農家の高齢化や労働力不足などで年々増え続ける耕作放棄地。
放置すると、景観を損なう、野生動物や害虫が多発するなどの問題が深刻になっています。そういった耕作放棄地の早期解消や、地域を支える担い手のために、分散した小農地を集積・集約化し、担い手ごとにまとまった規模の農地を利用できるようにしているのが農地中間管理機構です。
この記事では「農地中間管理機構」とはどのような組織なのか、制度の利用の仕方、制度を実際に利用している農家の声などについてご紹介します。
農地中間管理機構とは
農地中間管理機構は「10年後の担い手の農地利用を全農地の8割にする」という目標を掲げて平成26年に全都道府県に設置されました。
その具体的な活動内容は、地域内で各担い手が利用している分散した小農地や耕作放棄地を中間管理機構が一旦借り受け、整理・集約してそれぞれの担い手ににまとまった農地を貸付することです。
取り組みの事例は全国各地さまざまで、市町村と農業委員会が中心となってすすめるケース、地域の農地集約に伴い担い手が集まって行政の支援を受けながら農業法人を設立するケースなどもあります。
農地中間管理機構を利用するメリット
制度を使用すると、貸し手と借り手それぞれに以下のようなメリットがあります。
貸し手のメリット
・所有農地が耕作放棄地になる心配がない
・賃料が確実に支払われる
借り手のメリット
・契約が一本化され、複数の農地の所有者と個別にやりとりする必要がなくなる
・集積された農地の利用で作業効率がアップする
・地域に入って間もない新規就農者などでも農地が借りやすい
農地中間管理機構の利用の仕方
農地中間管理機構の制度を利用して農地を貸し借りしたい場合は、各都道府県に設置された機構、または最寄りの市町村役場に相談しましょう。申し込み方法は概ね以下のような手順になります。
農地を貸したい場合
貸付希望申出書を財団のホームページから印刷するか市町村の窓口でもらい、必要事項を記入し、市町村に提出。機構で借り手とのマッチングを行い、受け手が決まれば機構集積協力金が支払われる。ただし、借り手が決まるまでは自分で農地を管理する必要がある。
農地を借りたい場合
まずは機構が行う各地域の借受け希望者の募集に応募する。応募者のリストは機構のホームページなどで公表されることも。マッチングが行われ、契約が成立すれば利用権が設定される。農地の賃借料については各地域の機構によって設定が異なるため確認が必要。
<各都道府県の農地中間管理機構一覧>
http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/kikou_ichran.html
農地中間管理機構の制度を実際に利用してみて
ここでは静岡県西部地区で農地中間管理機構の制度を実際に利用されている農家さんの事例をご紹介します。
Q.農地中間管理機構を利用しようと思ったきっかけは?
A.私の場合は、以前から農地を借り受けていた地区全体が中間管理事業の対象となったことがきっかけです。市の農林水産課の方から制度の説明があり、バラバラの農地を集積したり、追加でまとまった農地を借りる意志があるかどうか希望を聞かれました。その地区ではもともと30aの畑を借りていましたが、制度を利用して80aまで増やすことができました。
Q.制度を利用してみて、よかったことは何ですか?
A. やはり農地の所有者の方と個別にやりとりしなくて済むのはとても助かります。全部で11名の方から農地をお借りしているので。また、田舎の人はまったく知らない人には土地を貸したがりませんが、機構を通すのでもともと面識がなかった方からもすんなり貸していただくことができました。
Q. 逆にこの制度を利用してみて大変なことはありましたか?
私が参入したのは、その地域で中間管理事業の制度を導入した初年度だったので、役所・JA・地域の関係者の方たちと私たち借り手の間で、今後の貸し借りのマッチングの方法や耕作開始のタイミングをどのようにすすめていくか等々について、何度も話し合いの場が設けられました。農業はそれぞれの地域に根ざした独特のものなので、事業のすすめ方も地域ごとに少し変わってくるのではないでしょうか。
現在は事業が軌道にのったので、年に一度関係者の集会があるだけです。ただし、自治体の草刈りやどぶさらいの時期に合わせて、自分たちも作業しなければいけません。また、賃借の契約期間が10年と長期なので、一旦お借りした農地は気軽に返せないこともちょっとプレッシャーがあります。
まとめ
農地中間管理機構の制度がどのようなものかおわかりいただけたでしょうか。中間管理事業は貸し手にとっても借り手にとっても、それぞれにメリットがある制度です。所有する農地が手に負えなくなり困っている方や、これからバリバリ規模拡大したい若手農業者のみなさんは、ぜひ機構の制度の利用を検討してみてください。