薬剤散布ドローンによる防除面積が増加!ドローン防除の現状

薬剤散布ドローンによる防除面積が増加!ドローン防除の現状

空撮用ドローンの先駆けが登場したのは2010年。フランスのParrot社が発売した「AR Drone」を筆頭に、さまざまなドローンが注目されるようになりました。そして近年、農業分野においても、ドローンはその存在感を増しています。

そんな中、日本農業新聞に掲載された記事(2019年4月12日)によると「薬剤散布ドローン(小型無人飛行機)を使った延べ防除面積(2018年度速報値)が2万7346ヘクタールとなり、前年度の2.8倍に増えた」とあります。

 

 

ドローンによる防除面積増加

薬剤散布ドローンによる防除面積が増加!ドローン防除の現状|画像1

 

2015年12月に、ドローンなどの飛行基準を定めた「改正航空法」※が施行されてから、ドローンを活用した農薬散布が広まり始めました。農林水産航空協会によると、ドローン登録機体数は2018年12月末で1437で、17年度の2倍に拡大したとのこと。ドローンを飛ばすオペレーター認定者数も17年度から1.8倍の5399人となっています。ドローンによる農薬散布が本格化し、ドローン本体、オペレーター登録数が急増したことが、先で紹介した防除面積の増加につながったと言われています。

※改正航空法では、無人航空機について「航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船(中略)であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(中略)により飛行させることができるもの」と定義されている。農薬散布用ヘリコプター、固定翼型のラジコン機等も改正航空法の対象。ただし、重量が200g未満の機体は、飛行することで航空機の航行の安全や地上の人・物件の安全が損なわれるおそれがないとされ、対象から除外されている。

 

 

ドローン防除の現状

薬剤散布ドローンによる防除面積が増加!ドローン防除の現状|画像2

 

日本の農業が抱える問題

ドローンによる農薬散布が本格化した背景には、日本の農業が抱える深刻な問題があります。日本の農業は農業従事者の高齢化に伴い、「後継者不足」「人手不足」などの問題を抱えています。高齢により農業を続けられない、後継者がいないという理由から耕作放棄地が増加しているのも問題として挙げられています。

 

ドローンによる農業のイメージに変化が?!

しかし若い世代が農業に関心を抱いていないわけではありません。若い世代の新規参入者は増えつつあると言われています。また若い世代はIoT技術やドローンに柔軟な考えをもっています。「休むことができない」「天候に左右される」「手間暇がかかる」など、従来の農業に対する印象は、これら新しい技術のおかげで変わりつつあります。特に本記事で着目しているドローンは、広いほ場での農薬散布がラクになる上、好きな人にとってはその操作が「楽しい」と感じられることもあるでしょう。

 

ドローン活用の利点

ドローンを活用することで、農作業の効率化、低コスト化をはかることができます。小規模なほ場であれば、よりいっそう農作業の省力化ができます。

ドローンが登場する前から「空中散布」という方法はありました。が、例えば産業用無人ヘリコプターを使用すると1台の購入に1000万円以上かかります。加えて農薬のコストもかかります。しかし農業用ドローンであれば、100〜200万円ほどで購入できます。それなりの価格ではありますが、産業用無人ヘリコプターと比較するとかなりのコスト削減です。

ドローン利用はコスト削減の利点だけではありません。ヘリコプターを使用する場合よりも至近距離から農薬を散布することができるのですが、それにより使用する農薬を減らして効率よく散布することができます。農作物への農薬利用の観点からも、メリットがあるのです。

 

 

ドローンを使用する際の注意点

薬剤散布ドローンによる防除面積が増加!ドローン防除の現状|画像3

 

ドローンを使用する際に注意すべき事項があります。

  1. 風の影響に十分注意すること
  2. 飛行高度、飛行間隔、飛行速度の保持に努めること
  3. 機体とオペレーターの距離を意識すること
  4. 電波の干渉に注意すること

1,ドローンは風の影響を受けやすいため、風向きによっては農薬散布予定の場所ではないところに農薬が飛散してしまう可能性があります。そのため、あらかじめ風の影響を受けやすいことを考慮して、農薬を散布する必要があります。

2,農作物に対して至近距離から農薬を散布できるドローン。そのため農薬を効果的に、均一に散布するためには、高度や間隔、飛行速度などを維持する必要があります。ドローン操作には技術を要するため、ドローン参入を考えている人にとって、この点が障壁になってしまう可能性もあります。

3,ドローンを操作する際には、“水平距離で150mを超えない範囲で機体の位置と向きが把握できる距離”で操作する必要があります。

4,電波の特徴によって、地上デジタル放送電波等の干渉を受けやすいと言われています。

 

 

ドローン防除の課題

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ドローン防除の浸透

ドローンによる防除面積は増加しましたが、まだまだドローンは普及しきっていないことがわかります。2018年度の防除面積は2万7346haで、水稲・麦類・大豆の合計面積が2万7008haで、防除面積全体の99%を占めています。しかし、米、麦、大豆の作付面積は183万ha。作付面積に占める割合は2%にも満たないのが現状です。

 

ドローン利用可能な農薬の少なさ

また、防除面積を見ていただくと気づくことがあります。

  • 水稲 2万3177ha(全体の85%)
  • 麦類 1960ha
  • 大豆 1871ha
  • 野菜や果樹を含むその他作物の面積 338ha

広大な土地を利用する作物(米、麦、大豆等)と違い、野菜や果樹でのドローン防除面積はかなり少なくなっています。その背景には、「野菜や果樹に使える農薬が少ない」という課題があります。

ドローンに積載できる農薬の量は決して多くありません。そのため少量で効率よく散布できる農薬が必要なのですが、ドローン防除のために登録されている農薬は、

  • 稲、麦類 463剤
  • 野菜類 48剤
  • 果樹類 18剤

と圧倒的に少ないのが現状です。

農林水産省は、ドローン利用を広げるためにも、ドローンに適した農薬の登録申請手続を簡素化させる方向です。22年度末までに

  • 野菜類 48剤 →121剤
  • 果樹類 18剤 →69剤

の確保を目指しています。

 

参考文献

  1. 【ドローンとは】空撮ドローンの歴史 -2010年〜2017年のドローン革命に迫る
  2. 改正航空法の概要と環境整備に向けた取り組み
  3. ドローン防除2・8倍に 18年度 2・7万ヘクタール 登録農薬数確保が課題 日本農業新聞
  4. 無人航空機による農薬散布を巡る動向について 農林水産省
  5. 農業におけるドローンの使われ方とは?今後の展望も併せて解説 ドローンスクールナビ

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