鴨は、古くから日本列島に生息している日本人にとってもなじみの深い鳥です。京都の中心部を流れる川には鴨川という名前が冠され、東京の皇居から道路を横断して棲家を移動するカルガモ一家の引越しは、季節の風物詩として微笑ましく取り上げられています。
しかし農家にとっての鴨とは、こうした一般的なイメージとは少々異なるものがあります。その理由は鴨による農作物への被害で、水鳥である鴨は水田の稲や畑の野菜への食害を及ぼすことでも知られています。
鴨による農作物被害の実態と、それに対する有効な対策について考察します。
鴨の種類と生態
鴨は水鳥なので、水のあるところに生息しています。
日本国内には30種類程度の鴨が生息していますが、その中で農作物被害を引き起こすのは主に4種類です。その4種類とは、マガモ、カルガモ、コガモ、そしてヒドリガモです。
この4種類のうちカルガモ以外は渡り鳥で、冬場のみ日本国内に飛来します。この生態の違いにより、鴨の農作物被害は季節によってその主役が入れ替わります。
次項では、それぞれの季節に発生する鴨による農作物被害について解説します。
鴨の農作物被害状況
鴨による農作物被害は、季節を分けて考える必要があります。春から順に見てみましょう。
<春に発生する被害>
春に被害を及ぼすのは、カルガモです。前項の解説で他の鴨は日本に飛来していないので、それもあってカルガモの独壇場となります。カルガモによる被害は水田に多く見られ、種籾や幼苗を食べることは想像に難くありませんが、その他にもカルガモが歩いたことによって水田の中の種籾が土の中に埋め込まれてしまい、それによって出芽が阻害されるという被害も見られます。
<秋に発生する被害>
秋に農作物被害を発生させるのも、やはり年間を通じて日本国内に留まるカルガモです。カルガモが好む稲に食害が発生し、稲穂をしごくように食べることから根こそぎ食べられてしまう特徴があります。
ただしカルガモの生態上、稲が倒れている状況でなければ水田の中にまで入ってくることができず、畦から届く範囲に食害が集中するという特徴も見られます。
<冬に発生する被害>
冬になるとカルガモ以外の鴨類も日本に飛来するため、農作物被害の主役も多様化します。特に目立つのはヒドリガモによる麦類への食害です。ヒドリガモは麦の若葉を好んで食べる習性があるため、麦畑が被害に遭いやすくなります。
その他にもカルガモが冬のキャベツやレンコンを食べることも知られていますが、カルガモが目立っているだけで他の鴨類も食害を引き起こしているのではないかと言われています。
このように年間を通じた被害状況を見ると、すべての季節にカルガモが関わっていることが分かります。道路を渡る姿はとても微笑ましいのですが、農家にとっては大敵であるというのは、こうした食害事情があるからです。
鴨による農作物被害を防ぐ3つの対策
鴨に限らず鳥類による農作物被害を防ぐには、大きく2つのポイントがあります。1つは侵入を防ぐことで、もう1つは恐怖を与えて近づかせないことです。
鴨の侵入を防ぐための対策として最もポピュラーなのは、防鳥網です。保護したい農作物を覆うようにネットを張り、鴨が飛来しても侵入できないようにガードします。
田植えをしたばかりの水田の場合は、その苗がある程度の大きさになるまでを保護すれば良いので、苗の付近に小さな防鳥網を張る形で問題ありません。
次に効果が期待できるのが、テグスや針金などを使った対策です。これらの対策は小鳥だと意味がありませんが、鴨類などの大きさになると有効性があります。畑に杭を立ててその杭同士にテグスや針金をしっかりと張ることで、鴨が畑の内部にまで入りにくくなります。
恐怖を与えて近づかせない方法としては、以下のようなものがよく用いられています。
・案山子(かかし)
・爆音発生器
・吹き流し、防鳥テープ
・エアソフトガン、ロケット花火
これらの方法は最初のうちは効果を発揮しますが、常にそこにあるものと認識したり、一定の条件が整うと発動することを鴨が学習してしまうため、やがて慣れてしまいます。最後にあるエアソフトガンやロケット花火は人間が適宜行うため慣れが起きにくく、この中では最も効果が期待できます。
まとめ
農林水産省の調査では、鴨による農作物被害は減少の一途をたどっています。そのため以前ほど深刻に対策を考える必要はないかも知れませんが、鳥は学習能力が高く餌場であるという認識を与えると看過できない被害を引き起こします。
被害が減少傾向にあるからこそ、手堅い対策で大切な農作物を鴨から守りましょう。
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