【使える農業ツール前編】農業のDXに役立つツール

【使える農業ツール前編】農業のDXに役立つツール

2022年5月28日に発売された週刊ダイヤモンド編集部『儲かる農業2022 週刊ダイヤモンド 2022年 5/28号』(ダイヤモンド社、2022年)に「役立ったツール・期待外れだったツールランキング」が掲載されています。

本記事では、その中でも近年注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)※に関連するツールについて紹介していきます。

※DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

IT(情報技術)が社会のあらゆる領域に浸透することによってもたらされる変革。2004年にスウェーデンのE=ストルターマンが提唱した概念で、ビジネス分野だけでなく、広く産業構造や社会基盤にまで影響が及ぶとされる。デジタル変革。デジタル改革。DX。

出典元:小学館 デジタル大辞泉

を指します。

農業分野においては、農林水産省が「農業DX構想」を推奨しています。

関連記事:「農業DX構想」とは何か。そもそもDXとは。どんなメリットがある!?

農業DX構想では、社会全体でDXが加速していることをふまえ、デジタル技術を積極的に活用することで生産効率の高い営農を実行することや、消費者のニーズをデータで捉え、そのニーズに的確に対応した価値を創造・提供する農業「FaaS(Farming as a Service)」への変革を進めることを目的にしています。

 

 

注目されているツール

【使える農業ツール前編】農業のDXに役立つツール|画像1

 

「役立った生産DXツール」ランキングで見事1位を獲得していたのが、株式会社クボタの営農支援システム「KSAS(ケーサス)」です。

KSAS

KSASはクラウドシステムであり、農機の稼働情報や圃場の情報、作業や収穫といった情報を連携させ、そこで得られたさまざまなデータを一元的に管理・見える化するものです。

2022年7月19日現在、「営農コース」と「機械サポートコース」の2つがあり、営農コースでは圃場管理や作付計画、作業指示や作業記録などを、パソコンやスマートフォンを用いて記録することができます。機械サポートコースは、スマートフォンやパソコンから機械の位置や稼働状況が把握できる「MY農機」などのサービスが提供されています。

営農支援システムには、ヤンマーホールディングス株式会社の「スマートアシスト」もランクインしていました。

SMARTASSIST|アフターサービス・サポート|農業|ヤンマー

スマートアシストはGPSアンテナ及び通信端末を搭載した農機から発信される稼働情報などをもとに、ICTによる機械の見守りと生産作業の効率化を図るサービスです。

機械の見守りの具体的な事例には、「作業中に異常が発生しないよう、機械をモニタリングしてエラーを通知する」「機械を稼働させようとしたときに燃料切れが起きないよう、機械の稼働情報を見える化する」「機械が盗まれる、稼働が突然停止してしまう、といったことがないよう、24時間モニタリングを行う」といったものが挙げられます。

また他社のクラウド型サービスとも連携しています。連携しているサービスには、ソリマチ株式会社が提供する、栽培履歴の記録やコスト集計などの情報を管理できる「フェースファーム生産履歴」、ウォーターセル株式会社が提供する、農機を使用した作業内容の自動記録を行う「アグリノート」が挙げられます。

農業分野におけるデジタル技術の活用が浸透しつつある中、圃場管理や作業記録といった営農管理、農機との連携は、サービスとして標準的なものになってきた印象がありますね。

 

 

注目の環境監視システム

【使える農業ツール前編】農業のDXに役立つツール|画像2

 

ソフトバンク株式会社の農場環境監視システム「e-kakashi」の特徴は、環境データを見える化するだけでなく、e-kakashi独自の植物科学の知見を取り入れたAI(人工知能)がデータを分析し、最適な栽培方法をアシストするところにあります。

e-kakashi

e-kakashiの魅力的なところは、機能だけでなく、端末そのものにもあると考えています。というのも、2021年10月に大幅に改良されたe-kakashiの端末(圃場等に設置するもの)はソーラーパネルとニッケル水素電池を搭載したことで、外部電源への接続が不要です(利用するセンサーの種類によっては、外部電源への接続が必要になる場合もあります)。電源の有無に左右されないので、利用しやすいのではないでしょうか。

農場環境監視システムには、株式会社farmoの「ファーモ」も挙げられます。

farmo

ファーモは

  • 施設園芸
  • 水田
  • 露地・果樹
  • 気象・防災
  • 水路・溜池・河川
  • 養殖

と分野ごとの製品ラインナップが豊富なのが特徴です。

農業・畜産の総合展『農業Week』で見かけたときに感じたのですが、導入の気軽さ、手軽さが印象的です。というのも、ファーモにかかる費用は製品代のみで、月額利用料がかかりません。設置の簡便さもウリといえます。

施設園芸向けの環境監視システムで上位にランクインしていたのは、株式会社誠和の「プロファインダークラウド」です。

プロファインダークラウド|環境制御システム・環境測定器|製品ラインナップ|株式会社誠和

プロファインダークラウドはスマートフォンでハウス内の環境を気軽に確認することができるサービスです。

同社は、生産管理のデジタル化を下地に農産物の販売にも役立てるため、2022年2月からは新サービス「ブルーマーケット」を開設しています。ブルーマーケットはBtoBのオンラインマーケットであり、栽培で使用した農薬の情報などを開示することで、購入者の信頼を得ることを目標としている他、蓄積された気象データや販売データの相関から需要を予測し、無駄のない生産の実現を目標としています。

 

 

さまざまなツールがある中で、どう選べばよいのか

【使える農業ツール前編】農業のDXに役立つツール|画像3

 

上記ツールにはそれぞれ特徴がありますが、自分の農業経営に使いやすいツールを選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。

使い勝手の良さを知るためには、実際に触ってみるのがベストです。無料のお試し期間を利用したり、お試し期間のないツールであれば短期間だけ利用したりして、実際にツールを使ってみることをおすすめします。どんなにアプリの評判がよくても「自分にとって」使いやすいかどうかは、自分にしか分かりません。

とはいえ、役立ちそうなツールの数を絞るためにも、実際に触れてみる前に自分のニーズを明確にすることをおすすめします。「作業日誌をデジタル化して、共有したいのか」「労働管理を手軽なものにしたいのか」「作業をできる限り自動化させたいのか」など、ニーズを明確にするだけで、自分の農業経営に役立つツールは絞り込まれていきます。

 

参考文献

  1. 週刊ダイヤモンド編集部『儲かる農業2022 週刊ダイヤモンド 2022年 5/28号』(ダイヤモンド社、2022年)
  2. 農業DX構想検討会:農林水産省
  3. 農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)について
  4. 営農支援システム 「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」の開発
  5. SMARTASSIST|アフターサービス・サポート|農業|ヤンマー
  6. 農業AIブレーン「e-kakashi」を大幅にリニューアルして機能拡充と低価格化を実現
  7. farmo
  8. プロファインダークラウドの新サービス「ブルーマーケット」を公開! | ニュース | お知らせ| 株式会社誠和

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