スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの技術を用いることで、生産効率の向上や省力化を実現できる新しい農業の形を指します。日本の農業は、農業従事者の高齢化や後継者不足によって労働力不足が課題となっています。しかしスマート農業であれば、人の労働力を減らすことができ、単純に労働力を削減できるだけでなく、新規就農者の増加や栽培技術の継承につながるのではと期待されています。
そんなスマート農業に対し、日本政府は「スマート農業加速化実証プロジェクト」の推進を始めました。
スマート農業加速化実証プロジェクト
スマート農業を社会に浸透させるため、生産~出荷までの流れについて実証研究を行い、技術体系を確立する取組を支援しようとしています。スマート実証農場の例で「大規模水田作」が挙げられています。そこでは、
・経営管理 経営管理システムで自動化
・耕作 自動走行トラクターを利用
・移植 自動運転田植機を利用
・水の管理 水管理システムで自動化
・栽培管理 ドローンを利用
・収穫 収穫用コンバインによる自動化
といった、人の手を介さないコメづくりの流れが示されていました。
「スマート農業加速化実証プロジェクト」の目標は、平成37年までにほぼ全ての農業従事者がデータを活用した農業を実践できるようにすることです。国は、このプロジェクトが行われる実証農場を農業従事者がその技術を見、試し、体験できる場として提供する予定です。
スマート農業加速のために、大幅な予算アップ
スマート農業を加速化するために、農林水産省は平成31年度の予算を大幅にアップしました。平成31年度予算の概算要求額は2兆7,269億円です。これは前年の当初予算と比較すると18.5%増加しています。そのメインは「スマート農業加速化実証プロジェクト」であり、これを新規事業に掲げ50億円計上しています。
もちろん予算アップは「スマート農業加速化実証プロジェクト」だけではありません。農業従事者の集約化を重要項目として、前年当初予算と同額の244億7,400万円を計上しています。また国産農作物の輸出力を強化するために、80.9億円を計上しています(前年度当初予算から23.3億円増です)。
今後のスマート農業の市場規模は?
ますます加速していくことが想定されるスマート農業ですが、2018年5月に富士経済から公表された国内のスマート農業関連市場の調査結果によると、2025年のスマート農業の市場規模は、2017年から2.7倍の123億円に拡大すると言われています。ここでの「スマート農業」技術に含まれているものは、
・農業用ドローン
・農業用ロボット
・栽培施設内の環境制御装置等
・生産~物流管理までのシステム等
が挙げられています。
これらは全て、現代の日本農業が抱える課題を解決する手立てとして期待されるものばかりです。現段階では「コスト」や「安全性」といった面で課題が残っているとも言えますが、もうすでに製品投入が予定されている技術などもあります。その上、今まで高品質・高価格帯のものばかりが市場に出回っていましたが、参入企業の増加に伴い、もっと手軽に購入することができる商品の増加が、将来的に市場規模が拡大する要因と言えます。
農林水産省が推進している「スマート農業加速化実証プロジェクト」だけでなく、あらゆるところで改革が進められているといっても過言ではない「スマート農業」への流れ。生産効率のアップや労働力の省力化に結びつくスマート農業に、今後も期待が高まります。