近年、様々な最新技術が世間を賑わせています。
農業に関して言えば、ドローンや農業を管理するAI、収穫を手伝ってくれるロボットなどが挙げられます。これらは現代の農業における高齢化や後継者不足を解決するために登場した技術とも言えますが、AIやロボットだけでなく「サポートウェア」と呼ばれる道具もまた注目を集めています。
サポートウェアは、農作業に多い中腰の作業や重労働での身体の負担を軽減するために開発されました。運搬作業など重労働な仕事はまだまだ人の手で行われています。しかし高齢化や後継者不足の中、人の手でこなし続けていくのには限界があります。そこで、サポートウェアが登場するのです。
サポートウェアへの期待
サポートウェアは、農作業でかかる身体的負担を軽減する役割を果たしますが、これは高齢の方だけでなく、筋肉量の少ない女性の農業従事者や、若手農家にとっても利点のあるアイテムです。農作業が軽減化されれば、今まで重労働で疲労してしまい出来なかったこと、例えば新しい作物の植え付けや営業に力を注ぐなど、にも挑戦できるでしょう。老若男女問わず、様々な人に活用できるアイテムなのです。
腰をサポートする簡易的なもの
サポートウェアには大きく分けて2つのタイプがあり、モーターを利用して動作をアシストするものと、空気圧を利用してアシストするものに分けられます。
まずモーターなどを利用しない、比較的軽く、装着が簡易的な、空気圧式のサポートウェアをご紹介します。モーターを利用しない利点は、まず本体の重量がモーターによって重くなることを防ぐことができる点です。また野外で使用することを考えると、耐水性&安全性を考慮した時に活用しやすいと言えます。
空気圧式のサポートウェアには、体を動かす原動力として各開発会社独自の人工筋肉が組み込まれていることが多々あります。空気圧と人工筋肉の作用で“ものを引き上げる力”が強くなるため、収穫した野菜や果物などを運搬する際、中腰姿勢から持ち上げるといった動作が非常に楽になります。
2017年11月29日〜12月2日に、国際展示場で行われていた「国際ロボット展」にて、空気圧式のサポートウェアを体験しました。人工筋肉の力が強く、屈むのが少々難しかったのですが、20kgの荷物を中腰から持ち上げるのは驚くほど楽でした。
少しメカニックなサポートウェアも
モーター式のサポートウェアも農作業をサポートするにはうってつけです。例えばベンチャー企業であるサイバーダイン社が開発した「HAL(ハル)作業支援用」は、腰に付いている電極が、人が体を動かす際の微量な電気信号を読み取ることで、より良いアシストをするよう設計されています。人がものを持ち上げたり移動させたりする動作をサポートしてくれるので、腰椎や椎間板にかかる負担が軽減されます。腰を痛める不安がなくなるのは、長く農業に従事したい人には重要だと思います。本体は約2.9kg程度です。
また農作業における運搬をサポートするために、吊り下げるような形の機械を背負い、指先にスイッチ付きの手袋をはめ、荷物を持ち上げる際にスイッチを押すことでセンサーが反応し、動作をアシストするものもあります。スイッチでものを持ち上げる動作をサポートしてくれるので、重量20kgのものも楽々と持ち上げることができます。スーツ着用時には、ものを掴むというよりも、専用のフックを引っ掛けるという感じで持ち上げることができるので、重たい荷物を運んで手が痛くなる不安も軽減できるでしょう。
サポートウェア、今後の課題
ただ実際に体験してみて分かったのですが、
・慣れる時間が必要
・本体がまだまだ重い
というのはサポートウェア業界の課題なのではないかと考えています。
例えば私がまず体験した空気圧式のサポートウェアは、確かに荷物を持ち上げるという動作は楽だったのですが、そもそも人工筋肉の力が強すぎて屈みづらいという難点がありました。「持ち上げるのは楽だけどしゃがみづらい」というのは運搬作業を繰り返す中では、あまり好ましくないのでは?と考えています。
またスイッチで荷物を持ち上げるサポートウェアは、荷物を持ち上げる観点では楽ですが、荷物の上げ下げの際、バランスが取りづらくふらつきやすいのが気になりました。体験させてもらった20kgという重みが、ワイヤーで上がったり下がったりするたびに若干踏ん張る必要があったので、バランスを重視したスーツの登場を期待しています。
それから今回「国際ロボット展」で見てきたサポートウェアは、全身を覆うデザインが少なかったのですが、それはおそらく本体自体が重すぎてしまうことが要因なのだと考えています。実際、下半身の動作をアシストするスーツの中に、本体重量とサポート可能な重量が同じ重さのスーツがありました。それでは身体の負担を軽減するどころか、スーツを着用してもしていなくても変わらないような気がします。
ただどの会社も、抱えている課題に対して改良を重ねているのは事実です。軽量化や生活防水機能、バッテリーの駆動時間の延長など様々な面で開発・研究が続けられていますから、農作業の負担が軽減されるよう、サポートウェアの今後の発展にも期待大ですね!
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