近年、予測できないような気象災害が全国各地で発生しています。これはもちろん日本だけに限ってことではなく、全世界で見られる傾向です。原因は地球温暖化など気候変動だとされていますが、それだけではなく太陽の活動周期との関りも指摘されており、まだ明確にはなっていません。
原因が明確になっていない一方で、すでにはっきりしていることがあります。それは、農業への被害です。しかし、他の災害と違って台風は接近が事前に分かる特徴があるため、台風接近時に前もって準備できることはたくさんあります。
農家の皆さんにとって大切な農作物を守るための、台風対策について解説します。
台風とは無縁だった北海道にも台風が上陸
農作物への台風の影響と言えば沖縄や九州では珍しくありませんが、その「法則」が今や崩れつつあります。それを象徴するような出来事として、2016年に北海道を襲った台風が挙げられます。北海道と言えば台風が来襲しないことで知られていましたが、今やその例外はなくなり北海道にも本州並の威力を持つ台風が上陸しています。
2016年は8月に4つもの台風が北海道に上陸し、農業被害は542億円に上るという想定外づくしの年となりました。日本全国どこであっても気象災害と無縁ではいられないわけですが、北海道における台風も例外ではないということです。
台風対策には「事前」と「事後」がある
台風は事前に上陸することがある程度予測できるため、事前に備えることができる災害です。農業の現場においても農作物を守るための事前対策に注目が集まりがちですが、実は台風対策には「事前」だけでなく「事後」もあります。どちらも農作物を守るために非常に重要なので、この2つを分けて考える必要があります。
事前の台風対策とは、大雨に備えて排水の経路を確保しておくことと、暴風が吹いても農作物が倒れたり吹き飛ばされたりしないように補強をするというのが基本的な考え方です。また、ビニールハウスを使用している農家の方々については、ビニールハウスが倒壊するなどの被害が懸念されるのでハウスの補強を考える必要があります。
もうひとつ事後対策とは、台風がもたらした影響を速やかに取り除くことが基本です。田畑やその周辺が増水したり冠水している場合はできるだけ早く排水をします。汚泥などが流れ込んだ場合も同様です。
また、大雨による増水で流木などの異物が田畑に入ってくることもあります。
こうしたものも農作物の生育に障害となるので、速やかに取り除くのも事後対策のうちです。台風がもたらす強風によって農作物が倒れてしまうケースもよくあります。事前対策である程度の補強をしていれば回避できるかも知れませんが、それでも倒れてしまっている場合は茎が折れ曲がることによって生育が妨げられたり、付着した泥などが光合成を妨げるため、引き起こしと洗い流しが必要になります。
事前対策の補強例
強風によってビニールハウスが損傷をしたり、農作物が倒れてしまうなどの被害を防ぐために、自治体などでは補強を推奨しています。
ビニールハウスの中は支柱がなく風に弱い構造になっていることが多いので、台風対策として斜め支柱の設置が効果的です。以下の写真のように斜交いに支柱を立てることで、風に対しての強度が増します。
こうしたビニールハウスへの支柱補強は耐震補強と同じ考え方なので、強い地震でハウスが倒壊してしまうことを防ぐにも効果が期待できます。
個別の農作物に対する補強としては、支柱を立ててロープなどを張ることで一定の強度を加えることができます。
例えば白ネギを補強する場合、畝の四方に支柱を立ててロープを張ると、以下のような補強が可能になります。
海に近い田畑では除塩が必要になる場合も
海に近いところにあるからといってすべての場所が塩害の影響を受けるわけではないのですが、台風襲来となると話は別です。強風に煽られた海水が田畑まで運ばれてくると普段は塩害の影響を受けないような場所でも台風通過後に塩害が発生することがあります。
こうした地域での台風事後対策には除塩が含まれることがあると考えておいた方が良いでしょう。なお、除塩とは塩分を含んでしまった農地の土壌を改良する作業のことで、除塩についての詳細は「農地で塩害が発生するメカニズムと除塩の有効性、具体的な方法」に解説がありますので、関りがありそうな方はぜひそちらもお読みください。
また、台風によって泥などが農地に入り込んだ場合は病原菌の侵入による病害の可能性が否定できないので、果樹などデリケートな農作物については殺菌剤の散布を行った方が無難です。
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