ソーラーシェアリング(別名「営農型太陽光発電」)は、耕作地の上に太陽光発電用のパネルを設置し、農業と発電事業を同時に行う取り組みのことを指します。
耕作放棄地に太陽光パネルを設置する方法と違い、農業も発電事業も同時に行うことができるのが、メリットです。近年、農地法の運用が緩和され、一定の条件のもと、農地に太陽光パネルを設置できるようになったからこそ、広まってきた取り組みです。
そんなソーラーシェアリングでよく不安視されるのが「パネルの下で農作物は育つのか」という疑問です。そこで本記事では、ソーラーシェアリングに適した農作物と導入事例について紹介していきます。
ソーラーシェアリングに適した農作物
まず植物には「光飽和点」と呼ばれる、「これ以上の光を浴びても光合成はしないよ」という光の強さの基準があります。太陽光に当たりすぎても、植物は成長できないのです。
そして植物の種類によって光飽和点の値は異なります。例えば1日1〜2時間の日照で育つ「陰性植物」には「しそ」や「らっきょう」が挙げられます。これらはむしろ日陰を好む植物なので、ソーラーシェアリングで育てられる農作物として活用されることが多々あります。
また太陽光パネルは角度を変えることができるので、「陰性植物」以外の農作物も育てることは可能です。例えば光飽和点が「40klx(キロルクス)前後」の植物、
- ナス
- えんどう
- ピーマン
- サツマイモ
- 大根
- 人参
- ぶどう
- もも
などは、日が当たるようにパネルの配置を工夫すれば、パネルの下でも育てることは可能です。
光飽和点が「20klx(キロルクス)前後」の植物、
- 白菜
- キャベツ
- キノコ類
- みつば
- レタス
- いちご
などは、むしろ強い日光によって葉が傷むことが多いので、ソーラーパネルによって適度に日光が遮断されるというメリットもあります。
ソーラーシェアリングの導入事例
千葉県の匝瑳(そうさ)市は、地元の農業従事者の方が中心となり、ソーラーシェアリングによる農業再生に取り組んでいます。元々国の事業として大規模に開墾された農地は、その地力の弱さから畑としての生産性は低かったそうです。また高齢化が進んだことで、耕作放棄地が増加していました。そんな土地に、ソーラーシェアリングという白羽の矢が立ったのです。
太陽光パネルの下には「コイトザイライ大豆」が繁茂しています。大豆は生育に手がかかりません。高齢化が進んだ地域の広い土地であっても、少人数で育てやすいのです。
生産性の低い畑に新たな収益源(発電事業)が盛り込まれ、手間のかからない作物のおかげで高齢化による人手不足もカバーしています。
ソーラーシェアリング、元は取れるの?
冒頭でも紹介した通り、ソーラーシェアリングは太陽光発電と農業を同時に行うことができます。そのため、農地で作物を育てながら、発電事業による収入を得ることができます。国が定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」により、20年間、国が決まった単位で電気を買い取ってくれます。もちろんソーラーシェアリング導入費用はそれ相応にかかります。しかしこの制度によって約8〜10年で元を取ることができると言われています。ソーラーシェアリングは短期間で利益を得られるものではありませんが、長期間取り組むことで、農業収益にプラスの影響を与えることができますよ。