ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用するスマート農業は年々発展を遂げています。
リード エグジビション ジャパン株式会社が主催の『国際 次世代農業EXPO』でも「スマート農業」分野は注目を集めていました。特に、農作業でよく使われるトラクターは、近年「自動運転」「無人化」への取り組みが進んでいます。
そんな中、話題として挙がっているのが「標準化※」。そして、日本で無人トラクターが普及するために注目されているキーワードが「ISOBUS」です。
※標準化
複数の要素間で、仕様や構造、形式を同じものに統一すること。標準化は、業務、製品などで行われている。業務の場合、作業の効率化を目的として、書類の標準化などを行う。製品の場合、生産者、消費者にとってそれぞれメリットを得るために標準化が行われる。たとえば、標準化されたパソコン製品を利用する場合、生産者にとっては、仕様に合わせた製品を作り分けるという無駄を省けるなどの利点がある。消費者にとっては、情報や資源を共有でき、また標準化されたものの操作方法を覚えることで複数の製品に対応できるという利点がある。(出典元:ASCII.jpデジタル用語辞典)
ISOBUSとは
近年、トラクターと作業機は、トラクターの走行速度に合わせて作業機の動作が制御されているなど、電子制御化が進んでいます。これまで運転する人、操作する人の技術や勘で補っていた部分が自動化され、高度な作業ができるようになってきました。
しかし、このトラクターと作業機の電子制御化には一つ問題が。
それはトラクターと作業機のメーカーが違うなど、トラクターと作業機の通信制御方法が異なると、どちらかを買い直さなければならないという点です。買い換える必要があるということは、農機を導入するコストが増えるということ。このことは自動化を推進する上で障壁になります。
そこで「ISOBUS」の登場です。
ISOBUSとは、トラクターと作業機がメーカー問わずデータ通信が行えるようにするための世界標準のこと。
2001年、どのトラクターとどの作業機をつなげてもデータ通信が行えるよう、農機のデータ通信の規定として国際標準規格ISO11783が制定されました。ISOBUSは、ISO11783の国際標準規格を元に定めた規格を指します。
ISOBUS規格に沿った農機であれば、トラクターと作業機のメーカーが違っていても使うことができます。またISOBUS規格に沿っていれば、1つの操作端末で異なる作業機や複数台の作業機を操作できるようになります。
ISOBUS普及にはまだ課題も…
欧米ではISOBUS対応のトラクターや作業機の普及が広がっています。一方日本はISOBUS対応のトラクターも作業機も数が限られます。
そもそも、完全無人で走行するロボットトラクターなどの農機の活用に課題があります。
現在、北海道では、ISOBUS普及のため、ISOBUS仕様のトラクター等の導入・開発が進められていますが、日本の農地は北海道のように広い農地ばかりではありません。農地の集約は進められているものの、中山間地や中小規模の農業者も多く、これらの農機の活用がすぐに普及するとは限りません。
また農機の無人化技術は飛躍しているものの、ロボット農機の安全性を確保するガイドラインの改正が続いていたり、道路交通法により公道をまたぐ圃場間の移動ができなかったり、技術面以外での課題は山積みなのが現状です。
参考文献
- 農業ロボットはどう役立つ?現状と課題、最新事例を整理する 連載:世界のロボット新製品|ビジネス+IT
- 窪田新之助、山口亮子、『図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』、2020年7月3日、株式会社技術評論社
- コラム「世界の農機から」第1話 〜ISOBUSについて〜:GPSで農業をスマートに|(株)農業情報設計社
- ISOBUS(1)【未来思考の農業IT 農機オタクのおもちゃで終わらせないために】|農業ビジネス
- 農業ロボットの社会実装に向けた課題と展望 情報システムの利活用による農業の産業競争力向上 日本学術会議主催フォーラム