消費者の食への安心・安全志向の高まりから、有機農業や“スーパーフード”と呼ばれる必須栄養素を多く含む野菜(協会ごとに定義が異なる)などが浸透してきました。
そんな中、アメリカで「マイクログリーン」なる野菜が注目を集めています。
アメリカでブームとなったものは、大抵日本市場でもブームが巻き起こります。もしかしたら今後くるかもしれないマイクログリーンについてご紹介します。
マイクログリーンとは
発芽して1~3週間くらいの若芽野菜を指します。5cmにも満たない小ぶりの野菜です。
なお、1種の野菜を指した言葉ではなく、様々な野菜の若芽野菜の総称です。似ているものにベビーリーフやスプラウトが挙げられますが、
ベビーリーフ・・・発芽後1ヶ月のものを指す
スプラウト ・・・栽培方法が水耕栽培
という違いがあります。
マイクログリーンは土壌栽培です。ブロッコリー、ケール、バジル、アマランサス、ルッコラ、赤キャベツなどを用います。
栄養価の高さから注目されている
1980年代にはすでに栽培されていたマイクログリーンですが、2014年に「マイクログリーンの栄養価が高い」という研究報告をUSDA(アメリカ合衆国農務省)が発表し、ブームに火をつけました。ビタミンC、ビタミンK、ビタミンE、ルテイン、カロテノイドが、通常の野菜よりも多く含まれているとあります。
もちろんマイクログリーンは、様々な野菜の若芽の総称のため、野菜の種類によって微量栄養素は異なります。例えば赤キャベツはビタミンCが豊富で、ビタミンEは低いことが挙げられています。また大根は、キャベツ、コリアンダー、アマランサスと比較すると、ビタミンEが豊富ですが、ルテインが低いという結果が挙げられています。
ただし、お気付きの方もいるかと思いますが、栄養を摂取するためにはマイクログリーンをたくさん食べる必要があります。栄養豊富であるという報告はありますが、マイクログリーンは5cmにも満たない若芽野菜ですから量が必要なのです。
難点は消費とコスト面にある
食の安心・安全志向や健康志向が高い人にはブームになりそうなマイクログリーンですが、野菜として定着するには難点が多いのも特徴です。
例えばマイクログリーンは鮮度が短いのがデメリットです。
鮮度を保てるのは収穫後7日間。そのため日本の流通経路を考えると、スーパーマーケットで消費者につなげるのはなかなか難しいものがあります。レストランや有機野菜などを取り扱う小売店などとの直接契約に限られてしまうでしょう。
また植物工場などで簡単に栽培できる水耕栽培と違い、土壌栽培であるマイクログリーンは、温度や日光調整が必要になり、手間とコストがかかると言われています。経営面でみると、手間とコストがかかり、鮮度が持たないとなるとデメリットだらけのようにも思えてしまいますが…。
■消費者の食への安心・安全志向にも答えられる
農業経営において、マイクログリーンの難点はビジネスとして成り立たせるには少々ハードルが高いように感じます。しかしブームの発端であるアメリカでは、このブームによって通常の野菜栽培からマイクログリーンに切り替える農場が増えていると言われています。
その理由は「消費者の食への安心・安全志向に答えるため」です。遺伝子組み換え食物や化学農薬・肥料をNGとする取り組みの一環として、マイクログリーンに着手する農家もいるのです。簡単に儲かるとは言えない農作物ではありますが、これからの農業を表す代表的な野菜の1つになるかもしれませんね。
■生産者と消費者を結ぶ取り組みの大切さ
そんなアメリカであっても、マイクログリーンの出荷先はオーガニックな取り組みを行っているスーパーマーケットやレストランへの直接出荷で、一般家庭に浸透するのはまだまだ先の話かもしれません。
ただ、マイクログリーンそのものは、必要な管理さえ行えば消費者自身が育てることもできます。そこで農業体験の一環として、生産者から消費者へマイクログリーン栽培を教えるビジネスができないでしょうか。栽培方法を教え、消費者自身が育てられるようになれば、マイクログリーンも将来的に身近な野菜になるかもしれません。
またマイクログリーンも、以下のような取り組みの直売所でなら広がるかもしれません。
「エマリコくにたち」が運営する東京都国立市の直売所「しゅんかしゅんか」は、その日に売るものだけを、その日に集荷します。市場に出荷している人以外の流通網が発達していないことに気づき、地域の生産・販売・消費をつなげたエマリコくにたちですが、「その日に売るものだけを、その日に集荷」というシステムはマイクログリーンにぴったりと言えます。
手間とコストがかかり、鮮度が持たないというデメリットもあるマイクログリーンですが、安心・安全志向、健康志向の高い人には需要があるでしょう。
栽培方法を教えるサービス、もしくはマイクログリーンの条件に見合う直売所などとの契約、全く取り組めない野菜ではないと考えています。興味のある方はぜひ注目してみてください。
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