近年、日本の農業には
- 農業従事者の高齢化
- 耕作放棄地の増加
- 労働力不足
などが深刻な問題となっています。
もちろん、若い世代の農業従事者や新規就農者の数が増えつつあるという前向きなニュースもあります。しかし、高齢化が進んでいるのは事実。今の段階で農業の課題に向き合わなければなりません。
そんな中「スマート農業」の普及が進んでいます。農業の直面する課題の解決策として提唱され始めたスマート農業。労働を省力化したり、栽培技術やノウハウの伝承に役立ったりと、課題解決に重要な役割を果たしています。
本記事ではその中でも「農業用ロボット」に着目。開発が続いているさまざまな農業ロボットについて紹介していきます。
開発続く農業用ロボット
「農業用ロボット」にはさまざまなものがあげられます。代表的かつ注目を集めている農業用ロボットは、
- 収穫用ロボット
- 自動運転の農機
- 農業用ドローン
などがあげられます。
収穫用ロボット
収穫用ロボットは、その名の通り収穫を行うロボットのことです。「作業の効率化」の面で注目されているロボットです。開発が進み、単に収穫するだけでなく、収穫時期を判断することができます。センシング技術を駆使して周囲の情報を感知し、収穫に適した野菜だけを収穫するのです。
自動運転の農機
自動運転のトラクターやコンバインも注目されています。現時点では、
- 有人機体に無人機体が連動するタイプ
- 半自動運転機能を有するタイプ
が主流です。
広大な農地においては労働の省力化が期待できます。
日本政府は「自動走行トラクターの実用化」を目標として掲げていますが、「事故が起きた場合には誰が責任を負うのか」等の法整備が必要になるため、実際に導入されるまで、まだまだ時間がかかりそうです。
農業用ドローン
農業用ドローンにはさまざまな用途があります。
- 種・農薬等の散布
- 上空からの情報収集
- 害獣対策
農業用ドローンを飛ばすための免許は必要ありませんが、「散布」する場合には国土交通省に申請しなければなりません※。
※航空法における「無人航空機」の禁止事項は以下の通りです。
[1] 日中(日出から日没まで)に飛行させること
[2] 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
[3] 人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
[4] 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
[5] 爆発物など危険物を輸送しないこと
[6] 無人航空機から物を投下しないこと
引用元:国土交通省
「農薬散布」はこの禁止事項の[5][6]に当てはまるため、申請なしに農薬散布することはできません。「農地にのみ散布するため、危険ではない」と申請し、承認されてから活用することができます。
自動収穫ができる日は近い!最新農業ロボットを紹介
最新の農業用ロボットを紹介していきます。
自動収穫ロボット
まず紹介するのがinaho株式会社が開発した野菜収穫ロボットです。
収穫に適した野菜を自動で判断し収穫してくれます。事前の設定通りに圃場を回るため、収穫作業をこのロボットに任せることができます。
現在はアスパラガスの収穫に対応しているようですが、今後は
- キュウリ
- ピーマン
- トマト
- ナス
などの野菜にも対応予定。
拡張機能には「病害判定」等があります。人手不足に悩む農家や規模拡大を目指す農家にはありがたいロボットなのではないでしょうか。
宇都宮大学初のベンチャー企業「アイ・イート」が開発した「自走式イチゴ収穫ロボット」も紹介します。
イチゴに特化した自動収穫ロボットですが、注目すべきはロボットの繊細な手元の動きです。センシング技術で完熟したイチゴを検知すると、果実の部分に触れることなく果柄(イチゴのヘタの先に付いている茎のような部分)だけをつまんで切断します。専用の格納部分に収穫したイチゴを入れるため、イチゴ本体は傷つくことなく収穫されます。品質の安定にも貢献するロボットなのです。
農薬散布ロボット
スイス「ecoRobotix」が開発した「Autonomous Weeding Robot」。
噴霧器と除草剤用タンクを搭載したロボットなのですが、センシング技術とロボット技術を組み合わせることで省力化だけでなく「減農薬」も叶える魅力的なロボットです。農薬が必要な場所に必要な量「だけ」を噴霧できるため、除草剤の使用量を大幅にカットすることができるのです。
農家を応援する相棒ロボット
中西金属工業株式会社の「アグビー」。
農家の後ろを自動追従する「台車」なのですが、
- 農薬や収穫物等の運搬
- 除草
- 害獣見回り
- データ収集
など、あらゆる役割をこなしてくれます。
重い荷物を運ぶサポートをするだけでなく、畑の状態等を計測し、収穫量の予測までしてくれるロボットです。小規模な圃場で役立つ農業用ロボットなのではないでしょうか。
潅水施肥も自動化
株式会社ルートレック・ネットワークスの「ゼロアグリ」。
AIにより潅水・施肥を自動化することができます。AIがセンサーの情報から最適な液肥供給量を判断し、自動的に必要な量だけを供給することができます。またセンサーで得られた情報はクラウド上に集められます。液肥供給量など、その年に得られたデータを共有することができるのです。
農業用ロボット、今後の展望
農業用ロボットの課題として、
- 初期投資が割高
- メーカーごとに独自の規格があり、相互運用ができない
- スマート農業を実施している人がまだまだ少ない
などが挙げられます。
農業用ロボットの活用はまだまだ始まったばかりです。そのため「費用対効果」がわかりにくく、うまく活用できずに使用を断念する農家も少なくないようです。また農業用ロボットは企業ごとに独自開発されていることが多く「標準化」が進んでいません。
とはいえ、農業用ロボットによって省力化が叶えられれば、圃場を拡大したり収量をアップさせることはできるでしょう。労働負担の解消や栽培技術・ノウハウのデータ化も期待されています。
なおアメリカでは完全自動化の野菜工場が登場しています。「iron OX(アイロン・オックス)」は人工知能でロボットを稼働させ、葉物野菜が生産・収穫されています。完全自動化は不可能な話ではもうないのです。
省力化や生産効率を高めるのに役立つと期待されている農業用ロボット。今後の発展に期待大です!
参考文献