平成31年1月から「収入保険制度」が始まりました。2017年6月に、農業災害補償法の一部を改正する法律案が可決されたことで創設された「農業経営収入保険事業」。新しく導入されたこの保険制度では、農業収入そのものが補填されます。
収入保険とは?
収入保険とは“品目の枠にとらわれず、自然災害による収量減少だけでなく、価格低下なども含めた収入減少を補てんする保険”です。
収入保険、注目すべきポイント
収入保険は既存の保険制度よりも有利な部分が多く、農業経営者の間で注目を集めています。収入保険で注目したいポイントは、
- 品目の限定は、基本的にない
- さまざまな原因による収入減少をサポート
という点です。
まずこの保険は品目によって限定されることが基本的にはありません(肉用牛、肉用子牛等はマルキン※等が措置されているため対象外)。
それから、収入減少へのサポート。補償の対象には、
- 自然災害で収量が減少したことによるもの
- 価格低下
- 為替変動
- 怪我や病気
- 収穫後、保管中に発生した事故
が挙げられます。自然災害による収量減少での収入減少はもちろんのこと、農作物の価格低下など「経営努力だけではどうにもならない」収入減少も補償してくれます。
※マルキンとは、日本の畜産業者を対象にした公共事業の通称。肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)や養豚経営安定対策事業(豚マルキン)など、畜産農業経営や畜産物の価格安定を目的に、市場の状況によって国庫積立金から補てん金を交付する制度がある。
収入保険制度の対象者
収入保険制度に加入できるのは、最低でも1年間「青色申告」を行なっている農業従事者です。収入保険制度は農業収入を補てんする内容のため、加入する人の正確な収入を把握しなければなりません。そのため青色申告実績がある人が対象となります。青色申告であれば、簿記方式は簡易でも複式でもOKです。
収入保険制度の補てん方式
加入者の過去5年間の農業収入の平均と保険期間中の営農計画を考慮した額が「基準収入」として設定されます。その年の収入が、基準収入の9割を下回った場合、下回った額の9割が補てんされます。
例えば基準収入を500万円とします。そのうちの9割(450万円)が補てん対象です。
ある年の収入が300万円だった場合、下回った額の9割が補てんされるため、補てん対象額は下回った額(450万円ー300万円)×9割=135万円です。
ある年の収入が仮に0円だったとしましょう。その場合には下回った額(450万円ー0円)×9割=405万円が補てんされます。
加入と支払いについて
収入保険制度に加入する場合には、保険料と積立金を支払う必要があります。
保険料は掛捨てで、保険料率は保険料率は1.08%です(保険料は国が50%補助)。自動車保険のように、保険金の受取りがなければ、翌年の保険料率が下がっていく仕組みとなっています※1。積立金は補てんに使われない限り、翌年に持ち越されます(積立金は国が75%補助)。なお保険方式のみにすると掛け金を少なくすることができます※2。
※1参考文献:収入保険の加入者に納付していただく保険料等について
※2参考文献:収入保険の掛金のことで加入を悩んでいらっしゃいませんか?
収入保険と類似制度、どちらが合っているかシミュレーションしよう
収入保険制度以外のものに、内容がよく似たものがあります。
- 農業共済
- 収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)
- 野菜価格安定制度
- いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策
- 加工原料乳生産者経営安定制度
これらと収入保険制度を重複して加入することはできません。ただ、収入保険制度への加入を考えたとき「類似制度の方が自分には適しているのでは?」と悩むこともあるでしょう。そこでおすすめなのが全国農業共済組合HPに掲載されているシミュレーションです。このシミュレーションでは、収入保険と類似制度の掛金、補てん金などを比較することができます。どの制度が一番適しているかぜひシミュレーションしてみてくださいね。
収入保険に関する相談窓口は?
全国農業共済組合連合会の各窓口で受け付けています。上記で紹介したシミュレーションもおすすめですが、相談窓口で詳細な説明を受けることもおすすめですよ。
なおYouTubeでは保険課長による『新10分で分かる収入保険のポイント』が配信されています。こちらもぜひチェックしてみてくださいね。
参考文献