新しい農業アクアポニックスを筆頭に、循環型農業を学ぶ

新しい農業アクアポニックスを筆頭に、循環型農業を学ぶ

新しい農業アクアポニックスを筆頭に、循環型農業を学ぶ│画像1

「循環型農業」が注目を集めています。化学肥料や農薬は、それそのものが悪というわけではありませんが、農作物の生育・収穫の効率化のためにそれらに依存した畑は、生態バランスが崩れ、有機物が足りなくなり、どんどんと痩せていきました。
その一方で、ふんだんに有機物を含む家畜の排泄物による環境問題発生が問題視されることがありました。これらを打破すべく見直されたのが資源循環の形であり、家畜の糞や枯れた農作物などを有機資源として活用することで、循環型農業が成り立っています。

そんな中、全く新しい形の循環型農業が登場しました。それが「アクアポニックス」です。

 

アクアポニックスとは何か

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これはアメリカで研究がはじまった水耕栽培と魚の養殖を融合した新しい形の循環型農業です。魚と植物の生育に必要な栄養を供給しあう、循環が見込める農法なのです。ただし現時点では、アクアポニックスで育てられる魚は真水でも生育できる淡水魚に限られます。
まず淡水魚の排泄物から出るアンモニアを水中の微生物が分解し、硝酸塩まで変えていきます。これは植物の成長に必要な養分であり、これを含む水を吸収して植物は育っていきます。この際、硝酸塩を吸収した水は水槽へ戻ってくるため、淡水魚はその水を利用して生きることができます。
この循環さえうまく回れば、必要なのは水耕栽培用の水槽を置く設備と、魚のエサだけで十分と言えるのです。加えて魚の生育に影響するため、化学肥料を使うことはできません。そのため必然的に有機栽培が実現します。食の安心安全志向が高まる昨今、消費者にも安心して食べてもらうことのできる農作物を育てることができるのです。

アクアポニックスによる栽培方法は、日本では発展途上かもしれません。しかし近年農地を必要としない、水耕栽培によって都市部でも農作物を育てることのできる“植物工場”型の農業システムが注目を集めています。アクアポニックスも、飲食店のディスプレイの一部としてのサイズから、本格的に生産できるようなサイズまで設置できる準備は整っています。新しい循環型農業の形として、注目してみてはいかがでしょうか。

 

アクアポニックスだけではない循環型農業の事例

循環型農業では、農業サイクルの中で、自然界で発生する生態循環を実践するようなイメージです。そのため、廃棄物として今まで処理されてきた家畜の糞尿や枯れ葉、生ごみなども、有用な資源として積極的に活用することができます。そこで様々な循環型農業の事例を見ていきましょう。
例えばJA榛沢(はんざわ)で行なわれている循環型の取り組みは、牛糞を活用した堆肥です。ブロッコリー農家が使用している堆肥は全て、肉用牛から出る牛糞を1年かけてじっくり発酵させた完熟堆肥となっています。堆肥を利用することでブロッコリーの品質向上につながっているだけでなく、畜産農家にとっては糞尿処理のコスト削減につながるということから、非常にWIN-WINの関係が成り立っていることが分かります。
奄美大島でも、牛糞堆肥は活用されています。またさとうきびから砂糖を製造する際に発生する、残渣や搾りかす等々の副産物は、その一部は牛糞堆肥の材料として混ぜ込まれ、収穫時の残渣は牛の寝床に敷くものとして利用されており、これまたWIN-WINの関係です。
消費者に比較的身近な食品残渣も、循環型農業の資材として利用することができます。食品加工工場から出る食品残渣も、肥料化・飼料化することで、今までお金を払って処分していたものを、安いコストで活用することができます。JAふくしま未来では、このような食品残渣を用いた肥料化・飼料化への取り組みを進めています。食品廃棄物をスムーズに堆肥化できるような生ごみ処理機を開発・販売している農業メーカーもあります

新しい農業の形

循環型農業の新しい形は、資源や生態循環だけにとどまりません。CSA(Community Supported Agriculture)と呼ばれる農家と消費者間の産直システムを取り入れた循環型農業も注目を集めています。これは地域の消費者が、今まで農家さんが受け持っていた生産コスト(種の購入など)を受け持ち、そのリターンとして生産した野菜を受け取る産直システムです。収穫までの行程をまるごと契約するようなイメージですね。なかなか個性的な取り組みですが、農業的な観点以外にも社会的な観点として、地域コミュニティーを確立させるというメリットもあります。また消費者が生産者の取り組みに近づくことで、資源循環型農業への理解も深まることでしょう。今回冒頭で紹介したアクアポニックス同様、認知度はまだまだ低いかもしれませんが、新しい農業の情報は積極的に取り入れて損はないでしょう。

冒頭のアクアポニックスは、魚の養殖という異業種との連携も必要になってくるかもしれませんが、必然的にオーガニックになることから、安心安全というキーワードに敏感な消費者の思いに答えることはできるようになるでしょう。室内に置くことで害虫被害を防ぐこともできますし、農業に欠かせない、けれども重労働ともいえる土や肥料づくりなどの労力も減ります。身体的に負荷がかかる作業を減らすことができることは、高齢化の進む今後の農業において、なくてはならない存在になるのではないでしょうか。

 

参考文献
1,江里祥和, 2016年2月発行,『江里祥和のアクアポニックス通信 EARTH JOURNAL vol.1』, 株式会社アクセスインターナショナル
2,自然を作る アクアポニックス農法が示す循環型農業モデル マイナビ農業
3,資源循環型農業ってなあに? 独立行政法人農畜産業振興機構
4, これからの新しい農業の形「CSA」ってなに?
5, 食品残さを活かしたエコすぎる農業〜福島の挑戦〜

 

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