及ぼす代表的な鳥類には、カラス類、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、キジバトなどが挙げられます。鳥類への基本の対策は共通しているので、その効果的な対策方法についてご紹介していきます。
(後編では、農作物に被害を及ぼす代表的な鳥類であるスズメ、ヒヨドリ、カラスそれぞれの特徴や対策についてご紹介していきます)
よくある対策法の効果について
鳥類への対策グッズに、目玉模様、キラキラテープ、カラスの模型、爆音器などが挙げられます。これらには絶対的な忌避効果はありませんが、「短期間」であれば有効といえます。
鳥は飛べるため、広い範囲を飛び回って食物を探します。食物を求めて今まで行っていた田畑に急に上記のグッズが現れれば、警戒し、別の場所へ移動します。ただし、それらのグッズが自分に危害を与えないことを理解してしまうと、気にせず侵入するようになります。
そのため、これらのグッズを効果的に用いたい場合には、同じ場所にそのまま放置するのではなく、置く位置を変えたり、機器の種類を変えるなどして、慣れさせない工夫が必要です。これらのグッズが必要となる時期を過ぎたら、すぐに片付けることも重要です。
基本の対策は「防鳥網」
防鳥網で鳥と作物を遮断するのが効果的です。
ホームセンターなどで市販されている防鳥網には橙色のものと、青色の「強力防鳥網」があるはずです。青色は値段が高いですが、橙色のものに比べて糸が太く、耐久性に優れているので、青色の使用をおすすめします。
なお、江口祐輔『決定版 農作物を守る鳥獣害対策: 動物の行動から考える』(2018年11月、誠文堂新光社)に、青色の「強力防鳥網」は鳥が網に絡まって事故死することも少ない、との記述がありました。
田畑に飛んでくる鳥や防鳥網に絡まってしまう鳥は、農業従事者にとって厄介に感じられる鳥類だけではありません。2018年には、特別天然記念物のコウノトリが防鳥網が原因で死んでおり、そのほかにも天然記念物のオオヒシクイ、絶滅危惧種のツクシガモといった野鳥が防鳥網に絡まる事故が起きています。このような事故を減らすためにも、事故死させるリスクの少ない青色の強力防鳥網の使用や、正しく設置する(中途半端に侵入できる形にしない)、収穫後に網を外すなどの行動を心がけましょう。
網目サイズは対象となる鳥の大きさによって選びます。
対象となる鳥 |
網目サイズ |
スズメ |
20mm目以下 |
ムクドリ、ヒヨドリ |
30mm目以下 |
カラス |
75mm目以下 |
農研機構が紹介する防鳥網の簡易な設置方法
防鳥網の効果を発揮させるには、側面と上面の両方に、隙間を作らずに張る必要があります。しかし樹高が高い果樹や傾斜地に張るのは難しく、面積が大きい圃場に張る場合にはコストもかかります。
そこで農研機構は、防鳥網を簡易に設置する方法を開発しました。
それが
- 樹高2mまでの果樹列に対応した「らくらく設置2.0」
- 樹高3.5mまでの果樹列に対応した「らくらく設置3.5」
です。
用意するものはすべてホームセンターなどで手に入るものばかりです。簡潔にまとめると、トンネル栽培用の弾性ポールと農業ハウス用の直管パイプを利用して、防鳥網を楽にかけ外しできるような枠組みを作る、というものです。
例えば樹高2mの果樹の場合の大まかな流れを以下に示します(防鳥網をかける作業には2人必要)。
- 樹木列の両側に直管パイプを1m間隔で打ち込む
- 弾性ポールを直管パイプにはめ込み、連続した山型の骨組みをつくる
- 作業者2人が防鳥網の両端を持ち、互いに引っ張りながら弾性ポールの上を滑らせるようにして網をかける
- 全体にかけ終わったら隙間のできた箇所を引っ張って調整する
- 地際の隙間から鳥が入ることがないよう、始点と終点はそれぞれ網をまとめてペグなどで地面にとめる
(骨組みを作るための事前準備等は省略しています)
農研機構が発信している設置マニュアルは非常にわかりやすく解説されているので、防鳥網の設置を検討している方はぜひ一度目を通してみてください。
参考文献
- 江口祐輔『決定版 農作物を守る鳥獣害対策: 動物の行動から考える』(2018年11月、誠文堂新光社)
- 茨城県のハス田の防鳥網に関する署名のお願い【2/28までに2500筆】
- 野鳥が羅網しにくい網の研究 – バードリサーチ