センシング技術によって得られる利点。ロボット、AI、センシング技術の違いやセンシング技術に残される課題とは。

センシング技術によって得られる利点。ロボット、AI、センシング技術の違いやセンシング技術に残される課題とは。

センシング技術は、農業の精密化や生産性向上に大きく貢献する革新的なツールです。画像解析を用いた作物の生育状況の把握、土壌や環境データのリアルタイム監視、非分散型赤外線(NDIR)センサーによるガス濃度測定など、多様な技術が活用されています。これにより、病害の早期発見や適切な施肥管理が可能になります。

そこで本記事では、センシング技術によって得られる利点や残される課題についてまとめました。

 

 

ロボット、AI、センシング技術の違い

センシング技術によって得られる利点。ロボット、AI、センシング技術の違いやセンシング技術に残される課題とは。|画像1

 

近年、農業分野ではロボットやAI(人工知能)、センシング技術の導入が進んでいます。作業の効率化などを実現するこれらの技術はそれぞれ異なる役割を持ちます。

ロボット:物理的な作業を担う自動化技術

ロボットは、農業現場で物理的な作業を代行する機械です。例えば、自動運転トラクター、収穫ロボット、除草ロボットなどが挙げられます。これらの技術は人間が行ってきた作業の代替・補助を目的とします。ロボット単体でも一定の作業をこなすことができますが、環境情報を収集・解析するAIやセンシング技術と組み合わせることで、より高度な判断が可能になります。

AI:データを解析し、判断・予測を行う技術

AIは、大量のデータをもとに分析し、最適な判断や予測を行う技術です。たとえば、作物の生育状況や病害の発生リスクを画像解析によって検出したり、気象データや土壌情報を分析して適切な施肥計画を提案したりします。農業分野に用いられるAIは、ロボットやセンシング技術と連携することで、データに基づいた精密な制御を実現できます。

センシング技術:環境や作物のデータを収集する技術

センシング技術は、作物や周囲の環境の状態をデータとして取得する役割を担います。たとえば、画像センサーを用いた葉色解析、土壌センサーによる水分・栄養状態の測定、NDIR(非分散型赤外線)センサーを用いた温室内の二酸化炭素濃度測定などがあります。これらのデータをAIが解析し、ロボットが適切な作業を実行するという流れが、次世代農業の基本形となっています。

ロボット、AI、センシング技術にはそれぞれ異なる役割を持ちますが、互いに連携することで農業の効率化と高度化をさせています。

センシング技術が得意とすること

前述した通り、センシング技術はデータ収集を得意とします。そのため、各種データ化とその活用、データをもとにした自動仕分けなどが得意分野として挙げられます。具体な技術には以下のものがあげられます。

  • 特殊なカメラ(例、スペクトルカメラ:可視光だけでなく、紫外線や赤外線など幅広い波長帯の情報を細かく測定するカメラ)を使用して生育状態を分析し、適切な収穫時期を予測する
  • 温度、湿度、CO2、土壌情報などのデータを収集し、分析に活用することで、より効率的な育成や環境制御を可能にする
  • 選果機に搭載されたセンサーによって、糖度や酸度、熟度などの品質情報をもとに、農作物を精度高く仕分けることができる

 

 

センシング技術によって得られる利点

センシング技術によって得られる利点。ロボット、AI、センシング技術の違いやセンシング技術に残される課題とは。|画像2

 

環境の可視化による最適管理

温度、湿度、光量、土壌水分、CO2濃度など、栽培環境を数値化することで、最適な管理が可能になります。たとえば、適切な温度・湿度を維持することで、病害の発生リスクを低減し、収穫量を増加させることができます。

効率的な資源利用

水分センサーや土壌センサーを使用することで、必要最低限の水や肥料を供給でき、資源の無駄遣いを防ぐことができます。また、CO2センサーを用いた環境制御により、光合成を最適化しつつコスト削減を実現します。

品質の向上

分光センサーを活用して糖度や熟度を測定することで、高品質な農産物を安定して生産することが可能です。これにより、ブランド価値を高めることも期待できます。

異常の早期発見

クロロフィルセンサーやNDVIセンサーによって、植物の健康状態や生育異常を早期に発見できます。これにより、病害虫の被害を最小限に抑えたり、適切な栽培対策を講じることができます。

作業の自動化と効率化

センサーによるデータ収集は自動化されており、人手を介さずに正確な情報を得ることができます。また、このデータをAIやIoT技術と連携させることで、潅水や施肥の自動化が実現し、労働負担を軽減します。

 

 

センシング技術活用の課題

センシング技術によって得られる利点。ロボット、AI、センシング技術の違いやセンシング技術に残される課題とは。|画像3

 

センシング技術には多くの利点がありますが、課題も残されています。

センシング技術に限らず、スマート農業技術でよく取り上げられる課題には導入コストの問題があげられます。高性能なセンシング機器はまだまだ高価で、小規模農家にとっては導入のハードルが高いことが課題です。またセンサーを適切に設置・維持するためのコストも考慮する必要があります。

次にデータ解析の専門性についての課題です。センシング技術によって収集されるデータは膨大であり、それを適切に解析し、実用的なものとして活用するには、専門的な知識や技術が必要です。この課題の解決には、農業従事者自身がデータ解析の専門性を高めるほか、データを十分に活用できるよう、わかりやすい可視化や解析システムの整備が求められます。

通信インフラの整備も課題としてあげられます。センサーから得られた情報をクラウド上で解析する場合、安定した通信環境が必要不可欠です。しかし、農業地域ではインターネット環境が整備されていない場所も多く、リアルタイムでのデータ収集・分析が難しいケースもあります。

そのほか、センサーの精度を低下させないためには、センサーの定期的な校正等が必要になるといったメンテナンスの手間や、環境条件による影響(光学センサーは天候による光量の変化の影響を受けやすく、土壌センサーは土質によって測定精度が異なる場合があるなど)などが課題の一つとしてあげられます。

 

 

まとめ

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センシング技術は、農業の効率化や品質向上に大きな可能性を秘めています。

今後、低コストで使いやすいシステムの開発やデータ解析の自動化、環境に左右されにくいセンサー技術が開発されることでコストや技術的な課題が克服できれば、持続可能で高収益な農業の実現が期待されます。

未来の農業を支えるセンシング技術のさらなる発展に注目です。

 

参考文献:中村恵二 『図解入門業界研究 最新農業の動向としくみがよ~くわかる本』(秀和システム、2023年)

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