現代の日本の農業が抱える課題として「人手不足」が挙げられます。農林水産省が「農業良動力に関する統計」を出しているのですが、農業就業人口※が年々減っているのが分かります。
<単位:万人、歳>
平成22年 | 27年 | 28年 | 29年 | 30年 | 31年 | |
農業就業人口 | 260.6 | 209.7 | 192.2 | 181.6 | 175.3 | 168.1 |
うち65歳以上 | 160.5 | 133.1 | 125.4 | 120.7 | 120.0 | 118.0 |
平均年齢 | 65.8 | 66.4 | 66.8 | 66.7 | 66.8 | … |
基幹的農業従事者 | 205.1 | 175.4 | 158.6 | 150.7 | 145.1 | 140.4 |
うち65歳以上 | 125.3 | 113.2 | 103.1 | 100.1 | 98.7 | 97.9 |
平均年齢 | 66.1 | 67.0 | 66.8 | 66.6 | 66.6 | … |
農業就業人口は減少していますが、昨今、新規就農者の数が増えつつあります(下記表)。
<単位:万人、歳>
平成25年 | 26年 | 27年 | 28年 | 29年 | |
新規就農者 | 50.8 | 57.7 | 65.0 | 60.2 | 55.7 |
新規自営農業就農者 | 40.4 | 46.3 | 51.0 | 46.0 | 41.5 |
新規雇用就農者 | 7.5 | 7.7 | 10.4 | 10.7 | 10.5 |
新規参入者 | 2.9 | 3.7 | 3.6 | 3.4 | 3.6 |
農業の人手不足を解消するのは、新規就農者の存在だけではありません。「就労」ではない、新しい農業との関わり方も登場しています。
※15歳以上の農家世帯員のうち、調査期日前の1年間に
- 農業のみに従事した人
- 農業と兼業に従事したが、農業の従事日数が多い人
を指します。
働く代わりに無料で観光できるアプリ!?
『タイミートラベル』というアプリが注目を集めています。これは人手不足に悩む農村などに足を運んで働く代わりに、無料でその地域を観光することができるサービスです。若手起業家が農家の協力を得て開発したアプリ。繁忙期の人手不足や、地方の関係人口を増やすことが目的です。
アプリの利用者は、働いた分だけ、農家ら雇用主から給与を受け取ります。その給与から、雇用主に滞在費等を支払います。その結果、交通費や宿泊費を実質負担することなく農業体験ができる、という仕組みです。なおシステム手数料は給与の30%で、雇用主が運営会社に支払います。
利用者は農作業などを体験することで「お試し移住」の感覚を味わうことができます。農業者側としては、人手が必要な時期だけ人を雇うことができます。また実際にサービスを利用した農家のコメントには「新鮮な野菜に美味しいと言ってもらえた」「ファンづくりにもつながった」とありました。双方に利点のあるサービスと言えるのではないでしょうか。
農業人材をシェアするサービスも
本サイトでも紹介した農業人材のシェアリング『シェアグリ』。
インターネットを介し、個人間で使っていないモノ・場所などを貸し借りするサービスである「シェアリングエコノミー」。『シェアグリ』はそんなシェアリングエコノミーで人手不足を解決するサービスです。
農家は人手が必要なときに、1日単位でアルバイトを募集することができます。サイト上でアルバイトを募集している日時や作業内容を記入し公開すれば、募集作業は完了です。掲載自体は無料で、働き手に支払う給与に応じてシステム手数料が発生します。
一方、働き手は『タイミートラベル』同様、空いている時間を利用して働くことができます。
隙間時間を利用して働きに来てくれる利用者のおかげで、効率よく人手不足を解消することができます。
「働く」をシェアすることで生まれるメリット
上記でも述べているように、農家側のメリットは「必要な時にだけ人手を確保できる」点です。
働き手側のメリットが、結果的に農家側のメリットにつながることも考えられます。
空いている時間を利用し、1日単位で働けるこのサービスには、履歴書や面接などのステップも、シフトを組む必要もない「手軽さ」があります。その手軽さが、人々の農業への興味を引き出すのではないでしょうか。
タイミートラベルやシェアグリは、農業の間口を広げるものとして期待されています。隙間時間を利用して農業体験ができることで、農業へのつながりができ、人々の農業への関心を向けることができます。「農業を生業にしよう」と考える若い世代のきっかけを生み出す可能性も、十分考えられるのです。
参考文献