農業大国オランダと日本の違いは「流通」にある?!

農業大国オランダと日本の違いは「流通」にある?!

農業従事者の高齢化による後継者不足や耕作放棄地の増加などが課題となっている日本の農業。そんな中、参考にすべき農業大国として挙がるのがオランダです。オランダは日本に比べて国土が小さいにも関わらず、世界第2位の農業輸出国でもあります。そこで本記事では、農業大国オランダと日本の違いについて調べてみました。

 

 

農業大国オランダ

農業大国オランダと日本の違いは「流通」にある?!|画像1

 

オランダの国土面積は約4万1,000平方km。日本で言えば九州と同じくらいの広さの国土です。農地面積は約184万haと、日本の半分以下しかありません。冬の日照時間も少なく、農業に適した国土とは言い難い国ではあるのですが、アメリカに次いで世界第2位の農業輸出国でもあります。

「世界第2位の農業輸出国」を叶えたのは、ICT技術を駆使したスマート農業の存在です。自動制御システムを活用し、農作物への肥料や水の供給を自動制御しているのです。約8割の一般農家がICT技術を取り入れていると言われています。またビニールハウス内で自動制御されれば、天候に左右されることなく、安定的に農作物を育てることができます。

 

 

農業大国オランダの特徴的な流通

農業大国オランダと日本の違いは「流通」にある?!|画像2

 

ICT技術が取り入れられたのは、農作物栽培に限ったものだけではありません。流通・販売も管理することができます。クラウドサービスにより、出荷した作物の流通・販売ルートを管理することができるため、消費者は安心して野菜を購入することができます。

またオランダの場合には自分で所属する生産者組合を決めることができると言います。日本の場合には、農地がある場所によって所属する生産者組合が決まることがほとんどですが、「Aという生産者組合に所属しても、方針等が合わなければ別の生産者組合に所属する」といったことがオランダでは可能なのです。

オランダも1990年代前半までは、いわゆる卸売市場、セリ取引を行っていました。しかしオランダ国内のスーパーマーケットがシェアを拡大する中で、大規模な流通センターを設置しはじめます。大規模な流通センターを自社でもってしまえば、卸売市場で青果物を揃える必要はなくなっていきます。セリ取引は徐々に衰退し、代わりに生産者組合が形成されるようになります。卸売市場で行われていた価格形成機能などは各種生産者組合が担うようになり、より健全な競争が成り立っているのです。

 

 

日本にもある、流通のクラウドサービス

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ICT技術を活用した流通・販売のクラウドサービスは、決してオランダだけのものではありません。富士通クラウドが開発した食・農クラウド「 Akisai(秋彩)」は農業経営を支援するクラウドサービス。あらゆる農畜産業をカバーし、生産から販売までを支援してくれます。ただし「 Akisai(秋彩)」のターゲットが、

  • 農業経営の大規模化を目指す生産者
  • 生産の工業化を目指す生産者
  • 6次産業化など事業拡大を目指す生産者

など、少々農業法人向けのサービスなので、中規模・小規模な農業従事者にとってはピンと来にくいサービスかもしれません。

また注目のベンチャー企業に「株式会社農業総合研究所(以下、「農業総研」)」があります。農産物の直売所といえば農協や「道の駅」にしかなかった印象ですが、農業総研は「農家と大都市圏のスーパーマーケットなどを直結させる流通システム」を考案。ここでのシステムは、先で紹介したオランダの”自分で所属する生産者組合を決めることができる”に近いものがあります。農家は農業総研の集荷場に農作物を持ち込みます。そして販売先と小売価格を自分で設定することができます。また持ち込んだ農作物が、農協で規格外とされたものでもOK。もちろん自分で設定することができる分、価格が高すぎたり、ターゲット層がずれることで売れないリスクもありますが、逆も然りなのです。

 

 

日本農業、今後の展望

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日本より狭い国土でありながら世界第2位の農業輸出国、ということに目がいきがちですが、オランダの農業輸出額の多くを見てみると、

  • 観賞用植物(花き類)
  • タバコ
  • チーズ

など、いわゆる”農作物”ではないことがわかります。オランダの農業は「選択と集中」が徹底している部分があるため、日本がオランダの真似をしようにも、戦略がそもそも違うためうまくいくとは限らないのが現状です。

日本農業がオランダを参考にするなら、ICT技術の活用を真似するより「農業経営力の強化」に力を入れるべきだという見解があります。ICT技術を駆使した施設園芸は、多額の初期投資が必要になりますし、労働に携わる人件費が削減できるとはいえ、技術力のある従業員は必要となることでしょう。オランダのような農業を行うには、農業経営力が必須なのです。オランダの生産、流通の流れから経営ノウハウを学ぶ必要があると言えるのではないでしょうか。

また農家の支援体制が整うことも必要でしょう。日本では農協などが流通、金融、指導等あらゆる機能を一手に担っています。しかしオランダの場合、それらの機能は個々に分かれています。農業指導であれば、農業技術コンサルタントなどの事業があります。個々に機能が分かれていますから、事業ごとの負荷はそれほどかかりません。各々の機能に特化することで、サービスの質は向上します。

 

参考文献

1,世界のスマート農業成功事例に学ぶ 〜アメリカ、オランダの例 SMART AGRI
2,狭い国土なのに世界第2位の農業大国オランダ 日本が学べることはある?
3,世界のハイテク農業NOW! ~オランダ編~ マイナビ農業
4,日本農業と何が違うの? ~流通編~【オランダ農業の現場から#2】 マイナビ農業
5,オランダの青果物流通システムの変化~1990年代後半以降の青果物流通の激変を中心として~ 日本大学生物資源科学部食品経済学科准教授 宮部 和幸
6,食・農クラウド Akisai(秋彩) FUJITSU
7,株式会社農業総合研究所
8,オランダ農業の競争力強化戦略を踏まえた日本農業の活性化策 創発戦略センター スペシャリスト 三輪 泰史
9,オランダ農業の強みと課題に学ぶ 日本総研

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