「水やり」は農作物の生長に欠かせない作業の一つです。本記事では、さまざまな装置やIT技術を活用して、省力化になり、効率よく水やりができるアイデアをご紹介していきます。
自作できる!水やりのアイデア
農文協が出版する『農家が教える便利な農具・道具たち 選び方・使い方から長持ちメンテナンス・入手法まで』には、農家が提案するさまざまなアイデアが豊富に収録されています。その中に収録されていたいくつかのアイデアを参考に、さまざまな点滴かん水装置をご紹介していきます。
まずは簡易的で、かつ便利な点滴かん水装置に「アクアドリップ」をご紹介します。これは電気や水源がなくても点滴かん水を行うことができ、植物に与える水を入れる容器次第で水を補給する頻度を減らすことができます(水を補給する頻度の目安は、2Lペットボトルを容器とすると一週間に一度、20Lのポリタンクを利用すればおよそ一ヶ月に一度)。
吸水性に優れた専用の紐を用い、毛細管現象(細い管状物体(毛細管)の内側の液体が管の中を上昇する現象)によって水が入った容器から水を引き上げ、その後重力による水の落下でかん水を行います。
「アクアドリップ」の仕組みをより簡単にしたものであれば、自作も可能です。
バケツと鉢受け皿、ヒモだけで、バケツのサイズにもよりますが約一週間、一定量の水やりが可能になる点滴かん水装置を作ることができます。
<用意するもの>
- バケツ(〜12L)
- 鉢受け皿※1
- ヒモ※2
- ヤスリ等、バケツの縁を削れるもの
※1 直径がバケツの口よりもやや大きいものを選ぶ
※2 吸水するために用いる。吸水性のよいクッキングペーパーなどをヒモ状に切って用いるのでもOK。
<作り方(手順)>
- ヤスリ等を用いて、バケツの縁の一部に幅と深さが1cmほどの溝(切り込み)を作る※3
- 1のバケツに水を入れ、鉢受け皿を被せる
- 両手でバケツと皿を押し付ける様に持ち、空気が入らないよう一気にひっくり返す※4
- 3をかん水したい場所に「平らになるように」置く
- ヒモを水に濡らし、端を皿の水に触れるようにし、もう一方の端はかん水する土に穴を堀り、埋める
※3 バケツの溝は、手順3でバケツをひっくり返した際、鉢受け皿の縁の高さの方が高くなるようにすること
※4 1で作ったバケツの溝からも空気が入らないよう意識する。そうすることで、バケツの水はある程度皿の上に流れ出るが、水があふれ出すことはなくなる。
一定量の水がヒモを伝って与えられる仕組みで、ヒモの幅や厚さを調整することでかん水量を調節することができます。暑い時期になると、ヒモ表面から水が蒸発する量が多くなるため、この時期にはアルミホイルなどで覆うのがおすすめです。
散水タイマー・自動かん水装置を活用する
「散水タイマー」は水やりを自動で行うことができる便利なアイテムです。
散水タイマーには、電池不要の手動式で、指定した時間だけ水を流し続ける簡易的なものから、水をやる回数や時間ごとの指定が可能なプログラム式のタイマー、水のやりすぎを防ぐため、雨を感知して水やりをストップする雨センサー付きなど、さまざまな種類があります。
散水タイマーの機能は比較的シンプルですが、液肥混入器と組み合わせて使いたい、日射量に合わせて水を与えたいなど、より高い機能を求めるのであれば「自動かん水装置」がおすすめです。こちらもさまざまな種類がありますが、近年ではスマホやパソコンと連携して用いることができるタイプも登場しており、より省力化をはかることができます。
専用アプリと連携する自動かん水装置
株式会社サンホープが販売している「電池式かん水タイマー」にはBluetoothが搭載されており、スマホやタブレットで使える専用アプリでかん水プログラムを設定することで、遠隔で作業を行うことができます。
参考文献
- 農文協編『農家が教える便利な農具・道具たち 選び方・使い方から長持ちメンテナンス・入手法まで』(農山漁村文化協会、2010年)
- アクアドリップ|株式会社藤原製作所
- ラクして農業したい人にオススメの農機具
- 自動で水やり!散水タイマーおすすめ6種|農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園 AGRI PICK
- ハウス栽培における自動潅水装置(自動潅水システム)の種類と選び方|ZeRo.agri
- Bluetooth&アプリで自動潅水!小・中規模農家に役立つ農業IT|マイナビ農業
- スプリンクラーの株式会社サンホープ