オリンピックと日本の農業について

オリンピックと日本の農業について

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2020年の東京オリンピックに向けて関係各所では様々な作業が進んでいます。オリンピック関係施設の建築はその代表例でしょう。
しかし、選手たちにとって施設と同じくらい、またはそれ以上に関心がある問題は『食事』ではないでしょうか?
北京オリンピックでは中国産の食品に懸念を持つ選手団が自国産の食品を持ち込むことを検討していることがニュースになりました。
オリンピックと『食』の問題について、日本の現状はどうなっているのでしょうか?

 

東京五輪で日本の食材を提供できない可能性がある

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日本人は生で食物を食べる習慣があるせいか、食品の安全性には消費者レベルで厳しい視線が向けられており、行政においても民間の需要に応えるように厳しい基準を定めています。
「安全な日本産の食品なら選手たちも安心だ」と考えている日本国民も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、日本産の食材をオリンピックで提供することができない可能性があるのです。
2012年のロンドン五輪から、オリンピックやパラリンピックで使われる食材には『グローバルGAP』の認証が必要だと定められました。
グローバルGAPを取得している日本の農家はごく少数です。グローバルGAPの取得率が低いために、日本産の食材が2020年の東京五輪で使えないかもしれないのです。

 

グローバルGAPとは?

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GAPとはGood Agricultural Practicesの頭文字です。
農業の環境的、経済的、社会的な持続性を目指す取り組みのことをGAPと言います。
GAPを適切に進めた結果、安全かつ高品質の農産物が生産されるということになっています。
グローバルGAPはGAPの取り組みを国際的に進めたものです。農家がグローバルGAPの認証を受ければ、収穫した農産物が安全かつ高品質であると国際的に認められる事になります。
グローバルGAPを取得すればその農家の作った農産物が国際競争力を持つため、行政側でもグローバルGAPの取得を推進しています。
しかし日本での認証件数は少なく、全農家の1%程度しかグローバルGAPを取得していません。

 

グローバルGAPを取得するためには

グローバルGAPの認証を受けるための大まかな流れは以下のようになります。

1.グローバルGAPのチェックリストを入手し、チェックリストの要件を満たす
グローバルGAPに問い合わせてチェックリストを入手し、農作物の作り方が要件に適合しているかを確認します。
チェックリストの内容は多岐に渡るため、ここで挫折する農家も多いようです。

2.認証審査会社に審査してもらう
自分でチェックリストの内容を満たしていると確信したら、認証審査会社に本審査を申し込みます。
認証審査会社は農家がグローバルGAPの条件を満たしているかを厳しく確認します。

3.審査内容を受けて修正
審査の結果、不足のある部分に関しては指導を受けることになります。
農家は指導の内容に沿って農作物の生産プロセスを修正します。

4.承認
修正した内容で問題なければ、無事にグローバルGAPを受けられます。

 

青森県立五所川原農林高校が取得した事例

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青森県立五所川原農林高校では「若い世代に世界の扉を開いてほしい」という教育方針からグローバルGAPチームを結成し、高校生がグローバルGAPを取得するための試みが行われてきました。
その甲斐あって、2015年にリンゴにおいて日本の高校初となるグローバルGAP認証を取得しました。
翌2016年にはコメについてもグローバルGAPを取得し、大きな話題となりました。

 

グローバルGAP取得のメリット、デメリット

メリット

1.販路拡大
グローバルGAPは安心な食品の国際基準です。輸出する際には相手国からグローバルGAPの取得を求められることがあります。
輸出をしなくてもグローバルGAPを取得していれば生産者の信頼性をアピールできます。販路の拡大にグローバルGAPが一役買うことになるのです。

2.生産性アップ
グローバルGAPの認証を受ける過程で生産工程が明確化されます。これによって無駄なコストを見つけやすくなり、コストの低減効果を得られます。
また、生産工程を他者に伝えやすくなるため、新しい人を雇ったときでも作業のマニュアル化がしやすくなります。
結果として効率的な農業を行えるようになり、生産性が向上するとされています。

デメリット

1.時間がかかる
グローバルGAPの認証には最短で1~2年かかります。
チェックリストの内容に併せて生産工程を修正する時間を考慮すると2年を超える期間が必要なケースも多く、その間は通常の業務に加えて認証を得るための仕事に追われることになります。

2.お金がかかる
グローバルGAPの認証には審査のために260万円近いお金を支払う必要があります。
認証基準を満たす農法を続けるための投資や維持費も発生するため、一般の農家がグローバルGAPを取得するには金銭的な高いハードルを超えなければなりません。

 

まとめ

せっかく東京でオリンピックが開かれる以上、選手には国内産の食材を味わって欲しいというのが日本人の総意ではないでしょうか?
しかし現状では、輸入食材に頼らざるを得ない可能性が高くなっています。グローバルGAPを取得した農家の育成は急務と言えます。
国は補助金を出すなどの施策を取っていますが、五輪までの時限措置のものもあり、せっかくグローバルGAPを取得しても五輪が終わってしまったらグローバルGAPの基準を維持できなくなる農家も出てしまうと言われています。
グローバルGAPにはメリットも多いので、取得に興味がある人は『一般社団法人GAP普及推進機構/GLOBALG.A.P.協議会』までお問い合わせください。

 

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