突然ですが「都市型農業」という言葉をご存知でしょうか。
大都市に近い場所で農業を行なう近郊農業も、都市型農業の話題の中に含まれることもありますが、この農業は都市環境で行なわれる全く新しい形の農業のことを指します。
話題となっている事例では、食料自給の観点というより、環境保全や循環型農業への関心が強いようにも思われますが、今度の世界人口や都市環境の変化から考えると必要不可欠な農業の形と言えるでしょう。今回はそんな都市型農業についてお話していきます。
都市型農業のススメ
昨今、日本国内では少子高齢化が危惧されていますが、国連によると2050年までに世界人口は90億人にもなると言われています。
そのうえ、その大半が都市部に集中するのではないかという予測がなされています。
もし都市部が経済的に発展すれば、世界経済は豊かになるのかもしれませんが、人が集中することによってCO2排出量の増加や環境汚染が危惧されているのも事実です。
そのうえ私達は生きていくうえで食料を欲しますから、その自給率の低下も不安材料となっています。
このような不安を解決するために登場したのが「都市型農業」です。都市という便利ではあるものの限られた場所しか用意されていないところに、高効率・持続可能な栽培方法で農業を行なうことができれば、場所と時間にとらわれることなく、さまざまな問題を解決できるのではないかと考えられているのです。
スペースを必要としない水耕栽培
都市型農業の事例で最も多く挙げられるのが、水耕栽培です。
土壌環境がなくても作物を育てられる栽培方法なうえ、利用する水を循環させることで持続可能性を実現することができます。水を循環させることができれば、土壌栽培の10分の1量の水で足りてしまうとも言われています。この方法での栽培がうまくいけば、安心・安全な野菜を年中無休で供給することも夢ではありません。
加えて「都市型農業」を調べていると、環境保全の観点だけでなく、地域の活性化にもつながるという意見が多く見受けられました。コミュニケーションの場としての活用もできるのでは?という考えもあり、多方面に影響力を与える農業であることは事実でしょう。
メリット・デメリット
都市型農業のメリットは、食料自給以外にもさまざまです。
都市部に立ち並ぶビルの屋上に都市型農業を構えたとしましょう。屋上での水耕栽培をおこなうことで、太陽光の断熱効果やCO2排出量の削減を推進することができます。また商業的な観点からすれば、小規模な畑で育てた野菜をそのままレストランで提供することができれば「地産地消」をウリに経営を行なうこともできるでしょう。
また生産者と消費者の距離が違い分、安心・安全な野菜を栽培した時に、消費者に伝わりやすいのもメリットのひとつと言えるでしょう。安心・安全・高品質な食材の生産工程を、消費者が身近な都市部で確認することができれば、生産者—消費者の信頼関係が今まで以上に深まるのではないでしょうか。生産品と生産者と直接接することができると、消費者側の安心感は圧倒的に違います。それだけでなく、もし都市型農業が身近な存在となれば、人々の農業への興味・関心も強まるのではないでしょうか。
一方デメリットはと言うと、大量生産には向いていないことが挙げられます。都市部はどうしても場所が限られてしまいますから、1つの商品を大量に生産し収益を得る、といった方法は実践しにくいのが何点です。都市型であることをふまえた農業を行なわないと、従来通りの発想で取り組むと“都市”という環境に悩まされてしまうかもしれません。
加えて都市部は地価が高いのもデメリットと言えるでしょう。規模が小さい割には地価が高いため、生産物で支出を取り返すためには、相当な工夫が必要とも言えます。加えて交通機関や輸送機間が発達しているため、大都市近くで栽培された近郊栽培の野菜で事足りてしまうのでは?という考えもあります。
近年の都市型農業の成功例
日本ではまだまだ発展途上とも言える都市型農業ですが、米国では都市型農業の成功事例が挙げられています。
そもそも米国は地産地消市場が拡大しつつあり、NPO団体や自治体などによって地産地消の商品が支持・支援され、消費者の関心が高まりつつあります。
そんなアメリカのニューヨークには、「サイエンス・バージ」と呼ばれる都市型農業の事例がハドソン川に浮かんでいます。
船のような外見をしているのですが、実は温室を積んでいます。
太陽光、風力、バイオ燃料という自然エネルギーを活用して稼働しているものであり、CO2の排出・吸収が±0という状態を実現している環境保全型の農業です。
使用されている水は雨水や川の水を濾過しているという徹底っぷりが特徴です!
温室の中では水耕栽培によってトマトやレタスが育っています。もちろん農薬は使われていないため、食の安心・安全に強く関心を抱く方でも安心して食べることができます。
発展途上な日本では、まだまだ都市型農業のためにスペースを用意してくれる場所も見つかりにくいとは思いますが、日本がこの世界の流れに逆らうことはないと考えています。従来の農法に比べれば、大量生産もしにくいため高収益化を望む場合にはIoTなど、センサーや通信機器などの力を借りる必要があると思いますが、なかなか面白い取り組みなのは事実です。都市型農業に活用される水耕栽培自体は、比較的栽培しやすい方法だとも思いますので、興味のある方は、小規模な水耕栽培でどこまで農業を発展させることができるか実験してみることをおすすめします。
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