近年、若い世代の人達の就農が話題となっています。
後継者不足と言われる第一次産業の世界において、これほど嬉しい話はありませんよね。しかし彼ら若い世代が着手している就農は、今までの産業とは異なるアプローチで成り立っています。それがIoTを利用した農業の存在です。
Internet of Things(モノのインターネット)と呼ばれるセンサーや通信機能の技術を活用した農業は、若い世代の就農だからこそ為し得た新しい農業の姿と言えるでしょう。IoT農業によって得られる利点は、今後の農業に大きく貢献する重要なものなんですよ!
IoTを利用した農業の例
2013年11月、ロボット技術や情報通信技術を応用した“スマート農業”の実現を、農林水産省が打ち出し、研究会が設置されています。これらの技術を用いた農業は、この研究会設置から4年後の2017年、すでに登場・発展しています。
例えばIoTを使った「e-kakashi(いいかかし)」と呼ばれる製品は、親機と子機を農耕地にセットすることで、パソコンやタブレット、スマホから栽培に必要な情報や管理技術などを手にすることができます。そのうえ、一度手にした技術を“レシピ化”して保存することも可能だと言うのです。今までの第一次産業では、長年の経験と勘で培われてきた栽培技術も、データ化して保存し、次回以降の栽培に活かすことができるのです。
農業者を守るIoT技術も
加えて農業者自身を守る目的で開発されたIoT技術も注目すべきでしょう。
「バイタルセンシングバンド」と呼ばれる機器は、農作業者の身体状態を測定する機器です。なぜこのような機器が登場したかというと、猛暑日の中での農作業中に熱中症や脱水症状で倒れる農作業者の健康管理を維持するためです。手首に装着することで、周囲の温湿度や農作業者の脈拍が測定され、起こりうる事故が推測されるのです。スマホと連動させることで、周囲の人に農作業者の身の危険を伝えることができるだけでなく、本人に対してもバイブレーション機能によって注意喚起を促すことのできる便利な機器となっています。
IoTにはどのような利点があるのか
農作業者の身を守る技術も開発されているIoTと農業の関係ですが、IoTを導入することでどのような利点があるのでしょうか。
農林水産省によると、食料自給率が低いと言われる日本において、「生産性をあげつつも省力で農業を行なうことができる」、「農作業者の重労働、危険な作業等、心身負担からの解放」、「どのような人でも農業が取り組みやすくなる」といった利点が挙げられています。特にIoTの活用による農作業が高効率化される、心身的負担が解放されるといった点は、影響力が大きいのではないでしょうか。
従来の農業は、多くの時間と労働力が必要とされ、非効率な作業だと見受けられることもありました。加えて経験や勘で引き継がれてきた農業は、経験のない新規就農者が飛び込むにはハードルの高い世界でもありました。しかしIoTによって作業効率がぐんと良くなり、加えて農業が全くの初心者であっても手をつけられるとなれば、高効率・高収益が見込めるといっても過言ではありません。
設備投資にかかる費用とは
ただし、やはりIoTを活用したスマート農業にもデメリットは存在します。農業に関わりやすくなるメリットがある代わりに、一番代表的なデメリットとしてコスト面が挙げられます。
農業において、農業機器を購入するだけでも、農作業やかかる時間を低減することができるとはいえ、コンバイン1台で数百万円はかかります。
IoT農業に必要なデバイスやコンピュータも、数百万程度の初期投資は必要不可欠になると言えるでしょう。加えて農業機器と同様に、メンテナンスや維持費も考えられます。まだまだ新規参入の農業ですから、実績もそこまで多くありません。
確かにIoT農業が浸透すれば、未経験の就農者も農業はやりやすくなるかもしれませんが、その状態に達するまでの例があまり見当たらないため、それこそが最大のリスクと思ってしまう人も少なくないでしょう。またIoTには電波受信環境も重要視されると考えられますが、まずその整備が整っていないことには、なかなか挑戦することができずもどかしい思いをするかもしれません。
IoTを活用した農業に取り組んでいるグループによれば、導入するか否かより重要なこととして、周りの人達の情報交換や技術を理解し、使いこなすことが挙げられています。そのためIoT農業に取り組もうと心がけている市町村やJAなどでは、積極的にIoT農業をサポートできるような体制がとられつつあります。例えば北海道においては、2016年6月に「北海道スマート農業推進協議体」が設置され、情報交換や共有を目的として、IoTにまつわるイベントや技術に関する情報を発信しています。
今までIoTと農業には関わりがありませんでしたが、このような取り組みや、現代社会における農業の形により、関係性はこれからもどんどん深まっていくことでしょう。もしIoT農業に興味のある方は、積極的に事例のある農業者さんとコンタクトを取ってみてください。事例が積み重なっていけば、恐らく数年後には至って普通の農業の形として、国内になじんでいることでしょう。
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