今こそ知っておきたい「備蓄米制度」の意義。

今こそ知っておきたい「備蓄米制度」の意義。

2020年3月27日の日本農業新聞の記事に「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、東京都が行った週末の外出自粛要請により、米の買いだめが起きている」とありました。

4月7日には、東京など7都府県を対象に「緊急事態宣言」が出されました。原則として大手スーパーやコンビニは営業を続け、食品メーカーの在庫も多くあることから、食料品の供給が突然途絶えることはありません。そのため消費者に対し、買いだめをしないよう、呼びかけが続いています。

冒頭で述べた米については、3月27日の時点で、

  • 日本政府が保有する備蓄分 約100万トン
  • 民間在庫(農協・卸売業者等が保有) 約280万トン

あり、需要量の約半年分にあたると言われています。

本記事で着目するのは、日本政府が保有する備蓄分についてです。

 

 

備蓄米制度の意義

今こそ知っておきたい「備蓄米制度」の意義。|画像1

 

日本には、消費者にいつでも米を供給できるよう「備蓄米制度」があります。

平成5年に不作が起きた際、消費者が米を求め、スーパー等に殺到する出来事がありました。「備蓄米制度」は、その経験をふまえ、平成7年に制度化されたものです。

日本政府は100万トン程度の米を備蓄しています。「100万トン」という数値は、10年に1度の大凶作や不作が2年続いたときにも対処できる水準として設定されたもの。毎年播種前に20万トン程度買い入れ、5年持越米になったものは飼料用等として売却する、という流れで運用されています。

しかし近年、人口減少や食生活の変化により、主食用米の需要量が減少傾向にあったり、備蓄米を確保したい国が設定した「都道府県別優先枠」や高値での買い入れに、食品業界や小売業から反発や懸念の声があがるなど、備蓄米制度を再考すべきではないかという状況が続いていました。

また生産者側が、米の価格が上昇していることから、備蓄米の作付ではなく、より高く売れる主食用米の生産(外食業者やせんべい、酒などの加工に需要が多い)を優先し、国が備蓄米の買い入れを思うようにできない時期も続いていました。2018年以前の過去4年は、予定量(20万トン)の9割強を確保できていましたが、2018年産は6割弱(11万7000トン)という結果に。

とはいえ、毎年約20万トンを買い入れる政府の存在は、米農家にとって安定した販売先でもあります。「米の買いだめが起きている」記事があがった3月27日、農林水産省は備蓄米の買い入れが4年ぶりに上限(20万トン)に達したと公表しました。

その背景にあるのは、やはり新型コロナウイルス。「主食用米の需要が一段と細る」という観測が挙げられていました。外食業界が営業自粛を求められているところを考えると、理解しやすいのではないでしょうか。

この非常事態が起こる前までは、消費者の米離れにより、備蓄米制度の意義が危ぶまれていたようにも思えました。しかし今は、国の備蓄米と民間在庫のおかげで、需要量の約半年分の米が確保されているのだと思えます。

 

 

新型コロナウイルスによる穀類価格への影響

今こそ知っておきたい「備蓄米制度」の意義。|画像2

 

2020年4月3日、日本農業新聞に「新型コロナによる食料生産国の輸出制限」という記事が掲載されました。小麦や米などの輸出制限措置を導入した国が増えつつあります。

ただ農林水産省は「このような措置を導入した国からの輸入実績は大きくないため、影響は限定的」と見ています。

とはいえ世界各国が輸出制限措置を導入したのは、国内の食料安全保障を優先するため。

一向に収束する気配のない新型コロナウイルスに対して、日本も、万が一食料品の供給が滞った際は、備蓄米制度を活用し、中小農家などを支援する等して、国内の食料安全保障に努めてほしいものです。

 

参考文献

  1. [新型コロナ] 「米の在庫十分」業界は冷静な対応呼び掛け 東京都の外出自粛要請で 日本農業新聞
  2. 新型コロナウイルス感染症について 農林水産省
  3. 米の備蓄について 農林水産省
  4. 米をめぐる関係資料 平成30年7月 農林水産省
  5. 政府備蓄米、20年産は4年ぶり全量落札 日本経済新聞
  6. 農林水産省が管理する備蓄米。近年の備蓄状況は? Grow Ricci

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