オープンAPIとは、外部のシステムとデータを連携するために公開されたAPI(Application Programming Interface)のことです。
そもそもAPIとは
APIとは、異なるアプリケーションやソフトウェアをつなぐインターフェースであり、インターフェースとは何らかの接点を指すものです。たとえばパソコンを使う際のキーボードやマウスは、パソコンと人間をつなぐ1つのインターフェースです。
- オープンAPI:データ連携のために公開されたAPI
- API:複数のアプリケーション等を接続(連携)するために必要な仕組み
- インターフェース:機器と機器、機器とプログラム、機器と人など異なる2つの物を仲介するもの
オープンAPIを活用することで、システムの機能を拡張し、より利便性の高いサービスの提供が可能になります。農業分野においては、気象データや土壌情報を外部システムと連携させることで精密な農業管理が可能になります。
似ている用語、オープンデータとの違いについて
オープンデータとは、簡潔にいえば「誰でも利用・再利用・再配布できるデータ」を指し、主に行政や研究機関が提供することが多いです。オープンデータの活用推進を図る団体Open Knowledge Foundationの定義に従うと、オープンデータは以下の3点をすべて満たす必要があります。
- 利用でき、アクセスできる
- 再利用と再配布ができる
- 誰でも使える
オープンデータもオープンAPIも情報を共有する点で共通しますが、オープンAPIは「API提供者が外部に公開したAPI」であり、特定の条件下でシステム間のデータ連携を可能にします。
したがって、オープンデータが「自由に使える情報」だとすれば、オープンAPIは「情報を活用するための仕組み」といえます。
農業データ活用の背景
日本の農業は高齢化に伴う担い手不足や耕作放棄地の増加といった課題に直面しています。こうした状況を打破するため、「スマート農業」の導入が進められており、データ活用が重要な役割を果たしています。
特に農業法人では、組織としての意思決定を標準化し、生産方式を確立するためにデータの収集・分析が不可欠です。センサーやスマートデバイスを活用し、圃場の状況や生産履歴を記録・分析することで、より精度の高い農業経営が可能となります。さらに、蓄積されたデータを基にPDCAサイクルを回すことで、作業の最適化や収量の向上が期待できます。
こうした取り組みを推進するために、データの連携を円滑にするオープンAPIの活用が求められているのです。
農水省が進めるオープンAPI整備について
農業のデジタル化が進む中、農業現場でのデータ活用は重要なテーマとなっています。スマート農業の導入が進む中、農業者から、異なるメーカーの農業機器やシステム間でデータをやりとりできる環境の整備が求められていました。そこで農林水産省は、スマート農業技術の普及を促進し、農業経営の効率化と生産性向上を目的に、データの連携を円滑に行えるようにするため、オープンAPIの整備を進めています。
農業者が活用できるオープンAPIの仕組み
冒頭で述べたように、オープンAPIとは、異なるソフトウェア同士がデータをやり取りするための共通のインターフェースです。農機メーカーは、取得したデータを外部システムでも利用できるようにAPIを公開し、営農管理ソフトなどのベンダーはそのデータを活用して農業者が使いやすい形で情報を提供します。この仕組みによって、農業者は複数の農機から得られるデータを一元的に管理・分析できるようになります。
たとえば、農業者は自分が所有するトラクターやコンバインなどのデータを、普段使用している営農管理ソフトで簡単に閲覧・分析できるようになり、作業の効率化や農業経営の改善につながります。
農水省の取り組み
農水省は、農業者が農機メーカーにかかわらずデータを自由に活用できる環境を整えることを目的に、「農業分野におけるオープンAPI整備に関するガイドライン」を策定。データ標準化やセキュリティ面の対応、API形式の統一といったルール作りに力を入れています。このガイドラインに基づき、農機メーカーやICTベンダーはデータ連携を進め、農業者のデータ活用をサポートしています。
農業者へのメリット
オープンAPIを活用したデータ連携には、農業者にとって大きなメリットがあります。農業者は、農機の稼働時間や気温、湿度などのデータを、複数のシステムで統合的に利用することができ、営農計画の立案や栽培の改善に活かすことが可能になります。
たとえば、気象や農地、収量予測など農業に役立つデータやプログラムを提供する公的なクラウドサービス「WAGRI」を活用すれば、農業者は気象データや市場情報、農薬や肥料の使用履歴など、さまざまなデータを集約して効率的に活用することができます。
農機OpenAPIの事例
農研機構は、農業者がデータをより効果的に活用できるよう、農機OpenAPIの仕様を拡充し、その有効性を実証した結果を報告書として公開しています。以下に、オープンAPIを活用した具体的な事例を紹介します。
発生予察APIによる効率的な防除管理
農業者はAPIを通じて、病虫害の発生予察情報を取得し、ドローンや衛星画像でほ場の状況を確認した上で、早期の防除を実施できます。このデータを農薬散布履歴やほ場地図と連携させることで、防除の履歴を共有し、効率的かつ効果的な防除が可能になります。
データ共有による技術向上と品質改善
農業者間で収量や品質データを共有することで、優れた農家の作業履歴や環境データを参考にし、最適な栽培技術を学ぶことができます。これにより、技術の向上や生産性の向上が期待されます。
補助事業申請の簡素化
農機やドローンから得られた作業履歴や生育画像データをほ場地図に統合し、自治体の補助金申請システムと連携させることで、申請手続きが簡素化されます。農業者は手間を省き、支援活動に必要な証拠データをスムーズに提出できるようになります。
開かれた情報がもたらすもの
冒頭で紹介したオープンデータもまた、農業者の業務効率化を大きく進展させています。
たとえば、ウォーターセル株式会社が提供する「アグリノート」は、クラウド型農業生産管理ツールで、農業事業者がPCやスマートフォンから農作業の記録を簡単に行えるようにしたシステムです。
従来、手作業で農作業の記録をつけていた農業者は、農薬や肥料のデータを調べる際に多大な時間と労力を費やしていましたが、オープンデータの導入によって作業の効率化が実現しました。
アグリノートでは、農林水産消費安全技術センターが公開する農業データベースが活用されています。このデータベースにより、農業事業者は農薬や肥料の使用履歴とともに、必要な情報を手軽に参照できるようになりました。これにより、過去のデータを基に、農薬の使用量や肥料の量をデータに基づいて調整できるようになり、より効率的かつ効果的な生産管理が可能になります。
農業者はオープンAPIやオープンデータといった開かれた情報を活用することで、業務の効率化や生産性向上を実現できます。また、これらの活用によって他の分野との連携を深めることができれば、新たなビジネスの創出や付加価値を生み出すことにもつながると考えられています。
オープンAPIは、今後ますます重要な役割を果たすのではないでしょうか。
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