奨励品種という言葉をご存じでしょうか?農業分野における言葉で、各都道府県が「自分の都道府県内で普及すべき」として認定した優れた品種のことを指します。
奨励品種は、各都道府県によって、その都道府県の土壌条件や需要を総合的に考慮して決定されます。都道府県毎に違うので調べてみると、各地域ごとに様々な特徴が垣間見えることがあります。
一般には意外と知られていない奨励品種にまつわる制度について、この記事で学んでいきましょう。
■奨励品種とは
奨励品種は「主要農作物種子法」という法律を根拠として制定されています。
都道府県はこの法律に基づき、「奨励品種選定規程』などの規程を定めています。奨励品種になる候補とされた品種は、専門の審査会で検討を重ねられ、奨励品種として選ばれた後に公表されます。
奨励品種に選定される農作物は、主要農作物である必要があります。具体的には、米・麦類・大豆です。都道府県が主要農作物以外の作物を奨励品種として定めることも可能です。
例として、以下のような農作物が奨励品種に認定されています。
・小豆や菜豆の豆類
・バレイショ及び甘ショの芋類
・サトウキビ及びテンサイの糖料作物
・ソバ等の雑穀類
・果樹
その他、飼料用の作物が奨励品種として定められることもあります。
■奨励品種に対しての優遇措置
奨励品種として設定されると、栽培の促進と普及を行うために国や都道府県による優遇措置を受けられることがあります。
例えば米の場合、政府が米を買い取る際の価格について奨励品種の買取価格を奨励品種以外の品種よりも高く設定しています。奨励品種の価格を高くすることで、農業従事者が奨励品種の栽培を行うように促しているのです。
こういった優遇措置があるため、奨励品種と設定された品種は農家が積極的に育てるようになり、その都道府県内で普及していくのです。
なお、優遇措置の内容は都道府県や品種ごとに異なります。詳しく知りたい場合は、行政の担当窓口や関係機関に問い合わせて確認してみるといいでしょう。
■主な奨励品種
奨励品種は都道府県によって異なります。ここでは、例として千葉県の奨励品種を見ていきましょう。
なお、千葉県では稲7品種、麦2品種、大豆3品種、らっかせい3品種、かんしょ4品種、ばれいしょ3品種が奨励品種となっています。
1.水稲うるち(4品種)
・ふさおとめ
・ふさこがね
・ひとめぼれ
・コシヒカリ
2.水稲もち(2品種)
・ヒメノモチ
・ふさのもち
3.陸稲もち(1品種)
・トヨハタモチ
4.小麦(1品種)
・さとのそら
5.六条大麦(1品種)
・カシマムギ
6.大豆(3品種)
・タチナガハ
・サチユタカ
・フクユタカ
7.らっかせい(3品種)
・郷の香(さとのか)
・ナカテユタカ
・千葉半立(ちばはんだち)
8.かんしょ(4品種)
・ベニアズマ
・ベニコマチ
・高系14号
・総の秋(ふさのあき)
9.ばれいしょ(3品種)
・男しゃくいも
・ワセシロ
・トヨシロ
■まとめ
奨励品種制度には、以下のような問題点が指摘されています。
・奨励品種の選定基準
近年は消費者が好む味の品種が奨励品種に選ばれる傾向があります。しかし優良な品種とは、収量・栽培難易度・病害虫への耐性等を総合的に判断して判定されるべきものであり、選定基準に偏りがあるという指摘があります。
・栽培品種の画一化
奨励品種には優遇措置があるため、生産者が奨励品種ばかりを栽培することが懸念されています。この結果、認定されていない優秀な品種が人知れず消えていく可能性が指摘されています。
・食料安全上の不安
同一品種を大量に栽培すると、単一の原因で農作物が大損害を受ける食料安全上の問題があります。例えば寒さに弱い品種が奨励品種の場合、冷害で全滅する可能性もあります。
・農業施設利用上の問題
奨励品種ばかりが栽培されると、収穫時期が同時期になります。一度に大量の農作物が集中すると、出荷に必要な作業をする農業施設の処理能力を超えてしまうため、一部では既に問題となっています。
なお、平成30年4月1日に現在の主要農作物種子法は廃止されます。それ以後の奨励品種の位置づけは未定で、何らかの問題の発生が危惧されています。
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