J-クレジット制度とは。いまさら聞けない!?「カーボン・オフセット」「クレジット」についても紹介。

J-クレジット制度とは。いまさら聞けない!?「カーボン・オフセット」「クレジット」についても紹介。

J-クレジット制度とは

省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度

引用元:Jークレジット制度とは | J-クレジット制度

のことです。

本記事では、J-クレジット制度の背景、目的、また大きな関わりのある「カーボン・オフセット」や「クレジット」の意味、現況についてご紹介していきます。

 

 

J-クレジット制度の背景・目的

J-クレジット制度とは。いまさら聞けない!?「カーボン・オフセット」「クレジット」についても紹介。|画像1

 

この制度の背景にあるのは、温室効果ガス排出量を削減するための取り組みです。

J-クレジット制度事務局が平成25(2013)年8月に公開した資料『J−クレジット制度について』によると、日本の温室効果ガス排出のうち、約9割がエネルギーを起源とする二酸化炭素(以下、CO2)です。

古い情報にはなりますが、同資料によると、2011年度は1990年度に比べ、産業部門の排出量は大幅に減少したものの、民生部門(産業を除く業務その他、家庭)の排出量は大幅に増加しています。

民生部門の排出量削減に向けた日本の取り組みには以下のものが挙げられます。

  • エコポイント等、環境に配慮した行動に応じた経済的インセンティブ(Incentive:直訳すると「報奨」「奨励」「刺激」「動機づけ」など)を付与する
  • 「カーボン・オフセット」の普及を推進
  • 省エネ家電製品の普及を促進

J-クレジット制度と大きく関わりを持つのが「カーボン・オフセット」です。

カーボン・オフセットとは

日常生活や企業等の活動で、どんなに努力をしても発生してしまうCO2(=カーボン)を、森林による吸収や省エネ設備への更新により創出された他の場所の削減分で埋め合わせ(=オフセット)する取組

引用元:カーボン・オフセットに使う | J-クレジット制度

のことです。

J-クレジット制度ホームページにはカーボン・オフセットの具体的な取り組みとして「CO2ゼロ会議」などが紹介されています。「CO2ゼロ会議」は、会議や打ち合わせを行う際に発生するCO2を算定し、CO2排出量を減らす努力をしても出てしまう分をJ-クレジットでオフセット(埋め合わせ)することで、CO2排出量を実質ゼロにするというものです。

カーボン・オフセットの仕組みで重要なのは以下の3点です。

  1. CO2排出量を「知る」
  2. CO2排出量を努力して「減らす」
  3. それでも発生してしまうCO2排出量を「オフセット(埋め合わせ)」する

実は、日本では2008年11月からカーボン・オフセットの仕組みを活用した制度が開始されていました(国内クレジット制度とオフセット・クレジット(J-VER)制度)。

J-クレジット制度は上記2つの制度を一本化したものです。

「クレジット」とは

J-クレジット制度では

  • 省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量
  • 適切な森林管理によるCO2等の吸収量

が「クレジット」として国から認証されます。

「クレジット(credit)」は英語で「信用」を意味します。辞書を引くとこのように表されます。

1 国際金融で、短期または中期の借款。
2 信用貸しによる販売または金融。信販・月販・消費者金融など。
3 新聞・書物・写真などに明記する著作権者・原作者などの名前。
4 「クレジットタイトル」の略。
5 地球温暖化対策の取り組みで、政府間や企業間で取引される、温室効果ガスの排出権。カーボンクレジット。炭素クレジット。「オフセット・クレジット」。

出典元:小学館 デジタル大辞泉

J-クレジット制度の「クレジット」は上記5の意味に記載されている「オフセット・クレジット」にあたります。

オフセット・クレジットとは

温室効果ガスの排出削減量や吸収量を、市場で取引できるように数値化したもの。カーボンオフセットに用いられる。省エネルギー設備の導入や再生エネルギーの活用、あるいは植林・森林保護等の活動を通して創出され、企業・自治体・個人などが自らの努力では削減できない排出分を相殺するために購入する。

出典元:小学館 デジタル大辞泉

という意味です。

 

 

クレジットをつくる・購入する、メリットと取組事例

J-クレジット制度とは。いまさら聞けない!?「カーボン・オフセット」「クレジット」についても紹介。|画像2

 

J-クレジット制度では、クレジットを創出する側と購入する側に以下のメリットが挙げられます。

クレジットをつくるメリット

  • クレジットの売却益が得られる
    クレジットを温室効果ガスを排出する側の企業へ売却すると、売却益を得ることができます。またクレジット売却益で設備投資の一部を補えば、設備費用の回収やさらなる省エネ投資に活用できます。
  • 地球温暖化対策への取り組みに対するPR効果が期待できる
    自主的なCO2排出量削減や吸収プロジェクトを実施することで、地球温暖化対策に積極的な企業、団体としてPRできます。

クレジットを購入するメリット

  • 環境貢献企業としてPR効果が期待できる
  • クレジット購入をPRすることで、企業評価の向上につながる
  • 製品・サービスの差別化・ブランディングに利用できる
  • クレジット購入を通して企業や地方公共団体とのビジネス機会や新たなネットワークを獲得できる

J-クレジット制度ホームページには、クレジットをつくる・購入するについての取組事例が紹介されています。最もわかりやすい事例を一部抜粋して紹介します。

まず、クレジットをつくる事例について。菊正宗酒造株式会社が行った内容は「省エネ設備の導入」です。工場で使用していたボイラーを灯油から都市ガスに変更したことで、CO2排出量を削減しました。また、菊正宗酒造がつくったJ-クレジットはガス転換事業を進めている大阪ガスが購入しています。そうすることで、菊正宗酒造は投資費用の一部を抑えることができ、大阪ガスは購入したJ-クレジットを使って、さまざまなイベントなどでカーボン・オフセットに取り組んでいます。

クレジットを購入する事例はよりわかりやすいです。たとえばイオン株式会社の事例では、植物由来原料を55%使用した持ち帰り専用買い物カゴ「マイバスケット」によって、カゴを作り、使い、捨てる際に生じるCO2排出量をオフセットしています。

なお、クレジットの認証・発行には、

  1. プロジェクトの登録
  2. モニタリング(削減量や吸収量を算定するための計測等)

の2つのステップがあります。

第1段階であるプロジェクトの登録では、まず「どんなCO2排出削減/吸収事業を実施するか」を記載したプロジェクト計画書を作成します。

 

 

農業分野におけるJ-クレジット制度の現況

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農林水産省のHPによると、2022年10月末現在、旧制度からの移行を除いたJ-クレジット登録プロジェクトは436件登録されています。2023年3月22日にJ-クレジット制度ホームページを閲覧したところ、J-クレジット登録プロジェクトは446件と10件増加しています。

2022年10月末の時点で、農林水産分野のプロジェクトは全体の約30%を占める131件であり、その内訳を見ると、農業分野は11件となっています。

農林⽔産分野の登録プロジェクトの内訳
農業分野 11件
⾷品産業分野 28件
⽊材産業分野 24件
森林管理 65件
⽔産業分野 1件
その他 2件

出典元:農林水産分野の取組:農林水産省

農業分野の登録プロジェクト11件の概要を簡潔にまとめた表を以下に記載します。

農業施設関連 空調設備の新設・更新
化石燃料の代替(バイオマス固形燃料など)
再生可能エネルギー熱を利用する熱源設備の導入 など
農場関連 家畜排せつ物管理方法の変更
農家関連  バイオ炭の農地利用

農林水産省のHPでは、CO2の排出削減・吸収に関する技術や登録プロジェクト概要、取組事例などを閲覧することができます。

制度の内容や申請手続きにおいて、やや複雑に感じられる部分もありますが、気になる方は農林水産省が公開しているリーフレット「J-クレジットのすすめ」にぜひ目を通してみてください。

 

参考文献

  1. J−クレジット制度について
  2. 農林水産分野のJ-クレジット制度
  3. J-クレジット制度とは温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。 J-クレジット制度
  4. 農林水産分野の取組

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