異常気象など天候不順が相次ぐ昨今、気候の影響を受けにくいと言われている「施設栽培」に興味が抱いている人もいるのではないでしょうか。
「施設栽培」なら、自然界の影響を受けにくいという点だけ出なく、その作物が市場に出にくい時期にも育てられる利点がありますから、栽培方法のひとつとして注目し続けている農家さんも少なくないはずです。
そこで本記事では、施設栽培に欠かせないビニールハウスや、昨今広く浸透している水耕栽培に着目し、そのメリット・デメリットについて解説していきます。
ビニールハウスのメリット・デメリット
ビニールハウスのメリット・デメリットについて、同一作物を栽培するという条件で露地栽培と比較してみましょう。
<露地栽培のメリット>
・作物を育てる面積を広げるのが容易
・ハウス栽培と同一面積で比較すると、低コスト
・連作障害が出やすい作物であっても、場所を変えるだけでOK
<露地栽培のデメリット>
・作物の最適時期以外に育てることができない
・天候による影響を受けやすい
・病害虫の被害を受けやすい
<ビニールハウスのメリット>
・1年を通して栽培することができる
・旬の季節を外して収穫することもできるため、高値が狙いやすい
・保温や遮光をすることで、作物に適した温度等を調整可能
・天候や病害虫による被害を受けにくい
・病害虫発生を抑えやすいため、農薬利用の回数を減らすことができる
<ビニールハウスのデメリット>
・ビニールハウスの建設にコストがかかる
・作物を広い面積で育てようとすると、コストがかかる
・同じ場所で農作物を作り続けることになるため、連作障害が起きやすい
・台風などによって倒壊の恐れがある
・ビニールハウスのメンテナンスにコストがかかる
ビニールハウスは、コスト面でのデメリットが目立ちます。どの栽培方法にしても意識すべきことですが、新しい栽培方法に投資する場合には、必ず収支シミュレーションを行いましょう。
水耕栽培のメリット・デメリット
ビニールハウスを活用した「施設栽培」では、安定した生産を目的に始める人が多いのではないでしょうか。そんな「施設栽培」を志す人にとって、水耕栽培は利点ある栽培方法と言えるはずです。ただし、デメリットももちろんありますが。
<水耕栽培のメリット>
・土を使わない栽培のため、土壌に関する病害発生リスクがない
・肥料などをコントロールして栽培することができる
・土が使えない場所でも栽培が可能
・広い畑がなくても栽培が可能
元々、農作物の栽培に適していない場所でも育てることができる栽培方法ですから、都市などの、広い農地を用意できない場所での農業に活用されている印象です。
<水耕栽培のデメリット>
・農作物を育てるのに重要な培養液のコントロールに技術が必要
・停電や断水などが起きた時に、栽培できないリスクがある
・土壌に関する病害リスクは低いが、培養液を介した病気の発生が考えられる
AIなどを駆使したスマート農業との相性が抜群に感じられる水耕栽培。システムに栽培管理を任せることで、農業に携わってこなかった人でも農作物を育てることができると注目を集めています。しかし地震や台風といった自然災害で停電が起こることも十分考えられます。「停電でシステムが作動しなくなったら・・・」もしものリスク管理が必須になってしまうのがネックですね。
注目されているビニールハウス・水耕栽培
メリットもあればデメリットもあるビニールハウス・水耕栽培ですが、高齢化や後継者不足に関する話題が目立つ農業界の今後において、必要不可欠な技術なのではないでしょうか。
農業ベンチャー企業であるグリーンリバーホールディングス株式会社は、アメリカで開発された「縦型水耕栽培装置」をベースに、独自の技術を加えた葉菜類栽培装置の販売を開始しています。水耕栽培装置を縦型に設置することで、ビニールハウスのデメリットでもある「広い面積で育てにくい」をクリアすることにもつながります。またIoTを活用することで、遠隔地のビニールハウスを制御することもできます。
水耕栽培のデメリットとして挙げた、停電等のリスクは常に意識する必要はあります。また新規就農者がIoTの栽培管理に頼りすぎてしまい、システムが使えなくなったときにリカバリーできないのでは困ってしまいます。
しかしビニールハウスと水耕栽培、そして近年のIoT技術が、就農への敷居を下げてくれているのは確かなのではないでしょうか。