2024年5月に改正された「食料・農業・農村基本法」。改正に至った背景や旧法との違いとは

2024年5月に改正された「食料・農業・農村基本法」。改正に至った背景や旧法との違いとは

2024年5月、日本の農業政策の大きな転換点となる改正「食料・農業・農村基本法」が成立しました。この法律は、1999年に制定された従来の基本法を四半世紀ぶりに見直し、日本農業が直面する課題に対応するための新たな枠組みを提示しています。

本記事では、「食料・農業・農村基本法」について、改正の背景や旧法との違いについて紹介していきます。

 

 

食料・農業・農村基本法とは何か

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「食料・農業・農村基本法」(以下「基本法」)は、日本の農政の基本理念と方向性を定めた法律です。1999年に制定され、以下の4つの基本理念を掲げています。

食料の安定供給の確保
国民が必要な食料を安定的に供給できる体制を構築すること。

農業の多面的機能の発揮
農業がもたらす水源涵養や景観維持など、経済価値を超える機能を守ること。

農業の持続的発展
持続可能な農業経営を推進し、次世代への継承を図ること。

農村振興
農村地域の経済的・文化的活性化を支えること。

これらを基盤に、日本農業の発展と国民生活の向上を図ることが目的とされています。

改正に至った背景

基本法が改正されるに至った背景には、従来の基本法が制定されてから四半世紀経過する中で、国内外の情勢が大きく変化したことがあげられます。

国内においては、少子高齢化に伴う農業従事者の減少や気候変動による自然災害の増加、農地面積の減少による生産基盤の脆弱化など、さまざまな課題が生じており、持続可能な農業が危ぶまれる状況です。また、経済的困難から十分な食料を確保できない国民が増加していることも、新たな課題としてあげられてきました。

国外においては、世界的な食料需給の不安定化が進行しています。ロシアによるウクライナ侵攻もさることながら、新興国の経済成長、地球温暖化による異常気象などが影響し、日本が輸入に依存する食材や飼料の価格が高騰。食料安全保障への懸念が急速に高まりました。

上記、国内外の課題から、食料安全保障の重要性が増したことが改正法成立の背景にあります。旧法では「不測の事態」に備える規定が中心でしたが、改正法では平時からの取り組みが強調されています。

具体的には、「良質な食料を合理的な価格で安定供給し、すべての国民が入手できる状態」を食料安全保障の基本理念として明示しています。

旧法との違い

先述した通り、改正基本法は食料安全保障の観点で旧法と違いがあります。

旧法では、凶作や輸入途絶といった不測の事態に対応するための規定が中心でした。しかし、改正法では平時からの対策を重視し、国民が必要とする食料を安定供給するための施策を体系化。これにより、食料安全保障が基本法の中心理念として位置づけられることとなりました。

食料安全保障については、「合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」という新たな定義が追加されました。この定義は、経済的理由や食品アクセスの制約を受ける人々を支援するための包括的な視点を反映しています。

 

 

まとめ

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改正「食料・農業・農村基本法」は、食料安全保障を中心に据えつつ、日本農業が抱える多様な課題に対応するための重要な一歩といえます。国内外の厳しい情勢変化を踏まえたこの改正は、未来に向けて持続可能な農業を構築し、国民の食料を安定的に供給する仕組みを強化するものです。今後、この法律がどのように実施され、具体的な成果を上げていくのか注目されます。

 

参照サイト

(2024年11月21日閲覧)

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