農林水産省が管理する備蓄米。近年の備蓄状況は?

農林水産省が管理する備蓄米。近年の備蓄状況は?

備蓄米とは、その名の通り「緊急時に備えて蓄えておく米」のことです。

1994年、主要食糧の受給及び価格の安定に関する法律で条項として定められました。これは1993年に起きた「平成の米騒動」(記録的な冷夏により米の供給が不足した)の経験をふまえたものであり、また豊作時の供給過剰を防ぐ、調整保管の意味合いも込められています。

農林水産省HPにある「こどものそうだん」によると、現在国は100万トン(10年に1度の不作にも備えられる量)を備蓄しているとのこと。またコメ不足が起きなかった場合には、5年の貯蔵が過ぎたコメを主食以外の用途(飼料用など)で販売することになっています。

 

 

備蓄米のメリット・デメリット

農林水産省が管理する備蓄米。近年の備蓄状況は?|画像1

 

備蓄米は、災害や大凶作が起きたときに消費者に安定して米を供給することを目的にしています。そのため備蓄米のメリットは、備蓄米の目的そのものと言えるでしょう。

しかし近年、人口減少や食生活の変化により主食用米の需要量は減少傾向にあります。農林水産省は消費減退の加速が避けられないと判断し、需要見通しを見直しました。毎年の需要量の減少ペースは約8万トンと算出されています。備蓄米のメリットが消費者のために活かされるときは来るのでしょうか。

 

近年、日本の備蓄米は不足しがち?

また、近年は米の価格が上昇傾向にあり、産地はより高く売れる主食用の生産を優先しています。そのため、国は備蓄米の買い入れを思うようにできていないのが現状です。

国は毎年20万トンを5年に分けて買い入れて備蓄しています。2018年産以前の過去4年は、2回の入札で予定量の9割強を確保できていました。しかし2018年産は4回目の入札でも6割弱(11万7000トン)という結果に。

実際、コメ農家目線で考えてみれば「高く売れる」ことのほうが重要です。主要米の需要が多い外食業者向け、せんべいや酒などに使用する加工向けに力を入れる農家がほとんどです。

1年前のデータにはなりますが、2018年1月末に行われた都道府県別の調査によると、29県が備蓄米の作付けを前年より減らす計画をしており、備蓄米を増やそうと考える地域は0という結果になりました。

 

備蓄米の備蓄状況推移

備蓄米の備蓄状況について、古いデータにはなりますが、平成28年6月末と平成29年6月末の備蓄状況を示したデータをご紹介します。

平成28年と平成29年の時点では、在庫量は共に91万トンをキープしています。しかし平成29年6月末の備蓄米の中で、

  • 平成26年産 25万トン
  • 平成27年産 25万トン
  • 平成28年産 22.5万トン

と平成28年産が減少している様子がわかります。

先述でも紹介した2018年産においては、最終的な落札量が12万3000トンとなり、5年ぶりに低水準となりました。備蓄米が不足しがちであることがわかります。

 

備蓄米確保の改善策としての都道府県別優先枠

そこで政府は備蓄米を確保するために「都道府県別優先枠」を設定しました。取引を活性化させるために設置した「優先枠」では、一般枠よりも比較的高い価格で買い入れることになります。

とはいえ、1回目の入札は落札量1万7628トン。落札率8.4%となった初回の入札は、低調だった18年産の初回の入札と同率となりました。日本農業新聞の報道では、“産地には様子見が目立った”と書かれています。

 

落札数量の積み上げを狙う新たな入札改善

備蓄米を求める国は、落札量向上のために入札方法を改善しています。

今まではJA等の入札者が個々の農家を訪問し、どれだけ備蓄米を出すかを聞き出し、同意を得てから入札していました。

主食用米の需給バランスを安定させるため、備蓄米の推進を重視した農林水産省は、入札方法を改善。今後(第5回の入札から)、JAなど入札者は個々の農家の同意を得ることなく、自らの判断で備蓄米の入札量を決めることができるようになりました。

 

 

まとめ

農林水産省が管理する備蓄米。近年の備蓄状況は?|画像2

 

備蓄米は、災害や大凶作に見舞われたとき、消費者に安定して米を供給できるだけでなく、米の市場価格を調整する役割も担っています。

しかし、備蓄米によって需要が減退する恐れも考えられます。備蓄米を確保したい国が設定した「都道府県別優先枠」について、食品業界から反発の声があがっています。4年連続で米の価格が上昇し、その一方で消費者の米離れが進んでいる昨今。政府が高値で買い入れすることによって「店頭価格がさらに上がるのでは?」と小売業からは懸念の声も。

今後の動向を知るためにも、まずは2019年の備蓄米の動向をチェックしておきましょう。

 

参考文献

  1. 備蓄米 コトバンク
  2. 備蓄米制度(びちくまいせいど)は何年から始(はじ)まったのですか。 こどものそうだん 農林水産省
  3. 米需要見通し算定 「年8万トン減」 見直し 人口減踏まえ検討 農水省 日本農業新聞
  4. 政府備蓄米、予定量の6割弱 18年産 価格上昇で産地が主食用優先 SankeiBiz
  5. 17 政府備蓄米の在庫の状況 – 農林水産省
  6. 備蓄米入札きょうから TPP対策で9000トン上乗せ 「優先枠」の効果 焦点 日本農業新聞
  7. 備蓄米 落札8・4%止まり 19年産第1回 優先枠でも様子見 日本農業新聞
  8. 備蓄米、政府が高値買い入れ TPP対策に食品業界反発  日本経済新聞
  9. 備蓄米 入札改善16日から JA・商系が数量判断 日本農業新聞

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