「スマート農業」が浸透しつつある昨今、IT(情報技術)やICT(情報伝達技術)は、農業者の高齢化や減少による担い手不足が課題視されている日本の農業において、欠かせないものになりつつあります。
農作業経験のない新規参入者や農業分野に進出したばかりの企業を支え、農業を成長させるための推進力と期待されているIT技術。そんなIT技術を活用するのに切っても切れない存在として「スマホ」の存在が挙げられます。
LINE株式会社が行っている「インターネットの利用環境に関する調査」によると、2018年12月に実施された第5回目の調査結果で、「スマホ」でのインターネット利用者は全体の90%を占めていたとあります。「スマホのみ」の利用者は49%で、構成比として最多となり、過去5年の調査でその割合は増加傾向にあるといいます。
現代を生きる上で必要不可欠な存在となった「スマホ」。農業分野であっても、そんなスマホを活用する場面は確実に増えていくはずです。そこで本記事では、農業にぜひとも活用したい「スマホアプリ」を紹介していきます。
農業用最新スマホアプリ7選
使用記録などのレポートをするならこれ!
農作業日誌をつけられるアプリでご紹介するのは2つ。
「Agrion(アグリオン)」は、効率的に働きたい人のために開発された「クラウド型農業支援サービス」です。
「アグリオン農業日誌」を使うとスマホにさまざまな作業記録を残すことができます。このアプリを使う場合は、すべての作業が終わった後に記録をとるのではなく、作業をしながらスマホで記録をつけます。農薬使用記録など、その場でつけた記録をアプリが集計しレポートに出力してくれます。指定の場所ごとに集計してくれるので、作業終わりに日誌をつけることで生じる記憶漏れを避けることができます。
また作業記録を一緒に働いている人と共有することができるため、リアルタイムで進捗確認を行うことができます。
さまざまな記録をその場で簡便につけられるだけでなく、それらを集計したレポートを共有することで、ムダな動きがないか確認することができ、効率的な農業を行うヒントを見いだすことができます。
「畑らく日記」も簡単に栽培履歴や農業日誌がつけられるアプリです。こちらの特徴は独自の音声入力機能です。農作業中の現場で簡単に栽培や作業履歴を記録することができます。TwitterやFacebookなどSNSやブログとの連動もできるので、農場の宣伝としてSNSを活用している場合には、積極的に活用したいアプリです。
また記録したものはアプリ内で他のユーザーと共有することができるので、他のユーザーの栽培の様子を自分の作業の参考にすることができます。情報交換、同じ農業者の交流の場としても活用できます。
農薬調整がラクになる!?
農薬を使用するにあたって便利なアプリが、「農薬調整支援アプリ(混用事例確認・希釈計算)」です。iPhoneもandroidも対応しているこのアプリは日本農薬株式会社が開発したもの。
- 農薬の混用事例
- 希釈計算
- 散布量
などを確認することができます。
このアプリの特徴は、農薬調整の面倒な部分を省いてくれるところです。農薬の混用事例に関しては、
- 作物を選ぶ
- 薬剤を選ぶ
- 混用相手の薬剤を選ぶ
の3ステップで確認することができ、農業者が用意するのは、農薬散布予定の作物の種類と農薬の種類だけです。調整の計算も、希釈倍数や散布する量を入力するだけで、必要量を算出することができます。
難しいことを考えず、でも安全・安心に農薬を使いたいときには欠かせません。
自分で農作物を販売するならこれ!
お客さんと直接やりとりしたい人におすすめなのが「ポケットマルシェ(ポケマル)」です。「ポケマル」は農海産物を直販できるサービス。販売方法は非常に簡単で、
- 農作物を収穫
- スマホで撮影して出品
- 売れたら翌日にヤマト運輸が持ってくる伝票を元に商品を発送
これだけです。お客さんとコミュニケーションをとることもできるので、消費者と直接やりとりして販売したい農家さんにはうってつけのアプリです。
病害虫などを画像認識するアプリ
画像認識アプリを2つ紹介します。
1つ目は「plantix(プランティックス)」。画像認識で病害虫や栄養分が足りていない状態の農作物を診断してくれるアプリです。スマホで撮影し、その画像をアップロードするだけで、対処法を表示してくれます。現時点では180種類以上の病害虫等が診断可能です。
また画像診断だけでなく、農家や専門家が集まるオンラインコミュニティとしての役割も。世界各地から集まった知識や成功事例を共有することができます。
ただし「英語表記」のアプリのため、英語表記に慣れていない人は使いこなすのに少々苦戦するかもしれません。
もう1つは「アグリショット」。柑橘類につく病害虫をAI(人工知能)で自動診断するアプリです。
ユニークなのはAIによる診断の回答がLINEを通じて送られてくるところ。LINEにアグリショットのIDと友達として登録したら、あとは診断したい果実の画像をトーク画面に送るだけです。画像をAIが診断し、可能性の高い病害虫の診断結果を返してきてくれます。
これらの難点は農作物が柑橘類に限定されてしまうところです。
ただ現在、農研機構がさまざまな病害虫を診断できる画像診断アプリを開発しています。
2019年9月11日〜9月13日に開催された『アグリビジネスジャパン』で、農研機構が実証中のスマホアプリについて展示していました。androidで動作するアプリは、現時点でキュウリの病害11種、微小害虫4種を識別することができます。
現段階では、まだまだ識別できる数が少ないのですが、膨大な数の画像データを蓄積しているおかげで、植物の葉の小さな病変も識別することができますし、撮影時に光が反射してしまっても読み取る力があります。
またスマホの操作に慣れていないユーザーでも使いこなせるよう、視認性のいいデザインも特徴的でした。
病害虫の画像を認識し、自動で診断してくれるアプリは今後もたくさん登場することでしょう。
シンプルだけど意外と使えるアプリ
シンプルだけど意外と使えると、アプリの口コミで評判が高かったのが「距離カメラ」です。農業に携わる使用者によると「畝の長さを測るのに適している」のだとか。傾斜地では使えない難点もありますが、かなり正確に距離を測ることができます。
- 自分の肩の高さぐらいにスマホを固定して測る
- 測りたいものの向こう側に目印となるものを立てる
と、より正確に距離を測ることができます。
※農業に役立つサイト 農業の最新研究を知りたいならこれ!
最後にご紹介するのはアプリではなくサイトですが、農業の最新研究を知りたいなら「アグリサーチャー」がおすすめです。研究成果を提供している検索システムで、研究情報の数はなんと約30,000件にも及びます。新しい生産技術に興味津々の人や、農作業の省力化をはかりたい人、より効率のいい農作業を目指す人におすすめです。最新の研究成果をぜひとも覗いてみてください。
参考文献