第100・101代内閣総理大臣である岸田文雄首相は「新しい資本主義」と呼ばれる経済対策を掲げています。その新しい資本主義の実現の柱となる計画が「デジタル田園都市国家構想」です。
デジタル田園都市国家構想
デジタル田園都市国家構想の目的は、地方と都市の差を縮めていくことです。そのためにデジタル技術の活用が求められており、政府はデジタルインフラの整備や地方を中心としたデジタル技術の実装を進めていこうとしています。
目的で述べた通り、この構想の背景にあるのは「地域格差」です。高齢化や過疎化が進んだ地方では、産業や交通・物流インフラの衰退や教育機会の減少などが発生し、大都市圏との経済的・社会的な格差が深刻な問題となっています。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大により在宅勤務やテレワークが普及したこと、2021年には人口が密集する東京への転入超過の人数が前年比で8割以上減少したことも背景として挙げられます。
このような背景から、デジタル田園都市国家構想では「地方からデジタルの実装を進めること」に重点を置いています。
具体的には、地方で仕事を確保するためのテレワークの活用、交通・農業・医療・教育などへのデジタル技術の活用などが挙げられます。デジタル技術を活用した「スマート農業」は、この構想の具体的な施策の1つです。
デジタル田園都市国家構想、4つの軸
2021(令和3)年12月28日に総理大臣官邸で行われた第2回デジタル田園都市国家構想実現会議では、構想実現のために以下の4つの取り組みが挙げられました。
- デジタル基盤の整備
- デジタル人材の育成・確保
- 地方の課題を解決するためのデジタル実装
- 誰一人取り残されないための取り組み
2.の取り組みは言葉が示す通りです。1.は具体的には5G(第5世代移動通信システム)、データセンターなどの整備の推進を、3.は先で少し触れた「スマート農業」のような、交通・農業・医療等へのデジタル技術の活用並びに地域課題の解決、地域づくりの推進を指します。4.はデジタル技術の恩恵を、年齢や性別、地理的な制約なしに享受できるようにするためのものです。
2022(令和4)年4月4日には、第6回デジタル田園都市国家構想実現会議が開催されました。第6回議事次第では、会議資料を閲覧することができます。
デジタル田園都市国家構想実現会議(第6回)議事次第|内閣官房ホームページ
上記資料より、農業分野に関する取り組みをいくつか紹介します。
宮城県仙台市は、ソーシャルスタートアップを支援しています。
ソーシャルスタートアップとは
教育、医療、福祉、貧困、地方創生など、一般的に企業活動では解決しにくいとされてきた問題の解決を、ビジネスを通じて狙う起業のこと。社会起業とも言う。
引用元:【スタートアップの新たな担い手たち】社会を変える起業「ソーシャルスタートアップ」の最新トレンドを専門家に聞く|りそなCollaborate
という意味です。
ソーシャルスタートアップの中で取り上げられている輝翠TECH株式会社は、宇宙探査ロボットの技術を活用した農業用AIロボットを開発し、農作業の負担軽減等に取り組んでいます。
農業産出額全国第7位の静岡県浜松市は、生産性向上や付加価値の創出に向けた農業分野でのデジタル活用に力を入れていることが記されています。
デジタル田園都市国家構想実現会議の情報は随時更新されています。もちろん過去に開催された議事録も公開されています。
農業分野に関連するより具体的な施策等に今後も注目です。
参考文献