農業者なら広く加入することができる「農業者年金」。しかし名前は知っていても、どんな特徴があるのか、どんなメリットがあるのか、よくわからないという人も少なくないのでは?
そこで本記事では「今さら聞けない『農業者年金』」と題し、農業者年金の特徴についてまとめていきます。
農業者年金とは
農業者年金は、国民年金に上乗せすることで、将来受け取ることができる年金額を増やすことを目的につくられた、国が運用する公的な年金です。法人化していない(厚生年金がない)農業者で「将来国民年金だけでは生活が不安」という場合には、検討しておくとよいでしょう。本記事の最後には、農業者年金と同じ確定拠出型の「iDeCo(個人型確定拠出型年金)」との違いについてもまとめます。
農業者年金の特徴
6つのポイント
農業者なら広く加入できる
少子高齢時代に強い積立方式・確定拠出型の年金
保険料は自由に決められる
終身年金。80歳前になくなった場合には死亡一時金あり
税制面で大きな優遇
保険料の国庫補助
農業者年金は、
- 年間60日以上農業に従事している
- 「国民年金第1号被保険者」(保険料納付免除者を除く)
- 60歳未満
の人であれば加入可能です。
毎月支払う保険料は2万円〜6万7千円までの額を千円単位で自由に設定することができます。もし経済的な理由などで月2万円の納付が厳しい場合でも、国が1万円(保険料の半分)〜4千円を補助してくれるのも特徴です※。
※国の補助を受ける場合には、以下に示す条件や制約がつきます。
<条件>
加入期間20年以上が想定されるため、39歳までに加入すること。
農業所得(配偶者や後継者の場合は支払いを受けた給料等が)900万円以下。
認定農業者で青色申告者またはその者の配偶者や後継者など、「保険料の国庫補助対象者と補助額」の表の必要な要件のいずれかに該当する者であること。<制約>
積立金と運用益の受給は65歳から可能。ただし国が補助した金額分と運用益は、保険料の納付期間が20年以上、農業引退(経営継承等)をしてからの受給となる。
補助を受ける期間の保険料、補助の合計額は2万円で固定される。
補助期間は最大で20年。
農業者年金のメリット
まず少子高齢化に強い積立方式であることがあげられます。
かつての農業者年金は現役世代が引退世代を支える構造で成り立っていましたが、少子高齢化が進んだことで成り立たなくなってしまいました。しかし将来のために自ら積み立てていく制度に変わったことで、農業者年金の制度が破綻する可能性は極めて低くなりました。
また元本割れしないのもメリットです。
農業者年金では、65歳になり月々の年金額が決定する際、受け取る年金額の元手となる資金(年金原資)が支払った保険料の合計額を下回った場合には、危険準備金※から補填されます。
※危険準備金(付利準備金)は、一定以上の運用益が出た場合に少しずつ積み立てられるものです。毎年度、基金で検証・管理が行われ、十分な額が積み立てられている状態です。
それから税制優遇。
農業者年金に加入して支払った保険料は、全額「社会保険料控除」の対象です。所得から全額控除になり、税金がかかる所得額が少なくなるため、確定申告により返ってくる金額が大きくなります。運用益も非課税です。
iDeCoとの違い
確定拠出型年金であるiDeCo(個人型確定拠出年金)。
- 掛け金の設定は自由
- 積み立て、運用、受け取り時にそれぞれ税制優遇が受けられる
などの点においては基本的に農業者年金と同じです。
ただiDeCoには国庫補助、先で紹介したような、月2万円の納付が厳しい場合に国が補助してくれる制度のようなものはなく、また運用する商品を自分で決める必要があります。
農業者年金の場合、加入すれば、運用は国が行います。受給前の保険料、受給開始後の年金資産の運用は安定性、安全性を意識して行われています。
- 受給前の保険料の運用
安全性と一定の利回り確保を目的とした運用で、リスクの少ない国内債券を中心とした組み合わせ。 - 受給開始後の年金資産の運用
安定した運用と確実な支払いを目的とし、国内債券のみで長期運用。
そして先でも紹介した通り、元本保証つきです。
一方iDeCoには国内外の株式、不動産などの投資信託、元本保証型の生命保険や定期預金など様々な商品を選ぶことができる分、リスクとリターンがどうなるかは自分次第、運用成績によっては元本割れする可能性も否めません。
なお農業者年金に加入した場合は、iDeCoへの加入ができなくなります。その逆も然りです。
参考文献