現代の農業が抱える問題として、農業従事者の高齢化や人手不足、耕作放棄地の増加などが挙げられます。
これは農業の生産性を向上させるためには、あまり好ましくない現状ですよね。
この問題を解決する方法として、人工知能やICT技術などが発達し続けています。
最新の農業関連ニュースを見ると、ICT技術によるスマート農業は、農業界に浸透しつつあるように思います。特に「2017年農業技術10大ニュース」で話題となったものにICT技術を使ったものが目立ちました。
そこで今回はICT技術を用いた田んぼ管理方法についていくつかご紹介していきます。
ICT技術で水田管理の労働時間が削減
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機関(以下、農研機構)で開発されたのは、自動で水田の給水・排水を制御できるシステムです。
このシステムはスマートフォンやPCを使って遠隔操作ができるもので、水管理における労力を大幅に削減できると言われています。
そのため第6次産業(生産だけでなく加工から流通まで総合的に行う産業)化への貢献や、その労力が削減された分、規模を拡大させたり、違うところに労力を向けることができ、これが所得向上につながるのでは、と期待されています。
このシステムを導入すれば、スマートフォンもしくはPCがあれば、いつでもどこでも水田の状態を確認することができます。
給水・排水機能だけでなく、水位や水温などのデータも閲覧することができますから。
農研機構が行った実証実験では、実証圃場での水管理労働時間が約80%も削減できたと報告されています。
データを基に水を管理できるため、穂が出てから収穫までに利用した水量の削減にも貢献。実証実験では約50%削減したことが報告されています。
気になるのはシステムの価格です。目標価格は
・給水バルブなど本体は1機あたり10万円
・通信基地に20~30万円
・通信費用は月2,000円~4,000円
となっています。
水管理の遠隔操作だけでなく、今後は稲作におけるスケジュール管理も人工知能やICT技術が担ってくれるでしょう。実際、最適な水管理を行うためのアプリも開発されていると聞きます。
自動運転田植え機で田植え初心者も楽に?!
また農研機構が開発したものには、田植え作業に貢献するものも登場しています。
自動運転田植機は、旋回と直進する動きで田植えをサポートする機械で、田植え時期に必要となる人員を削減することにつながる便利な機械です。
田植えを行う機械というのは決して珍しいものではありません。
ただ今回紹介する自動運転田植機に関しては“無人”で作業を行うことができるため、革新的だと言えます。従来は機械を操作する人と田植えに必要な苗を補給する人の2人は必要だったのですが、「2017年農業技術10大ニュース」に登場したこの機械は、走行経路も自ら判断し、田植えを行っていきます。
この機械が高く評価されている点に「稲作の熟練者でなくても作業可能」という点も挙げられます。
冒頭に挙げた現代社会における農業の問題に後継者不足があります。
もちろん新規参入者の数も徐々に増えている前向きなニュースを見ることもできますが、中には今まで農業に触れたことのない人もいます。
従来であれば「長年の経験と勘」で伝承していた印象のある農業ですが、それでは今まで農業に関わってこなかった人が参入しにくいのも事実です。しかしこの機械なら、田植え初心者でも作業を行うことができます。これなら、農業従事者の拡大につながりますよね。
トラクタも無人化?!
なお面白いロボットがあったので、1つ紹介します。2016年10月に開催されたジャパンロボットウィークにて、第7回ロボット大賞農林水産大臣省を受賞したロボットトラクタがあります。これは2台のトラクタを1人で操縦できるというものです。
比較的広大な土地をもつ農家さんには、人員が減ってしまっても作業が可能になり、便利に感じられるのではないでしょうか。
操作はタブレットで行います。2台同時操作と聞いた時、安全性はどうなるのだろう?と不安に感じましたが、操作する際、トラクタが走行する前後の映像を見ることができるそうです。
ICT技術は労働にどう影響するか
労力を減らし、かつ生産性向上が見込まれるICT技術は革新的だと考えています。
農業従事者の高齢化や後継者不足が、今後の農業に関わる問題として挙げられているものの、新規参入を考える若い世代が全くいないわけではありません。
ありがたいことに、今まで農業に関わってこなかった人で、新規就農を考える人もいます。そのような人にとっても、ICT技術は農業をサポートする重要な役割を担っています。
今回紹介したのは自動で田んぼを管理するもの、自動運転で農作業をするものでしたが、ドローンや気象データを利用した便利な機会もたくさん登場しています。用途によって様々な技術を使い分ける農家さんも次々登場するのではないでしょうか。
人工知能やICT技術によって「人が職を奪われる」という声も挙がっていますが、私個人としてはそうは思いません。というより、それら技術に任せて済むなら、もっと力を注ぎたい品質や生産性向上、規模拡大に目を向けることができるので、使い方次第だと考えています。今後の農業において、積極的に活用される技術が続々と登場することを期待しています。
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